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白き主~裏切りの報酬~前編

 吾は武と名誉を重んじるドラゴンボーンの戦士、へカチン。

 先日、プレイヤーズハンドブックⅡを購入したのであるが、本当に〇&〇のルールブックは重くて高くて世界一であろうこと、議論を待たない。

 あてどない旅である。


  ◆


 さて、暗がり森にて竜司祭率いるコボルドの徒党を打ち破りし吾等。

 だが、その場には襲われたはずの商人スリルの姿は無し。

 おそらく、他にまだスリル達を連れ去った仲間がいるのであろう。しかも、竜司祭は言ったのだ。この森に竜が戻ってきて、自分達はそれに仕えている、と。

 俄然雲行きが怪しいのである。

 このまま進まば、吾等は竜と相見える羽目になるのではないか? 今の吾等はかなりの力を使い果たしてしまっている。この身を支うるだけの力すら怪しい。

 ありていにいえば、オレら死ぬんちゃうかなあ、であった。

 高貴なるエラドリンやグエドベが大休憩を取るように提案するのももっともである。だが、その間に攫われた商人達がいかなる目に逢うかも気がかりだ。

 吾等は前回捕えていたコボルド(そういうのが居たのだ)に目をやった。

 視線を向けられて、コボルドはわが意を得たりといわんばかりに口を開く。

「何か喋りたいから、何でも聞いて?」

 ここから先の情報を喋りたくて仕方がない様子であった。何でかは知らぬ。何かの都合であろう。それに対して高貴なるエラドリンは遠慮なく問うのだ。

「私は誰だ?」

 コボルド相手であろうとも哲学問答を挑む。これはエラドリンとしての嗜みというところであろう。吾等はエラドリンという生き物のその神秘な生態に震えるのであった。


  ◆


 ともあれ、吾等はまた新たな経験を積んでいる。その身から湧き出る力も増した。そう考えれば、戦えぬわけではない。

「この先にアジトがあり、そこにはコボルドの腕きき剣士がおります」

 捕えたコボルドが白状する。その程度なら戦えぬわけではない。

「捕まえた商人達は生贄とします」

 それはいかん。一刻も早く助け出さねば。

「今頃は我等の主、つまり白き竜を呼び戻すための儀式をしていることでしょう」

「悠長なことはしていられない。4時間休もう」

 他種族と違い4時間の休息で疲れを癒すことのできるエラドリンは、そう強く主張するのだった。4時間休まれても、吾には何の癒しもないのだが。

「しかし、4時間の休憩の間に商人達が殺されてしまうかもしれない」

 同じエラドリンでも、エラドリンのウォーロード(戦闘指揮官)は、そう懸念を示すのである。賢明な男だ。いいぞ、もっと言ってやってくれ。

 ところで、誰だ。

「我が名は戦闘指揮官カランバ。道に迷って南の方からやってきた今回のゲストキャラだ。よろしくお願いします。おみやげの煉瓦チョコです」

 だそうである。吾には今、少しばかり気がかりなことがある。それは、そのお土産のチョコを食せなかったことだ。

 久しぶりにこっちに来ることができたというので、彼にも善なる一党に参加してもらったという次第である。

「カランバって、グロ画像を見せられる映画?」

「テレビCMでその『カランバー!』とかやってたんだから、おおらかな時代だったんでしょう」

「野球中継の合間とか、お茶の間の食事時にカランバ」

「そりゃ公開中止にもなるわ」

 全然ファンタジーでない会話の後、

「私の古くからの友人です」

 高貴なるエラドリンがカランバのことをそう紹介する。

「友達? いないでしょ?」

 敬虔なるグエドベは、神に仕える者として当然、真実を告げるのだった。

 そう言われた高貴なるエラドリン、右手を差し伸べてくる。

 そんなことないよ、僕と握手して友達になろう、とでも言うように。

「……右手は預けられないな」

 何かを察したグエドベはあからさまに警戒するのだ。そんな彼を安心させるかのように、高貴なるエラドリンは言う。

「左手でもいいよ?」

「そりゃあ、そっちは二刀使いだからなあ」

「良いところに気がついた」

 高貴なるエラドリンは左右どちらの腕でも長剣を抜くことができる態勢であった。


  ◆


 そんなことはどうでもいいのである。早く助けに行かないと人質となった商人達の命が危ない。善なる者として、ここで取るべき行動は決まっているであろう。

