畢竟予兆5
「そうかそうか、ありがとう茉莉也。ハッキングにどうも手こずっててさ、これも魔法の仕業なのかな、」「てめえ! 何しやがるゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」
――――……?
騒々しい何かの破壊音。それはだんだんと大きくなってくる。
「茉莉也……事故かな」
「いや……何かおかしい」
「ア、ハハハ! 吶喊! AHAHA! WEEEEEEEEEE!!!!」
耳を突き刺すような、甲高い声。角に隠れ、見ると、
――――ピエロ……?
道化師の格好をした少女が、笑いながら暴れている。ジャグリングで使うような真っ赤なクラブを投げ、壁を破壊する。
「ホラホラ、たのC! Eね! 最高だネ! HAHAHA!」
ぞろぞろと研究員がやって来る。この暴れ狂うピエロを止めに。
「そこのお前! 何者だ!」
「んンNN~~~~???
ぴえろだよォ?」
びゅううっ
空気を切り裂くように、ピエロがクラブを投げた。それは研究員の頭に当たり、
爆発した。
研究員らの白衣が赤い飛沫で染まる。
びゅん、びゅんびゅんッ
次から次へと、人の塊を目がけて投げ、爆発。の、繰り返し。
――阿鼻叫喚。
たった一人の道化師によって何人もの研究員が、殴打し、被爆する。
「翔、更田かペレストロイカは、」
「い、いまは、Яの書類盗んだとこの始末を……」
「……クソッ!」
安名茉莉也が、ピエロの元へ駆ける。更田とペレストロイカがいないなら、ここで戦える者は、自分。ただ一人だと悟ったのだ。
充満する血の香りを掻き分けるように進み、ピエロと相対した。
「テメェ……何してンだ」
ピエロの足元に、白衣と……顔?
――――まさか!
スパイ。その白衣と、顔――フェイスマスクで、偽装していたのだ。まさしく、このピエロは!