第62話 手荒い歓迎! レジスタンス現る
【レジスタンス】
もともとはフランス語での抵抗を意味する言葉。主に現在では異国の軍隊などに占領されたことなどへの抵抗運動といった意味合いで使われることが、日本では多いだろう。
戦場へと変わった町の中でも日常のままであり続けるという異常事態。
それはもはや人間らしい、いや生き物として異常な有様だと言えるだろう。
これが何かを守るためであったり、何かを為そうというような、それらしい理由があるのであれば納得ができるだろう。
だが、そういった心をかけらも感じ取れない、なにせ真横で鋼の巨人が戦っているのに、ごくごく普通の日常生活を歩もうとしているのだ。
表情に浮かべている怯えの色がなければ、そもそも彼らが生きている人間なのかどうかすら、竜希の瞳には疑わしく映っていたことであろう。
「……エポンっ、そいつの強さはどうだっ!」
戦闘を繰り広げるカバリオザンバーに向かって、クレアーツィは問いかける。
世界を超えてやって来た自分たちにとって、この世界の兵器とは未知の塊。知らないということは大きな弱点となり得る。
だからこそ、直接戦っているエポンに問う。奴を相手に単独で勝てるのかと。
「……硬い、かな。でもそれだけっ!」
削り取るようにザンバーランスが突き立てられれば、人型戦車に孔をあけんとする。
負けじと人型戦車も砲塔を回転させカバリオザンバーに向ける。ほぼゼロ距離のこの状態では砲撃されれば回避などできるはずもない。
「っ、ちぃっ!!」
即座にザンバーランスによる攻撃から、即座に距離を取るために突き飛ばす方向へと力を籠める。
うまく力を籠めることで、距離を取ることに成功すれば砲撃を避けるために都合がいい位置取りをしようと足を動かす。
下手に避ければ周囲の民間人が危険に晒される。
知らない人間がいたら気にしない? そんなことを考えるような人間はザンバーに乗り込みはしないのだ。
「来るっ!」
されど、敵は、人型戦車はまるで周囲への影響など知ることかと砲撃を開始する。
一撃一撃が確かに強力な攻撃。まともに喰らえば撃墜とまではいかなくても大破寸前まで持っていかれるのは、一目見ただけで分かる。
なにせ砲撃が直撃した地面には大きなクレーターが出来上がるほど。
エポンが今この場ですべきことは、人型戦車を倒すことではない。
(クレアーツィたちをマルチドラゴネットに行かせる、それさえできればこの程度はどうにでもなる)
今この場にいるクレアーツィの保護、そして彼らが前線に立てるようにすること。
カバリオザンバー単体で、倒すだけならば問題ない相手。
ならばゴウザンバーの合体形態ならばどうであろうか? 答えはもちろん造作もなく倒せる。
(それに、こいつを倒しても増援が来ないとも限らないっ!)
その時、敵を倒した直後のカバリオザンバー単独で、迫る脅威を打ち破れるかという問題が発生してくる。
だからこそ、自分以外に戦える戦力を早急に用意するための、クレアーツィたちの戦線参加を優先する。
カバリオザンバーは機動力に長けた機体、この程度の相手に時間稼ぎをするというのであればいくらでも戦い続けられる、エポンの自信もあっての行動であった。
「っ!?」
戦いが始まって既に数分が経過したころであろうか。
カバリオザンバーのレーダーに何かが近づいてくるという反応を察知した。
「この方角、味方――」
エポン自身が飛び出してきた方向は分かっている、当然その方向に他のザンバーがあることも。
「じゃないっ!」
だからこそ、こちらに向かってくる相手が味方ではないと判断できた。
四方八方から現れる人型戦車。一機ならばカバリオザンバー単独でも撃破は可能、だがしかし数が増えれば話は変わってくる。
「ちぃっ、これはっ……クレアーツィ達は逃げれたでしょうし、撤退も視野に入れたほうがいい?」
囲まれたカバリオザンバー、四方八方から砲塔をつきつけられれば、ハチの巣にされるのは火を見るよりも明らか。
「……とはいえ、囲まれたときの対処はブラストほどじゃないけれども――」
(苦手なのよねぇ!)
