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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
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007 『繋がる(リンク)』 後半

007『繋がる(リンク)』の後半になります。

「ねぇ、なんだかおかしくない? キーは刺さっているのに、なんでドアの鍵は閉まっているんだろう」

「こっちもだ。エンジンすら掛けっぱなしの車ばかりだ」

 カズさんが目を細めウィンドウ越しに運転席を凝視しながら言う。

「慌てて車から飛び出たとしたら、ドアのロックは外れているはずだ。真悟、お前が戦ったのはガルブだけなんだよな? 魔法を使うようなレリックモンスターはいなかったか?」

「エレメント持ちの狼種はいませんでした。そもそも、エレメントによる魔法攻撃をされたら車だって無事なはずがない」

 『Relic』の魔法は属性を意味するエレメントがある。武器のレリックから魔法が扱えるように、獣系のレリックモンスターは肉体に特定のエレメントを宿し、魔法攻撃に似た攻撃をしてくる。

 運転手はドアがロックされたまま物理攻撃を受けたのであれば、無人の車が完成されるがそれは考えにくい。

「だよなぁ。レイラ、お前はなにか知っているか?」

 レイラはぶんぶんと首を左右に振った。

「私達が知っているのは白の創造主さまから頂いた知識だけよ。全てを知ることなんて、白の創造主さまでも出来ないことくらいはあるのよ。そんな全知全能みたいなことができるとすれば、あなた達の世界で言う『カミサマ』じゃないかしら」

 『Relic』の創造主たちは神という位置づけはされていなかった。そもそも黒と白の創造主は『ルーシェンヴァルラ』の歴史上に存在した超古代文明を作り上げた古代人の生き残りだ。行き過ぎた科学は究極の『生体』と『道具』を創造することに成功する。結果としてそれら二つの科学で創造された産物は兵器となり戦争が起きた。最終的には『生命』と『道具』を作り上げた二人の古代人だけが生き残り、ほかの古代人は滅んだ。戦争の爪あとは人類滅亡だけにとどまらず、自然界の理すらも滅ぼしてしまった。死滅した世界が元に戻るまでにかなりの時間が要するため、二人の古代人は延命処置として各々が作り上げた〈遺物〉によって長い眠りにつく。

 ここまでがゲーム『Relic』における歴史上の話。

 ゲーム開始は超古代文明の戦争から二千年後の世界設定だ。『生体』の遺物を作り上げた古代人が眠りから覚まし自らを黒の創造主と名乗る。改めて『ルーシェンヴァルラ』を望む世界に作り変えようとした。が、『道具』の遺物を作り上げた古代人も同時期に目覚め、黒に対して『道具』の古代人は白の創造主と名乗った。白の創造主は異世界から『道具』を扱える人間を召喚する。それが、僕ら適正者ということになる。

 なぜ、異世界からプレイヤーを召喚したのかについては言及されていない。プレイヤーの間では白の創造主は『生体』を製造する遺物が創れないので、異世界から人間を召喚したと解釈がされた。

 そうなると自立した精神と肉体を持った妖精の存在は何かという疑問も湧き上がる。実はこの妖精の存在も不明瞭なままなのだ。わかっていることは、僕らの遺伝子から作り上げられた存在ということだけ。いくつもある仮説の中で有力だったのは、プレイヤーの遺伝子を読み込み、生命活動を与えられた『道具』という説だ。

 ゲームで遊んでいるときは、メインシナリオを進めていけば残された謎も判明していくだろうと思っていたが、その機会は訪れそうになさそうだ。

 ともあれ、『Relic』における歴史と創造主の設定からして元は人間だから全知全能ではないというのが、リリィ達妖精の言い分だ。

 『道具』としての妖精。では、贄をとして人々を貯めこむ棺は『生体』なのか?

 冷や汗が背中を濡らす。

 ようやく棺の話をしていた時に感じた喉の引っかかりの意味が理解できた。

 棺は見た目もだが効果はどう考えても『道具』だ。『生体』を創ることしか出来なかった黒の創造主がどうやって『道具』の棺を創造することができたんだ?

