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暗がりの森へ

 吾は武と名誉を重んじるドラゴンボーンの戦士、へカチン。

 高貴にして神秘なるエラドリンのレンジャーと神の御業を顕す敬虔なるエルフの僧侶グエドベ、怜悧なるヒューマンのウィザードであるペンテルらと共に旅をしている。

 あてどない旅である。


  ◆


 さて、地下水路にて街に疫病を流行らせんとする邪悪の企みを打ち砕いた吾等。

 その際、一時的とはいえ手を結びし血風党のフェイターンらより、同党への入党を勧められる。

「一度マガンテ様に会えば、絶対その素晴らしさが分かるからついてこい!」

 そのような呼びかけに吾等顔を見合す。

 ともかく、地下水路で保護せし迷子の少女と迷子の娘を街へ返さねばならぬ。と、吾等はそのままの同道は断るのであった。


  ◆


 こうして吾等は地下水路より帰還した。

 迷子の少女(&子猫)は親元へ無事返したものの、問題は途中で拾いし娘である。その娘、領主の姉であるミリーはどうしても屋敷には戻らぬと聞かぬのだ。

「一度戻ったら、結婚するまで軟禁されちゃう! 私はこの街から逃げ出したいの! あなた達冒険者なんでしょう? お金は払うから王都まで連れて行って!」

 吾等はミリーをどう取り扱うか協議す。

「とりあえずセイハニーンの寺院に行って、メシ食って帰ろうぜ」

 さすが、人生の愛読書は居酒屋のメニュー、と言い切るグエドベである。敬虔なる彼の言葉に吾等は互いに頷く。セイハニーンの月の光寺院に預けるのが最良であろう。

 少なくとも、しばらくミリーにも考える時間が必要である。そう言うは高貴なるエラドリンであった。

 その高貴なるエラドリンは自らのことを語るのだ。今の自分はこれまで少しばかり邪であった従人格(でも善)から解放され、善なる主人格(もっと善)に目覚めた、と。何言ってるのかちょっとわからないかもしれないが、その主たる善人格の言うことはなるほどもっともと思わせるものであった。ミリーに向かい、

「一度、考えてごらんなさい。私達があなたを王都へ連れ出すことは可能です。けれど、そのあとのことはどうしますか? あなたは今のような生活はできなくなるかもしれません。王都で貧しい生活を余儀なくされるやもしれません。あなたはそれに耐えられますか? この街での生活と王都での生活、どちらを選ぶかよく考えた上で結論をお出しなさい。そうであるならば、私達はあなたに手を貸すのに躊躇いはないでしょう」

 そう諭されてミリーも、性急に答えを求めるは無分別なり、と考えを改めたようである。

「……そこまで言うなら……一日くらい考えてやってもいいけど……」

「第3の選択肢としては我々と一緒に来る、というものがあります。丁度、今、壁役がもう一枚あれば便利と思っていたところです。ファイターになってください」

 あんまり変わっていないのではないか。高貴なるエラドリンはまったくもって善なる人格に支配されているのだ。


  ◆


 けれど、セイハニーンの寺院に行くにも、ミリーの姿を公に晒して歩くわけにはいかない。屋敷から抜け出した彼女を、衛兵隊が探して回っているはずだからである。

「変装して行かなきゃな」

「不自然でないように、顔を隠して……」

「頭から袋かぶせて歩かせれば、誰ともわかるまい」

 なるほど、それは全然目立たないであろう。

「鼻と耳があると不自然だから削いでいこうぜ!」

「それだ!」

 敬虔なるグエドベのルール無用の残虐ファイトに吾等は善なる気持ちを高ぶらせるのであった。

「耳削がれて変装させられるくらいだったら……」

 ミリーは大人しく月の光寺院での軟禁を受け入れる。


  ◆


「へーいへーい」

 月の光寺院にて、敬虔なるグエドベがセイハニーンの信徒達にハイタッチで挨拶を繰り返す。罪なき信徒達は皆、温かい笑顔で迎えてくれるのだ。

「はは……は……」

 そして、そそくさと姿を消す。もはや、おなじみの光景であろう。

 こうして自動的に人払いが済んだところで、セイハニーンの司祭デスメトーが姿を現すのだ。

「本日はいかなる御用ですかな?」

 穏やかな笑みを浮かべるデスメトー。吾等は早速用件を切り出した。ミリーを匿ってくれるように、と。だが、デスメトーは最初首を縦に振らぬ。領主が姉のことを心配しているというのだ。

