アルバイトのさだめ4
私もまだ学生の頃は、華々しいバイトにも憧れたことがあった。イベントスタッフやテーマパークのバイト募集に応募したことも一度や二度ではない。けれど、三度四度……と面接の回数を重ねていくうちに察したのだ。
私はたぶん、こういうバイトとは縁がないんだな。
のちにこういうバイトどころか、ほぼ全てのジャンルにおいて縁がないというか、私(に憑いている龍)側から縁を切っていたということがわかるのだけれども。
可愛い制服に、人を笑顔にする仕事。やっぱり今でもちょっと憧れるのだ。
「いや早乙女さんうちだってスタッフTシャツ作ったじゃん?! あとうちだって人を笑顔にする仕事だよ!」
「笑顔っていうか安堵ですよ。恐怖から安堵ですよ。普通は平常心からの笑顔へ変える仕事なんですよ」
「今回に限っては、笑顔のお客さんを恐怖へ陥れるバイトだよ!」
私の話にツッコミを入れまくっている勅使河原さんは、テーマパークのバイトには興味がないらしい。
「そりゃお給料もしっかり頂いてますし、勅使河原さんに雇ってもらえていいこと尽くしですけど」
「だよね」
「でもアルバイトの機会なんてそうそう見つからないですよ。相手からやらないかって誘われるだなんて、本当に珍しいことなんですよ」
「俺も誘ったのにー」
勅使河原さんはその霊感やらお祓いスキルやらのおかげでお金に不自由したことがないので、バイトのありがたみをよくわかっていないようだ。車移動の休憩時にお財布を置きっぱなしにしたりするのもお金持ちが故の油断である。
「あの、どうかお願いできませんでしょうか……もちろんずっとでなくてもかまいません。幽霊騒ぎの真相を突き止めるまで……そして新しいバイトが入ってくるまでで構いませんから……!!」
「勅使河原さん、重路さんも困ってるみたいですよ」
重路さんはもはや頭を下げすぎて、ソファから床へとずり落ちそうなくらいになっている。幽霊の噂のせいでバイト不足がそこまで深刻になっているらしい。
それを見ても、勅使河原さんはあまり心を動かされなかったようだ。
「いやー、バイトは他の人雇った方がいいんじゃないですかね? 俺たち2人増えたところでどうにかなるなら2人いなくても大丈夫だろうし、どうにかならないレベルならちゃんと募集した方がいいかと」
「それは重々承知なのですが、もう今日! 今日の営業ができるかどうかの瀬戸際なんです! それにお二人なら、万が一幽霊が本当にいたとしてもどうにかしていただけるでしょうし!」
「そうですよ勅使河原さん、今募集してもまた怖がって辞めちゃうかもしれないし、それにバイト中に除霊もできるだなんて一石二鳥じゃないですか」
「二鳥かなぁ……」
「お願いします勅使河原さん!」
「ぜひ引き受けてください! なんなら除霊は後回しでもいいので!」
「えぇー」
勅使河原さんはしばらく渋っていたものの、とうとう私と重路さんのお願いに負けた。
「仕方ない……ただし重路さん、条件があります」
「なんでもおっしゃってください! 交通費も支給しますし給与面も考慮します!」
「いやそういうことじゃなくて」
勅使河原さんは真剣な顔で、重路さんと向き合う。
そして重々しく口を開いた。
「まず、バイトは必ず期間限定にすること。最長で1ヶ月。もちろん早乙女さんもバイトをするのは1ヶ月だけ。もしそれを破ったり、早乙女さんを引き抜いたりするなら……呪います。全力で」
「わ、わかりました」
「あと……」
勅使河原さんはもうひとつ条件を出し、重路さんがそれに頷くと、ようやく笑顔になる。
「よし! じゃあ早速現場に行きましょう! いてててて」
龍に噛まれているらしい勅使河原さんは、頭を押さえながらもにこにこしながら立ち上がったのであった。