悪い予感がする。この気付きは僕らの今後を揺さぶる何かとも言える。

「シンちゃん、怖い顔してどったの?」

 黙りこくった僕を心配したのか虎猫さんが覗きこんできた。

「いえ、ちょっと……」

 ただでさえ、車に乗っていた人はどうやって消えたのかの議論がされている。さらに混乱を招くような発言はしないほうがいいだろう。

 伝えるのならノヴァさんだけにでも伝えたい。

「ノヴァさん、ちょっと今後のことについて、少し話をさせて下さい」

 上手くノヴァさんを連れだして話を始めた。まだカズさんたちとパーティーを組んでいるのであまり距離を置くと自動的にパーティーチャットが発動してしまう。

 みんなとは近ず遠からずの距離を保って話を切り出した。

「話ってなにかしら? 本当は今後の話じゃなくて私と離れるのが寂しいから二人きりになりたかったのかな」

 また反応しづらい言葉を投げかけてくるが、真顔の僕を見て察してくれたようだ。

「なにか気づいたの? 車の中から消えた原因を?」

「いえ、そっちはまだわかりません。でも、大切なことです」

 僕は棺について気づいた点を簡単に説明すると、ノヴァさんは額に指を置いた。

「実は、私も気になっていたことなの。私も真悟さんと同様に混乱を広げるだけだと思ってスイセンには質問しなかった。でも、聞くなら今ね──スイセン」

 スイセンは後頭部を掻きながらスマートフォンから現れた。

「棺は『道具』なの? それとも『生体』?」

「悪いな。これもあっちにいる女妖精が言ったように、白の創造主さまはお前らの世界にいるカミサマじゃないんでね。知らされているのは棺の形態と効果だけだ。それ以上のことを聞かれても答えられない……悪いな」

「いいわ。ありがとう。また何かあったら呼ぶわ」

「おう、じゃあな」

 スイセンはやる気のない感じで片手を上げて、スマートフォンの中に引っ込んだ。

「結局、わからないまま、ですか」

「私達にとって理解出来なことはそのままにしたほうがいいでしょう。あまりにも……あまりにもわからないことが多すぎるもの。無闇に考え悩んだら動けなくなるだけよ。いまは、進むべきところへ進むこと」

「そうですね」

「さぁ、戻りましょう。向こうもまだ無闇に答えの見えない議論を続けているから」

 僕とノヴァさんは無人となった車の前で話し合っている五人を眺めた。

 ノヴァさんの言うとおり、疑問や悩みは人の足を止めてしまう。今の僕らがすべき事は動くことなのだ。

 みんなのところに戻るとノヴァさんが話をまとめた。

「わからないことを議論しても始まらないわ。時間が惜しいもの。運転できそうな車を早く見つけましょう」

 ノヴァさんが悩む僕らを諭すように言った。答えが見つからない問題は後回しにするのは正しいと、みんな判断したようだ。

 先頭を歩き始めるノヴァさんにみんなが着いていく。僕も遅れまいと歩を進めたが、虎猫さんはまだ悩んでいる最中だった。

 それにしても、と虎猫さんがポツリと呟く。

「こんな短時間で大勢の人達が消えちゃうなんてありえるのかな」

「レリックモンスターに襲われたから、という理由だけじゃ納得できません?」

 虎猫さんの疑問に僕が回答する。

「ガルブたちが群れをなして人を襲ったとしてもだよ? 車の中に居た人や、建物中にいた人まで襲ったりできると思う? だってほら──」

 虎猫さんは周囲を見回す。

「まったく人の気配がないなんて、不自然すぎるよ。少しくらいはレリックモンスターから逃れた人がいてもいいような気がするんだ」

 人の波が消えた街に立っていると虎猫さんの疑問は当然に思えた。

「そういわれると、確かにおかしいかも」

 地上に人がいないのは当然だ。けれど、こんな短時間でこの辺り一帯の人々を贄にすることが可能なのか?

 ひとたび停止させた思考を巡らそうとしたが、ノヴァさんたちに先を急がれ考えることをやめた。

 それから十数分の時間を費やしてようやく乗れそうな車、ワゴンとセダンの二台を見つけることができた。エンジンの稼働を確認してからノヴァさんはパーティーを解散させた。

 それは新たなパーティーを組む意味も持っていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


一日に二回も投稿したのは初めてですが、いかがでしたでしょうか。

前後半にしたのは一回の投稿で文字数が多いと思い二回に分けただけです。


とりあえず、23日までは前後半に分けて投稿します。

明日も投稿します。


よろしくお願いいたします。



※誤字修正

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