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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
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008 『新種(ニュー・スピーシーズ)』前半

008 前半になります。


よろしくお願いします。

 新たなパーティーを立ち上げるため、ポニテさん、ハンプティさん、虎猫さんの三人にパーティー申請を出した。

 各々の妖精が僕からのパーティー申請を告げられた三人はすぐさま受諾した。

 リリィがパーティーリストを見せてくれた。僕の名前の頭文字にパーティーリーダーを示す【L】が灰色で表示された。この表示を見るのは初めてだ。リンクではという意味ではなくて『Relic』の頃からだ。

 『Relic』時代は基本ソロで遊んでいた。レイドボスを除けばパーティーに誘われてもなるべく断っていた。きっとカズさんたちと知り合わなければ一人で遊んでいたと思う。おそらく、此処にも一人で来ただろう。

 社交性なんて皆無だった僕はソロで遊べるオンラインゲーム『Relic』が楽しかった。そんな僕に誰かと一緒に遊べる楽しさを教えてくれたのはカズさんだった。出会いは最悪だったけれど……それから僕はカズさんを通してノヴァさんとポニテさんとも出会えた。

 ポニテさんは僕の後ろで虎猫さんと楽しそうに談笑している。この人は出会った頃から変わらず、脳天気というか楽観的で他人と壁を作らない人だった。いい意味で距離を縮めてくれる女性だ。

