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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
7/143

007 『繋がる(リンク)』 前半

あらすじの最後にも記した通り、

本日から23日まで一日二回の投稿を行います。


どうぞ、よろしくお願いします。

「マジか。本当に世界規模で起きてんのかよ」

「んー? 何の話?」

 カズさんがスライド読みをしているディスプレイをポニテさんが横から覗き込んで目を見開いた。

「外ってこんなに混乱してんの!」

「通信は可能ってことはスマホが使えると思ってニュースやら閲覧したんだ。そしたらよ、世界中が大パニックだ」

 カズさんはレイラを呼び出して、ニュースアプリを僕らに見せるよう命じた。

 地図アプリと同じように表示されたニュース画面には、各国で起きている一体化された区域の写真が掲載されていた。

 見出しには『世界規模で多発。原因不明の侵入不可区域』とある。アメリカ、ブラジル、台湾、中国、ドイツ、フランス、インド、エジプト、その他の国々でこの一体化された区域が広がっていると示唆している。

 どの記事にも侵入できなくなる前に、動物の咆哮が聞こえたと記載されていた。やはりあの咆哮が合図だったというわけだ。

「まだゲームの世界と一体化したっていう情報は流れてないようだ。が、時間の問題だな。世界中にも適正者はいるし、こうして端末を使って外と連絡を取り合っている適正者がいるだろ」

 ふと、カズさんが何かに思い当たったようで、口元を抑えて視線を下に降ろした。

「カズヒデ、どうしたの?」

 ノヴァさんの問いかけにカズさんは手の平を見せて、レイラに視線を戻す。

「なぁ、レイラ、もしも俺たち適正者がこの一体化した世界を元に戻せなかったら、その先どうなるんだ」

「もう一度、ここに入って……」

 違うとカズさんが声を荒らげた。

「俺が聴きたいのはその先だ。完全な失敗をして、適正者が誰もいなくなったら、この世界はどうなる? それにだ、もう一度ここへ攻略するのは俺たちじゃないはずだ。俺たちの世界と一体化を目論む奴らが部分的な侵略で済ますわけがないだろ? 一体化する区域が広がるんじゃないのか」

「カズヒデにしては冴えた発想と質問ね」

「ノヴァ! こんな時に茶々いれんな! レイラ、教えろ。世界中にいる適正者たちがこのクエストを失敗したら、この世界は『Relic』とつまり、お前たちの世界、ルーシェンヴァルラと完全に一体化するのか?」

 レイラは目を閉じて深く息を吸い込んで少しずつ息を吐いた。

「そうよ。あなたたち適正者が消えてしまうともう黒の創造主の力は抑えられない。二つの世界が繋がるのではなく一つの世界になってしまう。そうなってしまえば、黒の創造主が思うままよ。私達の白の創造主さまの力は完全に無効化されるわ」

 短い沈黙が訪れる。僕らに課せられた事の重大さが予想以上に大きかった。地球にある小さな島国。その都市にある区域を開放すれば僕らの役目は終わりだと思っていた。失敗した区域、レイラが口にした(たぶん、僕も言ったかもしれないが)繋がっている世界は存在し続け新たな適正者が挑まなければならないのだ。

 僕らがやらなければ本当にゲームが現実化してしまう?

 世界の終末がこんな形になるなんて、誰が想像できただろう。

 ここにいる誰もが予想すらしていなかった。

繋がっている世界を救うにしては僕らの装着しているレリックは小さすぎる。

違う。

落胆してどうする? 世界の終わりとか悩むだけ無駄じゃないのか。

「僕ら適正者が世界を救うとか、みんな考えてません?」

 みんなの視線が集まる。

「世界中の繋がっている世界はその国の人達に任せましょう。もし、失敗したところがあるのなら、行きたい人が行くってことでいいんじゃないですか。僕らはもう引き返せないところにいるんですからね」

