男前な後輩に惚れられたとして……
短編なので、プロローグはありません。
生徒相談の最中、とある後輩の乱入により普段より早く終わったとして。
……どうしてこうなるのかなぁ?
どうして、自分より体格の良いこの後輩に押し倒されているのだろうか?
「保井郁先輩ですよね、俺日野綾瀬と言います。貴方の剣舞を見たことがあり、その姿に惚れました。
安心してください、貴方が嫌がるようなことをするつもりはありませんから」
いやいや、この体勢で言われても説得力はありませんから……!
「むしろ……「ストップ! それ以上、言わないでください!」
な、何この人……。潔すぎて何も言えなくなっちゃうんだけど。
この後輩、遮るようなことあっさり言うし、男前だし、こんな中身根暗な僕は釣り合わないよ……。
……僕の何処に惚れたって言うんだ。
でも、まあ今まで告白された人の中では一番マシだし、ここで手酷く振ったら後悔するだろうし……。
「好きなんです!」
そこまで言われると、ごめんなさいの六文字が言えなくなってしまう。
そこまで真剣に言われてしまうと自分自身のことながらもチョロいな、自分とそう思うくらいに振ろうと思っていた気持ちが簡単に揺るがされてしまった。
……他の人に告白されても断れるのに、この後輩だけは何故断るのを後悔すると思っているのかなぁ?
その理由が知りたい。
「……いいですよ。でも、僕を取り返しのつかないくらい好きにさせる、その条件を飲み込めるなら」
理由が知りたいからこそ、この人の懐に入ってみようと思った。
……この人の側にいれば、自分を変えることが出来ると思ったから。
「……上等です」
……それから卒業するまでで、その条件を達成させるだなんて思ってもいなかったけどね……。
この話で「僕の好きな人」は完結です。ありがとうございました。