「せめて、領主様にだけでも無事をお知らせしておきたいのですが……」

 領主は子供であると聞く。そこからミリーの居場所が知れてしまうとも限らぬ。吾等は顔を見合わせた。

「……ところで、姫様をどこで見つけたのですか? どのような経緯で?」

 デスメトーの問いに、吾等は地下水路でのあらましを告げる。するとデスメトーの表情が次第に曇っていくではないか。

「地下水路に血風党が? しかも疫病をもたらそうとしていた、と? これは一大事です。邪悪の脅威がすぐそこまで迫っているということではありませんか。明日にでも町長にこの事態を知らせなければ……けれど、私の話だけでは町長も本気にしてくださるかどうか。どうでしょう? 町長に血風党の脅威を知らしめるためにご助力願えないでしょうか?」

 デスメトーの言うには、この街に危険が迫っていることを町長に示すための証しが欲しいとのこと。そして、吾等にも共に町長の説得にあたってほしいというのだ。

 吾等はミリーの受け入れを条件にその要請を受け入れることとした。

「とりあえず、地下水路で倒したキャリオンクロウラーの触手でも拾ってきて証拠にしようぜ。街の地下水路にこんなのが出るなんて何かおかしいって」

 吾等は町長に示す証拠として、もう一度地下水路にくだり、怪物の死骸をもってくることとした。

「セイハニーンのご加護を」

 そう言って吾等を送り出してくれたデスメトーに対して、アヴァンドラの信徒たる高貴なるエラドリンは頭を下げるのだ。

「いらない」


  ◆


 地下水路での怪物の死骸の回収は滞りなく済む。

 そうして地上へと帰還すると、もう夜も遅い時間であった。

 吾等はいったん英雄クロムの店へと向かう。いかなる経緯でそこへ向かうことにしたのであったか、ちょっとそれはもう覚えてないです。でも、行ったのだ。

 夜ともなれば、英雄クロムの店には多くの客がいる。その中から吾等は魔族と血の繋がりある種族ティーフリングである、商人のスリルを探し出した。

 スリルは言う。

「丁度よかった。実はわたし、明日からこの街の西にある3つの村々を回る予定なんですよ。他の商人達と一緒にね。ほれ、最近何かと物騒な噂を聞くでしょう? 街道を西に行ったところにある橋にはミノタウロスが出るそうですし……。それで商人仲間で集まって、皆で行こうということになりまして。引いては、皆さん方にその隊商の護衛をお願いしようかと思っていたんです。皆で金を持ち寄りまして、ええ。一日金貨2枚でおおよそ2週間ばかりの旅になりますか。それに商売がうまくいけば、もう少し色をつけても良いかと思っております。如何です?」