カバリオザンバーの得意とするのは機動力を生かした翻弄する戦い方、敵に囲まれ得意な戦法を封殺されている現状は最悪と言っても過言ではない。
だからこそ、クレアーツィ達の増援を期待している中で――。
「っ、また何か飛んでくる? しかもかなり速い!?」
レーダに映る新たな反応に頭を抱える。無論その方向はクレアーツィ達が向かった方向とは真逆、ゴウザンバーたちの増援とは決して考えられない。
その速度もマギサザンバーやブレイドザンバーであれば遅すぎ、逆にゴウザンバーやブラストザンバーであれば速すぎるのだ。
そうして反応があった方向に視線を向ける。エポンはその時困惑を隠せないでいた。
円筒形のなにかがこちらに無数向かってきている、もはやザンバーやマギアウストの形状では想像すらできなかったもの。
だからこそ、エポンは理解した。
(あの中には人はいないっ!)
そう、エポンが視界に入れたそれはミサイル。
カバリオザンバーは即座に跳躍、それと共にミサイルの全てが人型戦車に叩き込まれて行く。
(地球人の兵器……あれと戦っている人たちがいる?)
エポンも疑問は思考の片隅に追いやり、ミサイルによる爆炎の中から飛び出す人型戦車の一機に向かってザンバーランスを叩きこむ。
地面に着地した時には囲まれていた敵の、一部はミサイルによって撃破されたことを確認。
さらにはレーダーに新たなる巨大な反応を確認する。
「遅くなった!」
上空にあるはマルチドラゴネット、そこから飛び出してくるのはゴウザンバーを筆頭に四機のザンバーたち。
ここまで来れば戦闘の結果など言うまでもない。
打倒された人型戦車の軍団。
町自体にはできるだけ被害を出さないように戦ったかいもあってか、一部区画を除いて大きな被害は出していない。
「……エポン、助かった」
「……私の事、許すと言ってくれたのなら、それに報いなければならないですし」
クレアーツィの礼にも、これはして当然だと告げるエポン。
その様子を見て、改めて仲間として受け入れることを決めた面々の所に、鉄の箱が向かってくる。
車輪の付いたそれを見て、未来は一言口にする。
「車がこっちに来てる、けどどうしたんだろ?」
そんなつぶやきに対して、車から向けられた声はシンプルなものであった。
「奴らと戦ってくれた君たちに礼が言いたい」
車の中から出てきたのは壮年の男性、どこか疲れきったような……だがそれでもなお立ち上がる決意を秘めた表情の彼は、こう続けた。
「俺の名は鎧塚修二、レジスタンス日本支部の代表をしている」
鎧塚修二と名乗った男の言葉にクレアーツィは思考を余儀なくされる。
(レジスタンスと名乗った、しかも日本支部と来た)
「……竜希、未来、レジスタンスって言えば抵抗する者たちって感じでいいんだよな?」
クレアーツィが通信で問いかけた二人への問いかけ、どちらもが首を縦に振ればクレアーツィは頭を抱える。
(人型のアレに対して攻撃を仕掛け、抵抗していると告げた……アレはもしかしなくてもこの世界の技術ではないんじゃあないか?)
自身の中で想定した、しかも最悪の結論にクレアーツィは寒気すら感じ取った。
実際のところそうであるはずがないと、頭の中では考えてはいた。
想定している相手は、ほんの誤差レベルの時間しか存在しなかったはずなのだから。
「……何に対するレジスタンスなんだ?」
だからこそ問う、何に対して抵抗しているのか。クレアーツィは、自分の予想は外れて欲しいと祈り続けた。
「決まっている、地球皇国皇帝ビートゥ・ネルトゥアーレに対するレジスタンスだ」
鎧塚の言葉にクレアーツィは納得してしまった。
納得したうえでクレアーツィは――。
「あんにゃろう! ぶっ殺してやる!!」
普段の彼であれば言わないような、強い怒りを込めた声で叫びをあげていた。
【地球皇国皇帝ビートゥ・ネルトゥアーレ】
あのビートゥ・ネルトゥアーレである。
クレアーツィにとってはほんの少しの時間で、この地球を支配したという事実を有している……のだがある理由があるようで。