 パーティーを新たに組み直したカズさんとノヴァさんが僕に視線を移した。

 もしかしたら……ここで別れたら二度と会えないのかもしれないと不安と焦りがこみ上げた。

「カズさん、ノヴァさん。僕は……」

「なんつー顔してんだよ! ここは現実であってリアルじゃねーぞ? お前は『Relic』ではそうとう強いプレイヤーなんだ。自信を持て」

 カズさんががさつに僕の肩を叩く。じんじんするほどの痛みが、心地良くも感じられた。カズさんらしい激励だった。

「真悟さん。ごめんなさいね。見捨てないとか言っておいて、あなたにパーティーリーダーを任せてしまって」

「ノヴァさん、謝らないで下さい。これがいちばんいい編成なんですから」

 それは仕方ないことだ。ハンプティさんとスグルさんを一緒にさせるわけにはいかない。それに、効率を考えれば二手に別れたほうがずっといい。

「全部終わったら、今度はふたりきりで遊びましょうか? もちろん、ポニ子には内緒で」

「……か、考えておきます」

「ふふふ、冗談よ」

 自前の気質で僕らを導いてくれたノヴァさん。芯は強いのに心配症で、本気になりかねない冗談をいう彼女に戸惑うこともあったけれど、面白い人だ。

「ノヴァちゃんがいないと不安?」

 いつのまにかポニテさんが僕の真横に立っていた。

「大丈夫だよ。根拠はないけど、真悟くんならちゃんとできるって」

 ポニテさんらしい考え方に僕は笑った。僕にはない楽観的な視点と思考が羨ましかった。だから、僕はこの人に惹かれたんだ。

「やっと笑ったな?」

 カズさんが人差し指で僕の額を軽く押した。

「お前はポニたちをきちんと見てやれ。安心しろ、俺たちも大丈夫だ。……じゃあ、行くな」

 カズさんがかざした手の平に、大振りで(はた)く。

「痛って! 加減しろ、バカ!」

「さっきのお返しですよ。肩、ちょっと痛かったんですから」

「生意気言いやがって。……無事でいろよ」

「ふたりも」

 こちらの気持ちにカズさんとノヴァさんは手を上げて応え、セダンに乗り込んだ。運転はカズさんで、助手席にノヴァさん。後部座席にはスグルさんが乗り込んだ。

 スグルさんか。かなり変わった人だけれど、カズさんたちなら上手く接せられるはずだ。

 カズさんたちを見送り僕らもワゴン車に向かうことにした。

「あのさ、運転は俺に任せてくれない?」

「ちょっとー、リーダーはシンちゃんでしょ? 運転はシンちゃんがすればいいじゃーん」

 虎猫さんが噛みつくが、ハンプティさんも黙っていなかった。

「リーダーが運転したら締まらないだろうが。こういう時はお供がやるもんなんだよ。それに、こう見えて俺は運転が好きでさ。ドラテクはそれなりにあるんだぜ」

 自信満々にドラテクといわれてもなぁ。

「なるべく、飛ばさず安全運転にしてください」

 ハンプティさんの理屈は理解できなかったけれど、ペーパードライバーの僕が運転するよりいいだろう。

「オッケー。あとさ、俺、あんたのことシンくんって呼んでいいかい? あんな失礼なことしたからさん付けがいいと思ったけど、真悟さんだとあれじゃん?」

 なにがあれなのかわからないのだけれど、とりあえず頷いた。

「俺はあんたと仲良くなりたいっつーかさ。だから、親しみを込めてシンくんって呼ばせてくれよ」

 案外、この人は直情的だけど悪い人ではないかもしれないと思い直した。

「それはもう、好きな様に呼んで下さい」

「良し! じゃあ、みんな車に乗り込んでくれ」

 一足先にハンプティさんがワゴン車に乗り込んだので僕らも続いた。乗車する際に困ったのはポニテさんだった。

 彼女のレリック武器である大剣は、ほぼポニテさんと同じ高さだ。車の乗り降りは難しい。

「うーん、どうしよっか?」

 苦笑いのポニテさんにツインテが「大丈夫だよ」と助け舟を出した。

「レリック武器は適正者さまの一部みたいなものだから大きさの変更もできるよ。さぁ、ポニちゃん、ちょうどいいと思う大きさまで小さくさせてみて」

 そんな機能あったのと心の中で密かに突っ込んだ。

「ほーい」

 ポニテさんもポニテさんで疑問を抱かずに素直に受け入れすぎだ。

 片手で持っていた大剣がみるみると縮小していき、手の平に収まるくらいのサイズになった。

「うん、ポニちゃん、上出来だね。あとは無くさないように、こうしてっと」

 ツインテは自分が装備するにはちょうどいい大きさになった剣に触れると、柄を通すように鎖が施された。ブレスレットとして身につけさせようとしたみたいだ。

「ツインテ、すっごいね。てか、こんなことまで出来たんだー」

「私達は適正者さまをサポートするんだから。これくらい出来ないとね。戻すときは小さくする時と同じ要領でやれば元にもどるからね」

「おー、超ベンリじゃん。さっすが白の創造主。こっちの都合を理解してくれてるー」

僕としてはあまりにもご都合主義すぎて苦笑いだ。ともあれ装備の件が一段落して、全員ワゴンに乗車した。

 僕は助手席に座り、リリィから聴いた渋谷方面にある棺の場所をハンプティさんに教えた。

「渋谷区役所の裏にある小学校わかりますか?」

 棺は区役所の真裏にある小学校にピンが刺さっていた。

「区役所はわかるけど。小学校なんてあったんだ。まぁ、近くまで行けばいいか」

 ハンプティさんはアクセルを踏み込んでハンドルを捌いた。

 国道はガードレールにぶつかった車や玉突きを起こしている車ばかり目についた。走行できない心配もしていたけれど、馬鹿正直に国道を走るのではなく、脇道に入って目的地に向かうことにした。

 後部座席にいる女子二人から話し声が聞こえてくる。

「あたしさ、渋谷って好きじゃないんだよね」

 虎猫さんが淡々と話しだす。

「いつきても人の山。歩きたくても思うように動けない。うるさいし、ナンパはされるし。じゃあ来るなよって話だけど、あたしにだってここに来る目的があるわけじゃん。それを考えたらみんなも目的があるからこの街にいる。あたしも渋谷に集まる人らと同じかーなんて思ったらげんなりしちゃってさ。そんな気分にさせられる渋谷が嫌いなんだ。いつか、静かな渋谷を一人で歩いてみたいなんて考えたこともあったんだ。渋谷を独り占めとかおもしろいんじゃね、みたいなさ」

 失礼だけど、虎猫さんは見かけによらず色々と考えているのだと感心した。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


008後半は19時頃に投稿します。


どうぞ、よろしくお願いします。

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