表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

四 夕陽と友情


     四 


 まばゆい陽光が部屋を照らす。小鳥がさえずり、新しい希望に満ち溢れる黎明(れいめい)の時。清々しい朝だ。時折香る金木犀の香りが心地好い。

 そんな素晴らしい朝。涙の染み込んだベッドの上で鹿島は目を覚ました。が、鹿島は寝転がったままで、体を一つも動かさない。いや、動かすことが出来ないのだ。激しい運動の翌日に現れる、あの症状だ。そう、筋肉痛である。


 普段から運動することのない鹿島だ。こうなることは予想していた。だが、ここまで激しい筋肉痛に襲われることは彼も予想していなかった。藤堂の作る特訓メニューがあそこまで厳しいものとは思っていなかったのだ。


 鹿島はあれから、一〇〇メートルを十三本走らされた。多めに取られている八本はペナルティだ。最後は死に物狂いで走り、かろうじて十九秒を記録した。藤堂はまだ一緒に練習を続けたい様子であったが、その日はそれから入念にストレッチを行い、先に帰宅した。藤堂は川原に残って、特訓を続けたのだろう。


「俊夫。もう六時半だよ。いい加減起きなさい」


 階下から母親の声がする。鹿島はゆっくりと上体を起こし、さらにゆっくりと立ち上がった。かろうじて歩けそうではあるが、とてもではないが特訓など出来ない。今日の体育は見学させてもらおう。鹿島はそう決意した。


 鹿島は階下に降り、母親に事情を説明した。母親は一つため息をついて、連絡帳へと見学する(むね)を記した。最後にハンコを押し、鹿島へと返した。鹿島は、またぎこちない足取りで階上へと登り、学校へ行く準備をする。

 縦じま模様のパジャマを脱ぎ捨て、動きやすい白のTシャツに、五分丈のジーンズを着用した。髪型はいつもどおりボサボサだ。ボサボサの髪を黄色い帽子で抑え込み、黒のランドセルに授業で使う教科書を詰め込み、またゆっくりと階下へと降りた。そして、「いってきます」と母親に一言言ってから家を出た。


 空は目に痛いほどに青く、太陽光が目を刺激する。鹿島は目を細めて空を眺め、考えた。


 ――あいつ、大丈夫かな?


 もちろん『あいつ』というのは藤堂のことだ。


 自分が帰ってから、どれ程の練習をしたのだろう。そんなことを考えると、心配になってくる。練習をしすぎて、本番で体を壊してしまっては元も子もないからだ。


 鹿島は亀のような歩みで学校を目指した。普段であれば二十分程度という簡単な道のりであるが、今日はその簡単な道のりが山のようにそびえたつ。これも少々大げさな表現である。


「おはよう……」


 鹿島が教室に辿りつく頃には、遅刻寸前の時刻であった。クラスの男子が鹿島のぎこちない歩き方を見て笑っている。その中の一人が鹿島の方に歩み寄り、話しかけた。


「ははは。おいおい、どうしたんだよ。無駄な努力をまたしてるのか? それならやめとけよ。お前じゃ他のクラスの奴らには勝てない。いくら練習したって無駄だよ。お前は黙って棄権しろ。そうすれば他の奴が代わりに走るだろ」


 その男子はひとしきり鹿島を侮辱してから自分の席へと戻っていった。鹿島の目にうっすらと涙が浮かぶ。絶対に見返してやろう、という闘志がごうごうと燃え始めた。


 涙を抑え、自分の席へと座った鹿島は、教室を見回し、藤堂が登校していることを確認した。相変わらず、うつむいたまま、微動だにしない。昨日の活発な藤堂の姿がまやかしのように感じられる。あの意気込みはどこから来て、どこへ消えたのだろうか。