 カズさんが深い、とても深い溜息をしてから片膝を叩く。

「そーだよなー。あれこれ悩んでもしゃーない。真悟、お前の無責任発言採用。そして俺は賛同する」

 カズさんに続き、他のみんなも僕の言葉に乗り始めた。

「それと繋がっている世界って言い方。いいよな? ずっと一体化一体化って言ってたけど、繋がっている世界のほうがピンとくる」

 カズさんはレイラの小さな頭を人差し指で優しく押した。

「直訳でリンクワールドとかどうでしょう? いや、繋がる世界と書いてリンクとか」

 僕は軽い感じで言ってみたら、ポニテさんが面白いと手を叩く。

「真悟くん、大学生にもなって中二病発症しちゃった?」

「スキル名をドイツ語にする人よりかはマシじゃないですかね」

「あ、それは言えてるかも」

 くすくすと笑い合う僕らにカズさんが反応する。

「俺のセンスを悪くいってんじゃねーよ。三十を越えたおっさんは中二病にはならん」

「アニオタなくせにいまさら何いってんの」

 ノヴァさんの横槍にカズさんがさらに熱を上げた。

「お前だって人のこと言えないだろ!」

「私、あなたと違って隠れオタじゃなくてオープンオタだからいいの」

 なんだよ、オープンオタって。さほど面白くもない言葉の掛け合いなのに、なんだか面白くて仕方がなかった。僕らの掛け合いに、他の三人も釣られて表情が和らいで、僕らと一緒に笑い合っていた。

「さてさて」

 カズさんが意味ありげに柏手を一つ叩いた。

「談笑もここまでにするか。ゲームみたく徒歩で移動じゃないだけマシだ。ゲームでも移動用のアイテムは結局実装されずじまいだったからな。どうせ『歪曲の扉』だって使えないんだろう?」

 『Relic』では一度訪れた場所は自動的にマーキングされ瞬間移動用のレリック『歪曲の扉』で移動が可能となる。

 カズさんの疑問にレイラが頷く。

「完全に機能が停止している状態ね。唯一、白の創造主さまから完全に動かせるレリックはすでに製造された私達妖精や、適正者さまたちが持つレリック武器だけよ」

 白の創造主から受けられる恩恵は僕らのレリック武器と妖精だけということか。

「カズヒデがまとめたくれたことだし……ひとまず、代々木公園からでましょう。原宿駅周辺であれば乗り捨てられた車を借りるとしましょう」

 ノヴァさんは借りると言ったが、所有者の許諾はなしだ。

「ほんと、崩壊した世界の無法地帯って感じじゃん? 火事場泥棒とかしたくなっちゃう」

 虎猫さんの不謹慎な発言を咎める人はいなかった。このリンクした世界を救うなんて大義名分を掲げた所で僕らはこれから他人の車を盗むという犯罪を行うのだ。

 後ろめたさはあるけれど、大目に見てほしいと誰かに祈った。

大した会話もなく代々木公園から国道へと移動する。道中、今後の戦闘を考えてセットしておいたスキルを変更することにした。外気功・白虎から内気功・金剛へと戻した。あとの空蝉と拳撃はそのままだ。もっとスキルを当てはめたいが金剛や拳撃はスキルコストが高いため空いたスキルスロットに入れることができない。

レリック武器にはスキルをはめるスロットが存在する。僕のレリック武器練度だと五スロットまで開放されている。スキルコストの上限も上昇するが五スロットすべてに高火力、高精度のスキルを入れることは難しい。

 リンクした公園の道を抜けてようやく原宿駅付近の国道へと出ることが出来た。

 平日の昼間の原宿がどれほどの人で溢れているのか詳しくないけれど、見渡す限り人の気配などなかった。普段から人混みから発生する雑音なんて煩わしいと思っていたけれど、全く聞こえてこないのも気味が悪い。

 人の音が聞こえない代わりに車のエンジン音などはテンポよく刻んでいた。

肝心の車だけれど無事な車などないように思えた。上下線の車道に残された車の殆どは玉突きを起こしていて、煙を上げている車すらあった。無事な車がどれほどあるのかも見当がつかない。これはレリックモンスターによる二次災害が引き起こしたものだと予想はつく。

 早速、僕らはキーが付いている車を探したが、意外と簡単に見つけることはできた。しかしキーが付いていることが不思議というか不可解だった。それを指摘したのはポニテさんだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


007『繋がる(リンク)』の後半は、

本日19時頃に投稿いたします。


引き続き、読んでいただけると幸いです。

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