「善だからこそ、自分が生き残れる可能性を高めた方がいい。無謀は狂人のすること」

 高貴なるエラドリンの言葉はもっともであるので、一旦大休憩を取ってから助けに行くこととした。

「だいじょぶだいじょぶ。死なないって。殺されちゃってた時はしょうがない」」

「えーと、一応言っておきますが、休憩している間におそらく生贄は竜に捧げられてしまうと思います」

 捕えていたコボルドが、なぜか聞いてもいないのにそんなことをのたまうのだ。

「助けに行こう」

 殺されるのが確定というのであれば、話は別である。嫌ではあるが、助けに行くのに何の躊躇いがあろうか。なんか無理やり先に行かせよう行かせようという圧力がかかっているような気がするが、気のせいであろう。そんな自由度のない一本道シナリオなわけがない。

 それに、今回は戦闘指揮官カランバがついているのである。しかも吾等は日々の戦いの中から新たな力も得ている。白き竜など何するものぞ。そんな勢いで先を急ぐのだった。嫌だけど。


  ◆


「主を呼び戻すまでの時間稼ぎをするのだ!」

 うらー、と襲いかかってきたコボルド達の斥候隊をさっさと片付けて吾等は森の奥へと歩みを進める。

 と、森の奥から規則的に響く音あり。耳に達するそれは太鼓のようだ。あの太鼓で竜とやらを呼び寄せようとしているのであろう。吾等はそう目星をつけると、太鼓の音のする方角へと足早に進む。

 森が開けてきた。そして、吾等は見る。森の先が広場のようになっているのを。そこには木でできた柵が設けられ、その奥に太鼓と小屋が見える。柵の裏側にはコボルド達が身を伏せ、待ち構えている様子であった。もちろん、太鼓の傍にもコボルド達が控え、どーんどーん、と奏でている。吾等の脇にある森の中に潜んでいる者もいるようだ。

「あの太鼓を止めねば竜が来る」

 それは避けたい。吾等はまず森に潜む者、コボルドのスリング兵達に狙いをつけた。以前の戦いで飛び道具を使う相手の鬱陶しさは学んでいる。高貴なるエラドリンは弓を射かけ、ペンテルは魔法を放つ。

 そして、戦闘指揮官カランバ。彼は一息にスリング兵に接敵しその剣で切り倒さんと試みた。と、

「危ない!」

 カランバは危ういところで飛び退くのだ。スリング兵まであと一歩というところで、突然地面が崩れ落ちたのである。落とし穴だ。落ちればただでは済まなかったであろう。スリング兵を囮にし、近づいてきたものをここへ落とすつもりだったらしい。コボルドどもも姑息なことを企む。

 柵の裏に潜んでいたコボルドの遊撃兵らが動き始めた。

 いよいよ乱戦が始まる。

 吾やカランバがスリング兵を倒している間に、コボルド達は数を頼みに駆け寄ってきた。

 その隙間を縫うように、ペンテルが遠隔魔法で太鼓(&その打ち手)を狙う。打ち手が倒れ、太鼓の音が途切れた。

 が、そのペンテルがコボルド共の目を引かぬはずもない。わさわさと近寄るコボルド達。それを、グエドベが幻惑の魔法をかけ、落とし穴へと誘導する。戦列が崩れたところに高貴なるエラドリンが斬りこみ、斬り倒した。

 最早、吾等にとってコボルドは脅威とならぬ。

 話に聞いていたコボルドの腕きき剣士も、吾等に一太刀も浴びせることなく屍をさらすのだった。吾等は大きな傷を負うこともなく、十数人からなるコボルド達を一掃したことになる。とはいえ、もしここに竜が飛来していれば話は別だったかもしれぬ。そう、まだ竜がいる。危機が去ったわけではないのだ。

 吾等は取り急ぎ、攫われた商人達を探す。と言っても探す場所はひとつであろう。

 広場にある小屋の中に、彼等はいた。彼らが運んでいた商品と一緒にである。

 助けられたスリル達商人は吾等に深く感謝するのだ。

「ありがとうございます。お陰で命を拾いました。もしよろしければ、私達が運んでいた商品の中から、お1人様お1つずつ、お好きなものを差し上げます」

 そう言って、幾つかの魔法の品々を差し出してくるではないか。ライフドリンカー・ソード+1など実に目を引くラインナップだ。

 これら全部もらうわけにはいかんのか。というか、商人達が全員死んでしまったらこれらの所有権はどうなるのか。

 そして、小屋の外から聞こえてくるばっさばっさという羽ばたきの音。


  ◆


 様々な思惑を含みつつ次回へ続く。

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