 そんなことを不思議に思っていると、担任がやってきた。

 今日も一日、憂鬱な授業が展開される。



 スターターピストルの爆発音が運動場を覆う。今日も運動会の練習だ。今日から、種目別に練習を行っている。鹿島と藤堂はクラス対抗リレーのチームの元へと向かう。藤堂は体操服、鹿島は見学のため私服だ。

 チームのリーダーにバトンが手渡されると、練習は速やかに開始された。鹿島の所属するチームと、藤堂の所属するチームとで、練習試合を行うようだ。鹿島のチームはメンバーが一人足りないので、一〇〇メートル走の選手の中から適当に一人を選んで、メンバーに加えた。適当と言っても、もちろん鹿島よりは足が速い。

 メンバーが所定の位置に着くと、鹿島のチームのリーダーが大きな声で言う。


「行くぞー。よーい。ドン!」


 その声でレーンにいる二人が一斉に走り始める。実力は五分と五分。カーブを曲がり切っても差は変化しない。勢いよく砂が舞い散る。二人の男が風を切る。


 運動場を半周走ったところで、次の選手へとバトンが受け渡された。バトンの受け渡しはぎこちなく、とても上手いとは言えない。とはいえ、小学生のリレーとはこのようなものだ。個々の能力が重要だと思って、バトンの受け渡しというものをおろそかにする。もちろん、陸上競技に精通している小学生は別だ。彼らは大人も顔負けのバトンの受け渡しを行う。


 第二走者がまた半周走ると、また次の選手へとバトンが受け渡された。次の走者には、藤堂が控えている。鹿島も、その場にいれば第四走者、つまりアンカーだ。藤堂は表情を一つも変えずに第三走者が来るのを待っている。そして、藤堂にバトンが手渡された。現在、藤堂のチームがわずかにリードしている。後は逃げ切るだけだ。練習とはいえ、手に汗握る。

 藤堂は勢い良く駆けだした。あまり早くはないが、春に計測された時よりかは早くなっていた――と思う。鹿島はその姿を、息を呑んで見つめた。


 しかし、その勢いが空振りしたのか、カーブを曲がる際に転んでしまった。

 遠心力で藤堂の体はレーンから外れ、運動場の砂が彼の体を擦った。鹿島は立ち上がり、藤堂の元へ行こうとした。が、藤堂の立ち上がる姿を見て、思い直した。


 藤堂がゴールする頃には、鹿島のチームはとっくにゴールしていた。藤堂のチームの完敗だ。周囲のメンバーから冷ややかな視線が藤堂に向かって浴びせられる。藤堂はその視線を黙ってシャワーのように浴びている。


 それを見ていた鹿島は思わず身震いをした。もし自分があのようになってしまったら、同じような冷ややかな視線が浴びせられるだろう。心の隅で、あれが俺でなくて良かった、ということを考えた。だが、その考えを蹴り飛ばして、鹿島は藤堂の元へ向かった。そして、激励の言葉を贈った。周囲のメンバーはそれを鬱陶しそうに見ていたが、鹿島は気にしなかった。


「先生! 藤堂君が怪我をしたので、保健室に行ってきます」


 鹿島は担任にそう告げると、二人はお互いにぎこちない足取りで保健室へと向かった。クラス対抗リレーの練習はまだ行われている。

「やっといなくなった」

 そんな心ない言葉が運動場で小さく(ささや)かれた。



「黒田先生。こいつ、また転んだんだ。治してやってよ」

 昨日と同じように本を読む黒田に、鹿島は物怖(ものお)じせずに言う。黒田の読んでいる本は変わっていて、夏目漱石の『吾輩は猫である』になっている。文学小説が好きなようだ。


