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Boneborn~魔素を喰らい、世界を知る~  作者: 和冬陣


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03話 商売は当然に


子爵へ挨拶を済ませ、街へ戻る。

あーなんて晴れやかな気分なんだろう。鉱脈のことがあったからか見慣れた景色は落ち着くな。

妙にすっきりした気分で自宅へ帰ろうとしていた時だった。

「せーーーーーーんぱーーーーいっ!」

……今日も一段と声がでかい。

「領主様との商談上手くいったすか!?」

「いや、今回は茶会だけだっての。そんな大きな取引早々出てこないよ。」

「ですよね!そう思って新しい掘り出し物を見つけてきたっす!じゃじゃーーーーん!」

「……一応聞くけど、なにこれ?」

「新型魔鉱蛇口ですっ!この蛇口を取り付けるだけで配管や大気の魔素を緩和させておいしいお水が飲み放題!みんな美味しいお水が飲みたいっす!これ売りましょう!」

…とんでもねぇもん持ってきたなこいつ。


「ルビィ、お前はもうちょっと目利きの情報を持ったほうがいい。いや、その前に物流の基本からか」

「みんな美味しいお水は飲みたくないっすか!?」

「趣旨を変えるな、趣旨を。そもそもどこで仕入れてきた?」

「露天商のおじさんがくれたっす!」

「いくら?」

「聞いて驚かないでくださいっすね!!なんと金貨1枚っす!」

たっかい。いや高すぎる。

おいおい、ルビィお前完全にぼったくられてるじゃん。うちの商会そんなに金あるわけじゃないんだよ。お前の金は俺の経費。わかってる?


「しかも今なら金貨4枚上乗せで50個つけてくれたっすよ!」

「なにしてくれてんの!!?」

もーーーばか。一個ならまだしも大量に押し付けられてるじゃん。こいつの明るさと愛嬌に頼ってるとたまに大外れ引いちゃう。今日がその日か。いつになっても慣れないこの恐怖。


「その露天商どこにいた?」

「大通りを左に向かった先っす!」

闇市の近くじゃねーか。あそこには近づくなっていつも言ってるのに!

「一応顔出してみるか」

「あいさつ回りっすね!せんぱい律儀っ!」


「今日は店じまいっすかね」

わかっていたけど、そりゃいないだろうな。カモひっかけた現場に長居するような馬鹿じゃないか。

「どうしよう」

「蛇口の金額っすか?」

「ちがう。いや、違くはないか。相場よりも高い金額で請け負ってるしな。」

「普通の蛇口一個で銅貨6枚っすよ!」

「調べたのか、えらいじゃないか。」

「せんぱいが数字が大事って言ってたっすから!」

成長したな…じゃない。

銅貨10枚で銀貨1枚

銀貨10枚で金貨1枚

今回の蛇口50個を金貨5枚で仕入れている。仕入れ値は蛇口一個につき銀貨1枚。

対して通常の蛇口は銅貨6枚。50個売っても金貨3枚がせいぜい。現時点で金貨2枚の赤字。

この含み損をどうやって埋めるかだなぁ。いや、待て。もし本当に魔素を緩和させる機能が備わっているとしたら…。


「ルビィ、この蛇口はもう試したか?」

「え?」

「この蛇口で美味しい水は飲めたのか?」

「まだ飲んでないっす!せんぱいも美味しいお水が飲みたかったんすね。早く言ってくださいよ~」

「それもあるけど、俺はお客様に届ける商品の品質を確かめて責任を持ちたいだけだよ」


自宅に戻り、蛇口を新調。ルビィからコップを受け取り、一口飲む。

「…どっすか!?」

「うん!……ん?」

妙だ。うまいぞ。確かに水は美味しい。

だがそれ以上に、水が喉を通った瞬間、体の奥が軽くなるような疲労が回復しているような感覚が芽生える。気のせいか?

「せんぱい?」

「お前も飲んでみろ?うまいぞ?」

「マジっすか?やっぱりわたしの目に狂いはなかったってことっすね!いただきまっす!」

ルビィもコップに注ぎ、勢いよく水を飲む。

「うえぇぇ、まずいっすよ、この水!下水の味っす!」

え、まじ?俺飲んだ時ふつーに美味しかったけど。ずっと一緒にいるけど味覚にそこまで大きな差はこれまで感じなかったし。原因……あ!


「俺、疲れてんのかな?」

「絶対そうっすよ!こんなまずい水初めて飲んだっす!吐きそうになったっす!」

「そうだな、今日は解散にしよう。この件は明日また考えるとして、お前は寄り道しないで帰れよ。」

「はいっす~」

舌を出してしかめっ面して帰っていくルビィ。本当にまずいんだな。


―—————————


一人になって思考を巡らせる。ルビィは不味く、俺は美味しく感じられる水。

仮説を立てるなら、骨化の影響で俺の味覚が変化していること。ただこれだけで水がおいしいと感じられるのは説明が不十分だ。

可能性としては、体内に取り込んだものは自動的に魔素の吸収を行っているということ。

草や石から吸収した時とは違う。あれは外側から取り込む感じだった。だが今回は、水が体に入った瞬間、魔素が抜き取られるような感覚だ。

……いや、感心するわけじゃないが、便利な体だな。魔素無くなれば食べ物全部美味いじゃん。

ただ厄介なのはほかの人間との差別化が口に含むまで難しいことだ。これは相手の反応を見て気を付けていこう。


問題はこの蛇口。

分解してみると、二つある魔鉱石がどちらも粗悪品だとわかる。

ダメもとで取り出して加工場に出してみるか。にしても濁りがよく分かる。

しかしこの魔鉱石小さすぎて取れない。ピンセットでも硬すぎて無理だ。

あ、そうだ。…………誰もいないよな?よし。

「筋肉生成解除」

《筋肉生成を一時中断します》


皮膚が霧のように崩れ、腕から肉がなくなっていく。露出した白骨の指先を軽く動かす。

うん、こっちのほうが細かい作業がしやすい。指骨のほうが手先が尖ってて便利なんじゃね?と思った俺、冴えてる。

カリッカリッ……。だめだ硬い!もっと力入れないとダメなのか?————あ。

(骨強化開始)


ふっふっふ。目には目を。パワーにはパワーを。強化された骨の力で意地でも魔鉱石を取り出して質のいい蛇口にしてやろうじゃないの。


《骨強化を実行》

《現在の蓄積魔素を何%注入しますか?》



―————————は?



【和冬のどうでもいい骨知識】

骨は意外と細かい作業に向いていません。

指先が痛くならないだけです。

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