 スリルの持ちかけてきた話は悪くないように思えた。ただ問題があるのだ。

「明日はちょっと用事が……町長の説得を頼まれているから」

「説得を2週間後に延ばしてもらおう」

「ていうか、王都に商売しに行けよ。そうすりゃ姫様も連れていけて手間が省けるのに。使えねえな!」

「そういえば、マガンテに会いに行くという話もあったなあ。よし! 行こう」

「でも、俺の方が上だし? 立場が上の人間がわざわざ会いに行くっておかしくね? 向こうから会いに来るべき」

 いつものように脱線す。

 無理に話を戻すのであった。吾等は1日遅れでスリル達隊商の護衛につくべく、後から追いかけるということで話がつく。

「初日に襲って、翌日護衛につけば、報酬ももらえるし一石二鳥」

 敬虔なるグエドベは経済的合理性を追求する。

 吾等は隊商がどのように村々を回るかのルート表を渡されるのだった。

「まさに襲撃してくれと言わんばかり」

「そんなことを考えるのは善の道に反する。善というものは、善きことを為そうと思ってからやるものではない……善とは考える前に既に実行しているものだっ!」

 なんだかよくわからぬ。


  ◆


 吾等は月の光寺院へと戻る。

 明日の町長説得に備え、デスメトーと打ち合わせなどをするためであろう。吾はよくわからぬが。

 と、夜半に領主の姉であるミリーが吾等のもとを訪れるではないか。

「この街を捨てるかどうかはともかく……一度、弟のウィルに会いたいの。心配してるっていうし……。それで考えたんだけど……ウィルをここへ連れてきてくれないかしら?」

 そう言って、彼女はエメラルドを1つ差し出すのだ。

「生きてなきゃ駄目?」

 敬虔なるグエドベはそう告げて、ミリーの弟である領主を連れてくることを約するのだった。


  ◆


 翌日、吾等はデスメトーと共に町長であるジャミガンの元を訪れた。

「ジャミガンという名前からしてマガンテと関係がある」

 高貴なるエラドリンの慧眼に吾等は溜め息を漏らす。

 そうして、ジャミガンの現れるのを待つこと幾時。

 ようやく姿を見せたジャミガンは幾分太った目つき鋭き男であった。

「君等がここ最近デスメトーに余計なことを吹き込んで心配事を増やしている連中か? 彼を禿げさせるつもりかね?」

 ジャミガンは吾等を見るなりそう言うのだ。吾等はこのような相手にいかなる言葉を尽くすべきか?

