第024話|ココ編【……私、震えてる……みんなに気づかれないようにしないと……】
———北西部山中
教団の法衣を纏った騎馬隊が、数名で馬を走らせていた。
隊長らしき人物が指示を出す。
「近くの村に向かう」
「アレを置きに行く」
“アレ”とは――討伐した魔族の骨のことだった。
教団はこの骨を、村を襲わせるために投げ入れる計画だ。
骨の匂いに引き寄せられ、“壊れた魔族”が村へ向かう。
———やがて、その村は被害を受ける。
そして、“壊れた魔族”は、勇者の手で討伐される運命にあった。
教団の騎馬隊は、北西部のとある村の近くに骨を投げ捨てると、何事もなかったかのように立ち去った。
隊長が呟く。
「……これでサンデル様も喜んでくださる」
兵士も答える。
「はい。サンデル様はこの世界を壊し、創造する“神”」
隊長はうっとりと空を見上げた。
「……あぁ、そうだな」
———ココの屋敷
使用人がココの部屋をノックする。
いつもよりノックが早い。
「ココ様、教団の使いの方が急用でお見えです」
ココはすぐさま立ち上がる。
「すぐ行く」
北西部の村に魔族が向かっている。という知らせだった。
ココは、落ち着いて準備しながら使用人に言った。
「北西部の村に魔族討伐依頼よ」
「……行ってくるわ」
それを聞いて、使用人達は慌てて準備する。
屋敷の中に、いくつもの足音が響いた。
執事長が最後に声をかける。
「……どうか、お気をつけて」
ココが笑顔を作る。
「……大丈夫よ、安心して待ってて」
執事長は、いつもの笑顔と違うことに気づく。
ココの手が、少しだけ震えているのが見えた。
だが、ココの目に揺らぎは無く、ただ真っ直ぐに、北西部の村に向けられていた。
ココは自分よりもかなり大きな馬に、慣れた動作でひょいと跨る。
ココは北西の空を見た。
「じゃあ、行ってくるわ」
ココが手綱を持ち直す。
「ハッ」
馬は一度だけいななき、リズムよく駆け出す。
ココの背中が夕闇に溶け、小さくなっていった。
———上空
アーラの“トサカ”が、北西部の村に向かう魔族を捉えた。
「間違いないな、同胞だ。だが……“壊れている”かもしれん……」
アーラは冷静に分析する。
「理由は分からんが、人間の集落に向かっている」
「放っておいた方がいいな」
しかし、パックは躊躇しない。
「えっ!ダメだよ。村の人に知らせなきゃ」
アーラが少し被せ気味に言う。
「危険だ、放っておけ」
パックは聞かない。
「僕が村の人に知らせるから、アーラは村の北の外れで待ってて」
アーラが少し落ち着いた口調になる。
「……話を聞け、危険だと言っている」
パックはそれでも聞かなかった。
「村の人に知らせるだけだから、ね?お願いだよアーラ」
アーラが深く溜め息をついた。
「……」
「分かった」
アーラは旋回し、北西部の村に向かった。
この先で起こる、“運命の出会い”が待っていることを二人は知らない。




