表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憑かれた私と怪しい男  作者: 夏野 夜子
第4章 危険なアルバイト

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/91

アルバイトのさだめ3

「どうも初めましてワンダーパーク企画部、重路おもろと申しますー本日はお忙しい中お時間いただきありがとうございます!!」


 やってきたのは、スーツ姿だけどどこか陽気な雰囲気のある男性だった。紺のスーツはなんだか高そうだったけれど、ネクタイが某テーマパークのキャラクターが散りばめられたパステル調のものでちょっとかわいい。


 勅使河原さんと名刺を交換した重路さんは、私にも「よろしければ」と名刺を差し出してくる。自分の名刺は持っていないのでどうしようかと思ったけど、さっと渡されたので受け取ってしまった。

 名刺も凹凸がある加工で、キャラクターのイラストが印刷されている。勅使河原さんもこういう名刺の加工が好きなので気が合いそうだ。


「どうも勅使河原です。こっちは助手の早乙女さんです」

「本日はどうぞよろしくお願いします。あの、女性のアシスタントの方がいらっしゃるんですね。失礼ですが、その、お仕事の際はこちらの早乙女さんも?」

「同行しますよ」

「そうなんですか! それはよかった!」


 ん?

 今、重路さんの顔がいい笑顔になったような。

 ちょっと気になったけれど、勅使河原さんが話を進めたので私は隣で静かにしておくことにした。


「それでそれで? 霊が出ると言われているテーマパークはどちらの? 千葉? 大阪?」

「いえ、ここから車で30分くらいのところに昨年オープンした『スリラーパーク』でして」

「あー! なんか聞いたことある!」


 勅使河原さんが反応すると、重路さんは笑顔で「ありがとうございます」と言い私たちそれぞれにパンフレットを渡してくれた。

 おどろおどろしいフォントで「スリラーパーク」と書かれているそれは、名前の通りに怖いアトラクションばかりが揃ったテーマパークなんだそうだ。


「スリラーパークは、本格的な恐怖と絶望というコンセプトで開発された新型テーマパークです。アトラクションの半分以上が対象年齢15才以上という大人向けテーマパークとなっておりまして、日常では体験できない怖さを味わえるとして人気が出ています」


 パンフレットを見る限り、基本、全部がお化け屋敷らしい。だいぶマニアックなテーマパークな気がする。

 けれどテーマが統一されているだけに、そのアトラクションのバラエティは豊かなようだ。スタンダードな歩いて進むお化け屋敷に始まって、座って楽しむ乗り物タイプやジェットコースター、サウンドやVRを使ったものや謎解き脱出ゲームなど、様々なシチュエーションでホラーを体験できるらしい。

 それぞれのアトラクションの写真やタイトルを見る限り、心霊やゾンビがテーマになっているらしい。虫系のものはなさそうでホッとした。警戒すべき要素がないとわかれば、ただでテーマパークに行けるというお得なご依頼だ。


「こちらの複数のアトラクションで、従業員から『怪しい人影を目撃した』とか『物音やノックが聞こえた』といった声が寄せられておりまして。勅使河原さんと早乙女さんには、それが本当に心霊のような原因があるのか確かめていただきたいんです」

「なるほどなるほど。まあ、実際に霊がいたとしてもさほど深刻なものではないと思いますよ。こんな雰囲気だとついつい思い込んじゃうこともあるでしょうし」

「はい、場所が場所なので、もし無害なだけであればそのままにしてもいいかなと思っているくらいでして」


 あのテーマパークは出る、という噂は、普通のテーマパークなら怖い話になるかもしれないけれど、このスリラーパークに来る人たちにとってはむしろ興味をそそる噂になると考えているようだ。確かに、有名なお化け屋敷でも「本当に出る」と噂されているものがあるし、それでも噂を否定したりお化け屋敷を閉鎖したりもしていない。むしろいい客寄せになるのだろうか。

 もし怨霊がいることでお化け屋敷が儲かって幸せになる人が増えたら、それは怨霊と呼べるのかちょっと謎だなと思った。


「勅使河原さんと早乙女さんがもしよろしければ、本日今からでもご覧いただきたいなと……そして、よろしければ今日だけでなく、しばらく様子を見ていただけたらなと」

「明日以降は他の方のご依頼もあるので要相談になりますが、今日行ってパパッと見ちゃうのでも大丈夫ですよ」

「ありがとうございます! そしてその、もし、もしよろしければなんですが……」


 明るい重路さんがちょっと心苦しそうにしながらも、両手を合わせて頼み込む姿勢になった。


「本当にもしよろしければなのですが、場内スタッフをちょっとやっていただけないかと……もちろんバイト代は別で払いますのでどうか!!」


 噂のせいでバイトがたくさん辞めている、という話はどうやら本当のようだ。

 初対面の相手にバイトを頼み込むだなんて。


 いろんなご依頼を聞いてきた中でも、流石にこのパターンは初めてだ。

 勅使河原さんはどう答えるのかな、と思って隣を見ると、目が合った。


「早乙女さん、目が輝いてるよ」

「え? そ、そうですか?」


 降ってわいたバイト話。しかもテーマパーク。

 興味がないと言えば嘘になる。事情や後先を考えずすぐに「お願いします!」と答えたいくらいには興味がありまくりだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