 と、次の瞬間、吾は目を疑った。

 敬虔なるグエドベが、奇声を発しながらキャリオンクローラーの触手でジャミガンの頬をペタペタするではないか。事態の切迫したるを言葉でなく態度で示すのだ。そして、

「珍味です」

 贈り物にした。

「このような怪物が街の地下水路にまで現れているのです。危険が迫っています」

「バカな。そんな物が街に出るなど聞いたこともない。これは、本当にこの街の地下水路に現れたものなのかね?」

 ジャミガンは驚きつつも、疑うことを止めぬ。吾等はそれぞれ己の知識や経験を駆使して、ジャミガンを説き伏せんとす。

「このような怪物が自然発生するわけがない」

「血風党を放置しているせいでは?」

「それに、血風党はこの街に疫病を流行らせようとしていたのですよ」

 高貴なるエラドリンは説得と同時に、二刀流で己の身体能力の高さを見せつけんとす。

「……しかし……そのような報告は上がってきていない……聞いていないのだ」

 ジャミガンの言葉からすると、彼自身にも目となり耳となる者がいるようなのだが、それらの者から血風党のことは何一つ聞かされていないようであった。

「……これは、あなたも蚊帳の外に置かれているということではありませんか?」

 そう聞かされて、遂にジャミガンも重い腰を上げる。

「……いいだろう。血風党とやらに対する警戒を衛兵隊に命じよう。街道の警備にもつかせよう。また民兵の招集も検討せねばなるまい……」

「それと、あなたの配下の者も調べた方がいいかもしれませんよ」

 高貴なるエラドリンの言葉にジャミガンは大儀そうに呻くのだ。

「いいかね? 招集をかけるとなったら一大事だ。これで何もなかったら、君等は莫大な損害を街に与えることになるのだぞ?」

 そう言いつつも、

「ともかく……このことを知らせてくれた点については礼を言う。これは少ないが……」

 ジャミガンは吾等に金貨を120枚寄こすのだ。

「……隊商の護衛とかバカらしくね?」

 怜悧なるペンテルが非常にもっともなことを言った。

「結局、金が全てなんだなー」

 敬虔なるグエドベも世の無常を感じたのかもしれぬ。

「違う、善なる心がすべてなのです」

 高貴なるエラドリンはきっぱりと言い放つ。

「善って……何かしたっけ?」

 いっぱいしているはずであるがうっかり失念した。


  ◆


 さて、ついでである。この街の領主であるウィルなる少年をミリーの元へ連れて行くこととする。

 デスメトーの案内で、領主と会うことも叶った。

「あなた達がこの街のために尽力してくれている方達ですか? はじめまして」

 領主である少年は礼儀を弁えているようであった。

 吾等は彼を姉の元へ案内しようと申し出、承諾を得る。

「お姉ちゃんは無事なんですか?」

 心配そうな少年を安心させるように吾等は微笑むと、彼を目立たぬよう袋に詰めこむ。そして、月の光寺院へと運びこむのだ。

「寺院に連れてっちまえばこっちのもんだ」

 などと、そんなことはしないのだった。

 残念なことに侍従長のクラフトなる老人も領主の付き添いとして同行することになったからだ。

 ともかく、ミリーに頼まれたように弟を連れてくることには成功したわけである。

 姉と再会した領主の喜びは大であるようだった。だが、姉から話を聞くにつれその表情が沈んでいく。

「このままだと、あの嫌な男と結婚させられる。だから……私は街を出ようと思うの」

「それって……お姉ちゃんは僕を置いて行くの? 僕を捨ててしまうの?」

 そう言われてミリーは吾等の前で初めて辛そうな顔をして見せた。

「そんなつもりじゃ……でも、この街から逃げないと私……。そうだ、ねえウィル? あんたも私と一緒に街を出ましょう。あんたも我慢することないの。領主だなんて屋敷に押し込められてるの、あんただって厭でしょう?」

 だが、ウィルは首を振るのだ。

「それは……できないよ。だって、誰かがやらなくちゃいけないことだし……それに、この街には父様や母様が眠ってるんだよ? なのに、お姉ちゃん……僕や母様達を置いて行っちゃうの? 行かないで……」

「じゃあどうしろって言うのよ!? 私にあの男と結婚しろというの!?」

「そうじゃないけど……」

 そこで侍従長が口を挟むので大事だ。

「姫様、この街から出るなど仰いますな。吾らとて、姫様とあの男との姻戚関係など認めたくはありません。ですが、領主様に出て行かれるわけにもいかぬのです。この街のためなのですぞ。お聞き分けください」

「二言目にはいつもそう! 街のため街のためって……街のために我慢してください、街のために結婚してください、街のために父様や母様の無念は忘れてくださいって……できるわけないでしょう!?」