「お、またか」

 黒田は本にしおりを挟んで、昨日と同じ手順で傷口を手当てした。

 藤堂が今回擦りむいたのは左足だ。見事に昨日とは違う箇所を怪我したのだ。

「怪我は男の勲章だな。何か必死にやってるなら、これくらいの怪我はしないとな」

 医療用具の入った箱を閉じ、黒田は元の位置へと座った。そして、鹿島の方へと視線を向けた。何か言いたげな目だ。


「な、何ですか? 黒田先生」

「お前も、足が痛いんだろ」

「そんなわけないじゃないですか。僕はすごく元気だよ」


 鹿島はその場でぴょんぴょんと跳ねてみる。が、歩くことがやっとの筋肉痛だ。その衝撃は尋常ではない。電撃のような痛さが鹿島の体を貫く。あまりの痛さに、鹿島は顔をゆがめた。黒田はそれを見落とさなかった。


「なるほど、筋肉痛か。我慢してどうにかなるものじゃないぞ。ほら、こっちへ来い。また同じことを繰り返す気か? お前は去年も……」


「やめてよ、黒田先生。昔の話はどうでもいいよ」


 鹿島は黒田の言葉を遮り、少し声を荒げて言った。そして、黒田の前の丸椅子に座った。藤堂は鹿島の姿を怪訝(けげん)そうに見つめていた。

 鹿島の太ももに黒田の手が当てられる。ゆっくりと黒田の指が鹿島の太ももに沈む。それに伴って、金づちで叩かれたかのような鈍い痛みが走る。痛みが生じる度に、鹿島は顔を歪めた。

「ここは痛むか?」

「はい」

 黒田は太ももから手を離し、湿布を貼り付けた。ハッカのような清涼な臭いが鼻をつく。


「お前、昨日藤堂君にも言っただろ。男だからと言って、我慢することなんてないんだ。痛ければ痛いって、そう言えばいい。もしそれを格好悪いなんて思うなら、そんな安いプライドは捨ててしまえ」


 鹿島は黒田から顔をそむけ、小さく頬を膨らませた。彼のその表情からは、何も分かっていないくせに、というような意味を読み取ることが出来る。また、今度こそは絶対に負けられないんだ、という鹿島の闘志もその表情には表れていた。


 チャイムが鳴る。


 チャイムの音が静寂に包まれた保健室をさらに包む。四時間目の終わりを告げるチャイムだ。黒田は鼻で息を吐き出し優しく呟いた。


「ほら、お前らの好きな給食の時間だ。飯食って、嫌なことなんて忘れちまえ。さ、俺も飯を食うんだ。行った行った」


 その二人のやり取りを、藤堂は心配そうに見つめていた。


 二人が保健室を出ると、唐突に藤堂が話し始めた。

「ちょっと僕、用事があるから。先に教室に帰ってて」

「用事?」

「うん。すぐ終わるんだけどね」

「じゃあ俺も一緒に……」

「いいから。じゃあ、また後でね」

 藤堂はそう言い残すと、足早にどこかへ去って行った。


 どういうことなのだろう、と鹿島は少し疑問に思ったが、腹の虫が鳴ると藤堂のことは二の次になった。それに、藤堂の目からは嘘をついているような雰囲気は感じられなかった。いつもどおりに無表情で、いつもどおりに平淡な声だった。


 教室に戻ると、既に給食の配膳が行われていた。今日の献立はコッペパンが二つに、マーガリン、ポタージュ、サラダ、それに牛乳というものだった。今日の献立は割と質素だ。鹿島は素早く列に並び、それらを受け取った。


 給食の乗ったトレイを持って着席し、あたりを見回すと、藤堂の席以外にいくつか空白が出来ていた。トイレにでも行っているのだろうか。給食の時間に遅れる人間など、滅多にいない。

 しばらくすると、藤堂以外の男子が帰ってきた。手をハンカチで拭いている。どうやら鹿島の予想通り、トイレにでも行っていたようだ。男子たちが手を拭いているのを見て、今週は『手洗い強化週間』だということを鹿島は思い出した。


