閑話、王族の紋章
浮島の遺構の周囲で、四人は小さなキャンプを張った。
夜風が吹き、焚き火の炎が揺れる。
カイルがポケットの小石を弄りながら、ふと口を開いた。
「そういえば、エリシアの手の紋章……あれ、普通じゃないよな?」
セラが真剣な顔で頷く。
「普通じゃないどころか、アーカディア王家の紋章そのものよ。
あの紋章を持つ者は、代々王族に限られていたの。」
リアンが穏やかに口を挟む。
「……王族だとしたら、彼女はどう思うだろうか。
長く隠されていた血筋を突然知らされたら、恐怖もあるだろう。」
カイルは笑うが少し考え込んだ顔になる。
「でもさ、もし本当に王族だったら――俺たち、どうする?」
セラは魔導書を胸に抱えながら静かに言った。
「守る。どんな理由であれ、彼女の運命は仲間が支えるべきものよ。
それに、彼女自身が自覚すれば、王族としても一人の人間としても、強くなれるはず。」
リアンは微笑む。
「重要なのは、血筋ではなく、心。
王族であれ、平民であれ、心が決めた道を共に歩むことが大切です。」
カイルは焚き火を見つめ、拳を握った。
「そうだな……俺たちがついてる限り、どんな運命でも、エリシアは一人じゃない。」
火の揺れる光が、四人の顔を照らす。
エリシアは黙って手の紋章を見つめる。
自分が何者なのか、まだ完全にはわからない。
でも――仲間が自分を信じてくれている、その温かさは確かに胸に届いた。
小さな夜空の下、四人は笑い、言葉を交わし、
静かに次の試練への決意を胸に刻んだ。