 どうやら、彼等の両親は何か不審な形で命を落としたらしいと窺われた。

「ああ、何年か前に手掛けた、あの……」

 敬虔なるグエドベが何やら思い当たる節があるようなことを無駄に言うのだ。

「もういい! 私一人で行く! バカ!」

「お姉ちゃん……」

 姉はいきり立つし弟は泣きだすしで収拾がつかぬ。

「まあ待て」

 敬虔なるグエドベが退室しようとするミリーの頭を鷲掴みにして引きとめる。高貴なるエラドリンも

「とにかく、今は2人とも頭を冷やした方がよろしい。一時の感情で物事を決めつけず、よく考えて結論を出すべきです」

 正論を述べて、2人を諌めるのだ。

「こんな奴に正論言われてる……恥ずかしいなあ」

 グエドベが付け加えた。


  ◆


 吾等はデスメトーにミリーの軟禁を頼み、そのあと領主を屋敷へ送り返すこととする。

 道すがら、領主はポツリポツリと語るのだ。

「お姉ちゃんのこと、悪く思わないでください。結婚させられそうになって自棄になってるだけなんです。本当はすごく優しいお姉ちゃんなんです……」

 とてもそうは見えぬが。

「……どうか、お姉ちゃんを守ってあげてくれませんか?」

 そう頼まれては吾らとて鬼ではない。

「報酬は?」

「ごめんなさい、僕、あげられるものないんです……」

「姉ちゃんはあんなにエメラルド持ってんのにな」

「姉ちゃんが弟の分も全部取っちゃったんだろ」

 高貴なるエラドリンは領主を励ますように微笑むのだ。

「ちょっとジャンプしてみなさい」

 その意図は領主にも伝わったようで、

「え? お金、ですか?」

「見損なうな。権力もだ」

 吾等はできる限りのことをすると約するのだった。


  ◆


 町長との会談も終え、ミリーと領主を会わせることも済ませた。あとは、急いでスリルらの隊商に追いつき護衛の任に就くことだけである。

 先行している彼等に追いつこうと、吾等は足を速める。

 日も傾いてきた頃だったろうか。途中、ミノタウロスが封鎖している橋が見えたが、どういうわけかその姿は見えぬ。どうしたことか。遂に討伐されてしまったのか? だとすると、隊商はルート表にあるように橋を迂回して暗がり森へと向かわず、直接橋を渡ったかもしれぬ。

 とはいえ、吾等は渡されたルート表に従うこととした。

 そのうち、道は暗がり森へと入り込む。街の西に広がる深き森だ。その昔、この森には竜が住んでいたという昔話があるのを思い出す。

 と、吾等は嫌な気配を感じるのだ。道の向こうから、何者かがよろよろと歩み寄ってきて、

「……助けてくれ!」

 それは負傷した商人であった。もしや……、と嫌な予感に苛まれつつ事情を聞けば、果たして彼はスリルと共に隊商を組んでいた商人の1人だという。

「護衛についていた傭兵が裏切ったんだ! 連中が森の途中で何か合図したかと思うと、急にコボルドが襲いかかってきて……。傭兵達は、お前達の主への貢物だ、とか何とか言ってさっさと逃げやがったんだ……」

「一緒にいたティーフリングの商人はどうなった?」

「俺以外の奴はみんな捕まった……このままじゃコボルドどもに殺されるか奴隷として売られるか……」

 吾等はその商人には街へ戻るよう指示し、急いで襲撃現場へと急行した。

 道の先に、野営の準備をしていたのであろう。たき火の明かりが見えてくる。その脇に打ち捨てられた荷馬車も。それだけではない。小さな人影がそれらを漁っている様子も見えてきた。

 コボルドだ。

 連中も吾等を目にしたらしい。各々獲物を構えて威嚇の声を上げる。敵は全部で6人。今の吾等にとって敵ではあるまい。

 吾等も武器を取って、コボルド共に打ちかかるのだった。


  ◆


 勝負は僅かの時間でついた。吾のブレスやペンテルの魔法でコボルド達はほとんど一掃され、逃げ出したコボルドも高貴なるエラドリンの弓で倒された。

 吾等は荷馬車等に痕跡を探す。

 ほとんどの荷物は持ち去られるか、焼かれてしまったらしい。そして、捕えられた商人達はさらに森の奥へと連れて行かれたようだ。この先にまだまだ多くのコボルドが潜んでいることを吾等は確信す。

 一刻も早く助け出さねば。


  ◆


 そして、さらに道の先にいる者達を見て、吾等は一瞬言葉を失うのだ。夥しい数のコボルドが吾等を待ち受けていた。20に近いコボルドがいる。吾等もこれだけの数の敵を相手にするは初めてである。