 学級委員が黒板の前に立ち、音頭を取る。

「いただきます!」

 一斉に皆が食事を取り始める。未だに藤堂は帰ってこない。コッペパンにマーガリンを塗り、一口かじった。鹿島の視線の先は、教室の扉を向いている。


「トシ。どうかしたか?」

 隣に座っている男子が話しかけてくる。藤堂がいないことなど、気付いてもいない様子だ。

「いやさ、藤堂君がいないな、って思ってさ」

「藤堂君? ああ、あの子か。転校してきた時から一度しか話したことがないなあ。友達?」

「うん、まあそんなものだよ」

「ふーん。僕にはあんまり良い子に見えないよ。だっていつも暗いし、勉強は出来るけど……。何考えてるか分からないから、怖いんだよね。何かされないように気を付けなよ?」

 そんなものかな、と鹿島は思った。


 不思議だった。藤堂がこの小学校に引っ越してきた時(その時は小学六年の春だった)は、みんなが彼に質問攻めをした。だが、一週間が経過したあたりから、まるで彼は最初からいなかったような扱いになった。誰も彼に近寄らなくなったのだ。と言っても、彼から近寄るようなこともなかったのだが。

 誰も近寄らない原因は考えられないこともなかった。一週間という短期間で露呈(ろてい)された小学生らしからぬ態度に、突飛した思考、それに近寄りがたい雰囲気。何を考えているか分からない表情。それらがみんなを遠ざけていたのだろう。得体のしれないものには関わろうとしないのが人間というものだ。クラスメイトの藤堂に対する態度は当然のことなのかもしれない。


 コッペパンを一つ食べ終え、次のパンにマーガリンを塗ろうとすると、教室の扉が軋みながら開いた。藤堂だ。顔が微かに濡れており、短い髪からは微かに水滴が滴り落ちている。顔でも洗ってきたのだろう。鹿島は特に気に留めることもなく、パンを咀嚼(そしゃく)した。そして、それをポタージュで流し込み、胃を落ち着けた。


 そして、何の代わり映えもしない授業が再開される、



 担任の終礼が済むと、皆一斉に教室を飛び出した。堅苦しい規律という鎖に縛られた子供たちは、放課後という時に解き放たれ、自由に羽ばたく鳥になる。最近は、いささかその鎖の強度が高すぎたり、自由に羽ばたきすぎている子供がいるようだが。


 夕焼けが教室を赤く染めている。最近、徐々に夜が早くなってきている。冬が近づいてきている証拠だろう。すでに鳥たちは巣に帰ったらしく、教室は怖いほどに静かだった。

 その静かな教室に残っていたのは、鹿島と藤堂だった。

「これ、何なんだよ」

 鹿島が怒りに顔を染めて藤堂に詰め寄る。鹿島がこれほどまでに感情を表に出すことは珍しい。

「何でもないよ。ただ打っただけだよ」

「嘘つくなよ。俺はずっとお前を見てたんだ。今日はどこにも顔をぶつけなかった」

 黙り込んだまま、藤堂は顔を下に向けた。藤堂の顔には紫色の斑点が浮かび上がっていた。その斑点は見るだけで痛々しく、人の心をえぐる。


 給食の時間には見られなかった斑点だった。しかし、五時間目が終わったあたりから、徐々に青じんできていた。鹿島はそれを見逃さなかった。藤堂は今日一日、転びはしたが、どこにも顔はぶつけていない。鹿島が目を離したときにぶつけたのなら、給食の時間以外には考えられなかった。しかし、ただぶつけるということも考えられない。残された可能性は、誰かに殴られたというものである。


「誰にやられたんだよ」

 藤堂は何も応えない。黙って下を向いている。

「あいつらか? お前らのチームの奴らか。黙ってたら何も分からないだろ! 言えよ。あいつら殴ってでも謝らせてやる」


「違うよ」


 蚊の鳴くような声で藤堂が声を発した。

「僕が、僕の足が遅いから駄目なんだよ。最初から、リレーなんて嫌だって言えば良かったんだ。それなのに僕は何も言わないで……。だから僕が悪いんだよ。殴られたって当然なんだ。もう、僕は当日に棄権しようと思う。夢を見すぎたんだ。努力をすれば勝てるって、夢を見すぎていたんだ。もう特訓はやめるよ……」


