シェケナベイベー
「ふぁ…」
微睡みの中、微かに聴こえるハードロックを目覚まし代わりに、黒澤 健二は一つ欠伸をしてから気怠げに寝返りを打つ。
--もう、そんな時間か
「んー…っ」
身を起こし、腕を上げ思い切り背筋を伸ばす。
健二が今現在居る屋上のすぐ下には音楽室があり、放課後になると軽音学部の演奏が聴こえて来る。
よく授業をサボり、屋上で昼寝をしている健二にとっては、分かりやすい帰宅時間の合図になっている。
「うるさ…」
聴いた事のあるメロディ、一昔前に流行ったロックバンドの曲だ。
渋い選曲だな…などと考えながら、彼は再び床に寝転がる。
--何だか、気持ち悪い夢を見たな
先程見た夢を思い出す。
グロテスクで悪趣味な夢。
昨晩、寮のルームメイトが大量にDVDをレンタルして来て、朝まで観賞に付き合わされたB級映画の影響だろう。
「クソ、あいつマジ呪う」
呟きながら目を閉じる。
春の暖かい日差しが心地好く、もう少し微睡んでいたい気分だった。
階下から響くハードロックを子守唄に…
「いや、やっぱうるせーな」
…出来る訳もなく。
二度寝を諦めた健二は立ち上がり、大人しく帰宅する事に決めた。
もう一度背筋を伸ばしてから、後ろに振り返り、出入口の扉に向かう。
そしてドアノブに手を掛け、ノブを回そうとした時だった。
『キャアァァァァァァァァァァッ!!』
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
突然、校庭の方から複数の悲鳴が聞こえて来た。