「貴様等、何者だ!」

 キイキイ声がコボルド達の中から響いてきた。頭蓋骨を頭に被ったその姿はコボルドの竜司祭という者だ。

「我等、骨飾り一族に楯突くつもりか!」

「我等は血風党です」

 しれっとしたものだ。

「なに? 血風党は我等と同盟を結んだ相手ではないか。我等が主に、先程貢物として隊商を差し出してきただろうが」

「あなた方の主? とは何者ですか?」

「知らぬのか!? 長くこの地から姿を消していた我等が主、白き竜が遂に戻ってこられたのだ! 我等は主の元に団結し敵を打ち倒すであろう!」

「こいつらの主人はマガンテじゃないのか? 血風党じゃない?」

「でも、血風党と同盟とか言ってた」

「隊商の護衛をしてた連中が血風党の手の者だったってことか」

「捕えた商人達はどうしましたか?」

「そんなこと貴様等に教える必要はない! 死にぇ!」

 竜司祭の号令の元、コボルド達の群れが蠢く。竜司祭の信仰の力によって、さらに力を増したようだ。

「なに? 吾がブレスで一掃できぬだと?」

 吾は常と異なるコボルド共のしぶとさに驚愕す。弱敵等と侮ってはいられない。ペンテルも範囲魔法を重ねる。が、そのペンテルに向けて、森の奥からスリング弾がぶつけられるのだ。しかも、ただの弾ではなく粘着弾である。

「動けん。やばい」

 ぞろぞろとコボルド達が吾等を取り囲む。素早い動きで吾等の前後左右に散らばるのだ。そして、数を頼みにさんざんに打ちかかってくるではないか。

 コボルドは群れを為せばなすほど始末が悪い。

 特に吾は隣接するほとんどすべての場所をコボルドに占められてしまった。もう、戦術的優位にコボルドの能力による攻撃ロールボーナスで、タコ殴り状態。だが、今回の吾はしぶとかった。

「効かぬ!」

 硬い鎧に物を言わせ、コボルド達の攻撃を凌ぎ続ける。単に向こうの目が悪かっただけだが。吾だけではない。皆そうやって凌ぎつつ、着実にコボルド達の数を減らしていった。

 が。

「うお」

 コボルドのスリング兵の弾が吾にクリティカルヒットする。これが痛かった。さらに続く、吾を取り囲みしコボルド達の刃の数々。そのうちのいくつかが吾の鎧を貫き、

「ぐう……」

 遂に吾は倒れてしまう。いくら何でも、あんなに食らったら助かるわけあるかい。

 だが、神はまだ吾を見捨ててはいなかった。具体的に言うとセイハニーンの神。

「ヒーリングワード」

 吾は危ういところで意識を取り戻す。

 厳しい戦いとなった。力を出し惜しみしている場合ではない。一日毎パワーを使用し、アクションポイントを費やして、敵を少しでも削っていく。たった1ポイントでも敵の体力を減らしておけば、後続の誰かの攻撃で敵を丁度倒せることもある。

 敵のスリング兵の遠隔攻撃が厄介であった。が、高貴なるエラドリンが敵の指揮者である竜司祭を一撃で真っ二つにした時、勝負はついたと言っていい。相当数を倒され、今また指揮官を失ったコボルド達は戦意を失ったようだ。僅かに生き残った者達は脱出し始める。それを追い落としつつ、ようやく戦いは終わった。

 だが、その場にはスリル達商人の姿はなかった。すなわち、まだ先に彼らが囚われている場所があるということ。しかも、先程竜司祭は気になることを言っていた。白き竜が戻ってきた、と。

 この先に待つのは恐るべき竜なのではないか?

 吾等はこのまま先に進むべきなのか?

 それとも、一旦引いて力を回復すべきなのか?

 選択せねばならぬ。


  ◆


町長ジャミガンの説得(技能チャレンジ)成功。経験値375。



雑魚コボルド(経験値25)×6=150。


雑魚コボルド(経験値25)×8=200。

コボルドの遊撃兵(経験値100)×4=400。

竜鱗盾のコボルド(経験値125)×2=250。

コボルドのスリング兵(経験値100)×2=200。

コボルドの竜司祭(経験値150)×1=150。


1人当たりの経験値は431。



手に入れた財宝等

町長ジャミガンより金貨120枚

ミリーより、エメラルド1個


  ◆


 今回はクエスト途中で中断という形になっています。

 ルールブックによると大休憩を取らなくてもレベルアップはしてもいいようなので、このままレベルアップして続けることも可能です。

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