 やっぱり、と鹿島は思った。

 藤堂は給食の時間、自分のチームメンバーに呼び出され、棄権を迫られたのだ。おそらく、藤堂は断固拒否したのだろう。その結果、殴られたのだ。男子たちが帰ってきた時、手を洗ったのも、その時についた血を洗い流すためだろう。藤堂が濡れて帰ってきたのも、同じ理由のはずだ。


「お前だけじゃないぞ」

「え?」

「俺だって、殴られこそしてないけど、棄権しろって言われた。でも俺は特訓をやめる気なんてないぞ。絶対にあいつらを見返してやるんだ」


 右手の拳を握り、真っ直ぐに机へと振り下ろした。拳に伝わる痛みが鹿島の背筋を伸ばさせた。

「そうだよね。やっぱり、見返してやらなきゃ駄目だよね。もう、僕はまた……」

 藤堂はほろりと涙を流した。しかし、はっとして右手の甲で涙をぬぐった。鹿島も、必死で泣きたい気持ちを抑えていた。チームメンバーが憎くて仕方がなかった。出来ることならば顔を思いっきり殴って、土下座して謝らせたかった。だが、力で解決することは無意味だ。だからこそ、運動会という大舞台で度肝を抜いてやろうと考えた。


「ごめんね、鹿島君。僕から特訓に誘ったのに。急にやめるなんて言っちゃって。これからも頑張ろうね」


「もちろん」


「じゃあ、今からまた川原に……」


 藤堂がその次の言葉を紡ごうとした時、鹿島が言葉の糸を断ち切って言った。


「ごめん……早速で悪いんだけど」

「え、何?」


「筋肉痛で歩くことが精一杯なんだ」


 ああそうだった、と藤堂は笑い、二人はそのまま帰宅した。

 赤い夕焼けが二人の顔を紅に染めた。二人の顔は照れているのか、そうでないのか、夕焼けのせいでよく分からない。鹿島はその日、初めて男と手をつないだ。友情の証である。


      ◆◆◆


 ビルの窓に、小さな水滴が付着している。どうやら軽い雨が降り出したようだ。鹿島は傘を持っていない。

「ああ、雨が降ってきましたね」

 短髪の男が髪を撫でながら言う。鹿島はその男の言葉で初めて雨が降っているということに気がついた。ふと壁に掛けられた時計を見てみると、十一時を少し過ぎたところだった。今も時計の針がゆっくりと動いている。カチカチと時を奏でる音が心地好い。


「参りましたね。私は傘を持ってきてないんです。それに、もうこんな時間になってしまって。まだ続きはありますが、会社に戻らないと……」

「そんなことはいいでしょう。商談が長引いた。ただそれだけ言えば十分ですよ。私はあなたの話の続きが気になって仕方がないのです。それに、通り雨かもしれません。じき止みますよ」

「はあ……」

「ささ、早く続きを聞かせてください。これからあなたが、その友達とどうなったのか」

「まだ少し長くなりますよ?」

「構いませんとも。久しぶりに私も思い出に浸ることの出来るような話を聞いているのです。私にも、あなたと同じような友達がいましたからね」


 会議室の扉が開いた。どうやら、お茶を淹れに来てくれたようだ。急須から暖かいお茶が注がれていく。香ばしい茶の香りが会議室に満ちる。良い空間だ。

「分かりました。話を続けましょう。私が筋肉痛を解消したあたりから話しましょうか。そうですねえ……そうだ、あの時も今と同じ小雨が降っていたんです。まだ十月というのに肌寒かったのを今でも覚えています」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