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Boneborn~魔素を喰らい、世界を知る~  作者: 和冬陣


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01話 骨になったんだが


人生最大の商機。

ただこの時俺は、まだ自分の人生が終わるなんて考えてもみなかった。


「――で、その魔鉱石の話、本当なんですか?」

「父と面識のある貴様なら理解もしていよう。嘘を言うような御方ではない」

子爵の言葉に、俺は思わず腕を組んだ。

(いや、だとしても妙だ……)


ジファナ山脈。

かつては魔鉱石の採掘場だった場所だが、今は枯れてる。

魔鉱石は魔素の塊のようなものだ。一度掘り尽くされた鉱山で新しく発生するには数十年単位の時間が必要になる。

それが“今”出る?


「……仮にその話が本当だとして」

半信半疑。だが商人たるもの好奇心には勝てない。俺はゆっくりと口角を上げる。

「もし魔鉱石が採掘できることになったら、半分はうちに流してもらいますよ?」

「相変わらずだな、お前は。良かろう。前回の褒美はこれで埋め合わせてもらう。いいな?」

――チャンス!

サイズや純度、加工によってバラツキはあるが魔鉱宝石なら一つ金貨二十枚の価値がある。

もしそれが鉱脈レベルで半分の取り分を俺が持てることになったら……?

今度は今まで手の届かなかった国相手にも商売が可能になってくる!

(支部展開、独占契約、ブランド化……全部いける)

「その話、請け負いました!」



—————————————




まさか前回の商談で先方の失態がこんな形で帰ってくるとは、人間万事塞翁が馬ってか。このまま全てが順調にいけば、ゆくゆくは大国御用達のお抱え商人なんてのも夢じゃない!?

いかん、想像で顔がにやけてしまう。今は目の前の仕事に集中しよう。最近魔物の発生が減ってきたとはいえ、この街道に出ないなんて保証はないんだからな。油断せずに行こう。


ジファナ山脈の麓にある関所で検問を終え、そこから西へ歩くと魔鉱石の採掘場がある。

山脈付近には魔物の出現情報は数少ないが全く出ないわけではない。とはいえ今回は護衛は付けず単身でやって来た。これまでの旅の経験からこの山脈の魔物程度なら一蹴できるという自負がある。それに護衛をつけるとなると商会組合との話し合いを通さなければならない。今回は時間が惜しい(のと報酬は独占したい!)のでこちらは却下だ。


採掘場に到達すると、内部からうっすらと光を帯びているような気もする。誰も立ち寄らないから照明を使用しているわけでもない。疑心暗鬼が拭えないまま奥に進んでいくと、光量は増していった。


「……ッ!!!」

光を頼りに奥に、奥にと進んでいくとそこには優しく包み込むような蒼さと吸い込まれるような鈍い濃紺さを併せ持った大きな魔鉱石が存在していた。

自分の身長ほどもあるようなこの塊を目の前に、俺は数分の間立ち尽くしていたのかもしれない。これまで多くの芸術作品や宝石を取り扱ったこともあるが、そんなものは比にならないほど魅入ってしまう輝きを放っている。

これは国が動く!と確信を持てる代物だ。さっそく子爵の元へ戻り、事実を報告し、あわよくば自分のところに卸してもらおう・・・!


そう思い、踵を返そうとした時だった。

魔鉱石が、脈を打ったのだ。 ドクン、ドクン、とまるで人間が生きている証として心臓のポンプ機能によって血液が送り出されるように目の前の大きな魔鉱石が体を震わせる。

通常、いやどんな鉱石、物質でさえ何かしら外部から影響を受けない限りは微動だにしないものだ。にも関わらず、脈を打つ?どういうこと!?載ってないぞ! 後ずさりしているうちに魔鉱石の鼓動が早くなる。同時に堰を切ったように淡い光が徐々に大きくなっていく。


そして俺はその光に吞み込まれた。



―———————————————



どれくらい意識を失っていただろうか・・・。

数分間、いや数日にも感じるような倦怠感。まだ脳に霧がかかっているみたいだ。

いったい何だったんだ。いや、状況を整理しよう。前領主から魔鉱石があると聞き、半信半疑で鉱山へ向かい、本当に魔鉱石を見つけてしまい、帰還して子爵に報告しようと思ったら急に輝きだした魔鉱石の光に包まれて意識を失う。前半はいいとしても後半はなに??? それより魔鉱石は?と振り向いたその時、俺はその姿に驚愕する。

ぎゃあああああああぁ!!!!


叫んだ。


……はずだった。


「――――」

声が、音が、出なかった。喉に手を当てる。いや、手じゃない。

それは骨だった。

(なんだこれ、なんだこれなんだこれなんだこれ)

落ち着きを取り戻そうとしたのか、必死に酸素を取り入れようと息を吸おうとする。

吸えない。肺が、ない。

心臓は?

鼓動は?

………感じない、何もない。あるのは、意識だけ。

「っ……!!」


全てが真っ暗になるような恐怖から、不意に後ずさる。

カタ、カタと骨の音が鳴る。

―——————違う。

鳴っているのは、俺だ。


自分の体を見る。

――—————骨だ。

完全なる骨。皮膚も、筋肉も、流れる血液も何もない。目に見える光景は生き物の気配を失った薄白い骨だ。

そして指を動かすと自分の意思が伝わったかのように動くのだ。

カタ、カタ、と乾いた音が採掘場内に響く。

(やめろ……)

声にならない声が、頭の中で響く。

(なんだこれは……)

こんなの、無理だ。

無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ。

(戻りたい……!!)


(俺は……こんなところで終わるわけには……)


天地がひっくり返ったかのような衝撃にすべてが追いつかず、膝から崩れ落ちるように目の前の魔鉱石に手が触れた。

すると、目の前に突如として見慣れない画面が表示される。





対象を確認➡スキル発動条件クリア

対象物:魔鉱石

【吸収しますか?】

【YES】【NO】




【和冬のどうでもいい骨知識】

人間の骨は約206本あるそうです。

なお、この時点では主人公の名前はまだ出ていません。

骨の方が先です。

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