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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
48/143

044 『想像(イマジネーション)』

044です。

 僕らは律儀にも学校敷地内には校門から入ることにした。僕の背丈より三倍はあろうフェンスを飛び越えることなど造作もないことのだけど、なんというか学校は校門から入るものという先入観、習慣がそうさせたとも思う。

 校門を通り、グラウンドの中央まで進んでから僕らは夜の校舎を見上げた。本当に廃校にされた学校なのかと思えるくらい立派に見えた。もちろん、夜中ということもあるから校舎の外壁にあるひび割れや汚れが目立ってないだけだろう。

「さすがに屋上までひとっ飛びっていうことは出来ないよね?」

 夜の校舎に圧倒されたのか、ポニテさんが力なく言った。

「無理でしょうね。検証してみないとわかりませんが、両脚に溜める闘気の量や、スキルを使えばあるいはいけるかもですけど。素直に昇降口から入りましょう」

 適正者になってから身体能力は普通の人よりも、もっと言えばプロのアスリートよりも格段に上ではあるけれど、能力向上にも上限があるのだと自然とわかっていた。

 上履きなど持っているはずもない僕らは上履きに履き替えらずに土足のまま校舎内へと踏み入った。

 元は学校ということもあってか、校内は学校特有の匂いがした。大学のキャンパスでは感じられない匂い。小中高といった『学校の校舎』にしかない匂いがする。僕が通っていた小学校でもないのに妙な懐かしさを感じてしまった。学校生活はいい思い出なんて持ちあわせてはいないけれど、学校という場所自体は嫌いではなかった。こんな遅い時間の校舎にはいったのも初めてで、実に新鮮な気分を味わえている。

「階段はどこかしら?」

 廊下を歩きながらノヴァさんの一言により我に返った。

 とにかく、エクスさんたちが居る屋上へと進まなければいけない。校内は照明がついていないので薄暗くはあったけれど、全く見えないということはなかった。

 特に会話することもなく、無言のまま廊下を歩いて階段を登っていく。

「当然かもしれないけれど、学校って昼間と夜とじゃ雰囲気が違うよね」

 無言に耐えかねたのかポニテさんが話を降りだした。

「昼間は学生ばかりいるから、騒がしいのよね。普段から見慣れている風景と刺激される五感があるから、学校はこういうところと記憶している。そのギャップのせいでもあるわね」

 ノヴァさんの答えにポニテさんは納得して「そうかー」と頷く。

「夜はどの生徒も入れることがないから、その分、想像力が増すのよね」

 放り投げだされた話題から、ノヴァさんが連想して話を紡ぐ。

「想像力ですか?」

 僕やポニテさんはまだ学生だけど、ノヴァさんは社会に出た一人だ。学校という存在自体が無縁となってしまった社会人の話に耳を傾ける。

「難しい話ではないのよ。至極簡単なお話。自分たちは通っている時間帯の学校しか知らない。でも、街がそうであるように、学校ですら夜になると見せる顔を変えるということ。つまりはそういうことよ」

 すべてを言い切った感じになったノヴァさんは満足気にしていた。

 そんな姿のノヴァさんをみて僕とポニテさんは互いに首を傾げ目を合わせた。

「ごめん、そんな言い方じゃ全然伝わってこないんだけど」

「もう少し、噛み砕いて話してくれませんか?」

「想像力が答えみたいなものよ。知らないからこそ、頭の中で何かをつくり上げるの」

「ノヴァちゃんってたまに難しい感じで話をするよね。もっと噛み砕いた表現をしてよ。含みを持たしていて、なんだか私たちが試されている感じがするんだけど」

 ポニテさんは不貞腐れたような言い方をして、ノヴァさんの背中を人差し指で突っついた。

「きゃ!」

 普段なら絶対に聞くことのないノヴァさんは可愛らしい悲鳴を上げる。

「やめてよ。私、背中は弱いんだからー」

「なになに? 性感帯でもここにあるのー」

 ポニテさんは両手を使ってノヴァさんの背中を突っつくと、回数に応じてノヴァさんは体を仰け反らせる。

「やめ──ひゃ! やめなさい!」

 ノヴァさんの手の平がポニテさんの頭をはたく。強めに叩かれたのか「いたーい」とポニテさんは頭を擦る。

「自業自得よ。人が嫌がることを楽しんでするものじゃないの」

「ごめんって。それで、さっきの話の続きは? 途中だったでしょ?」

「いつも答えばかりを求めるんじゃないの。今は誰でも答えを教えてくれる時代ではあるけれど、その答えを考える楽しさを知ったほうがいいわよ?」

 そう言われるとぐぅの音も出せなかった。僕らの周りにはいつも誰かしら、答えを教えてくれる大人で溢れている。ネットに潜り込めばもっと手軽に探していた結論、結果、回答が用意されていることが多い。その便利さに僕とポニテさんは甘えていたのだ。

 再び訪れた沈黙。

 耳に聞こえてくるのは服が擦れる音と、階段を踏み足音だけ。

 もうすぐ屋上だというところで、あれこれ考えていた結論をノヴァさんに問いてみた。

「夜の学校を知らない生徒が想像力を働かせて作り出すこと。例えばそれって学校の七不思議みたいなことですか?」

 階段の踊場で足を止めると、ノヴァさんが僕とポニテさんに向き直した。

「どうしてそう思ったの?」

「僕が学生だった頃、うわさ話が流行ったんですよ。学校にまつわる呪われた七不思議です。定番の真夜中になると誰もいない音楽室からピアノの音が聞こえるだとか、二階片隅にある女子トイレの真ん中には、花子さんがでるとか。こういう話って元ネタが合ったりするんですけど。実際は誰かが考えたただの『お話』ということもあるはずです。想像力を働かせて、知らない世界を創りあげた、とか?」

「あ、私も同じこと考えてた! ノヴァちゃん、これで合ってるでしょ?」

 一人盛り上がるポニテさんを見て、ノヴァさんが嬉しそうに葉を見せて笑う。

「そのとおりよ。知らない世界を作り上げた結果が七不思議。そこに至るまでの工程が大切なの。人はいつも娯楽を求めている。もしかしたらという考えを常に持ち続けているわ。想像力は、たぶん人にしか持ち合わせていない特別な思考回路のはず」

「確かに考えるっていうのは面白いよね。ノヴァちゃんにいわれて、あれこれ考えているのもなんかも白かったしさ」

 ポニテさんは感慨深く腕を組んで頷いたが「でもさー」と言いながら片腕を上げて、人差し指を天井に向ける。

「学校の七不思議って怖い話になることが多くない?」

 何を思い出したのか、ポニテさんは身震いをさせた。

「そういえばポニ子は霊的なものが苦手だったのよね?」

 唐堂神社での戦いで、ポニテさんの意外な一面を見ることになった。殺したと思ったまほろが生きていたのではなく、幽霊となって現れたとポニテさんは思い込んで心底おそれていた。

「小さい頃から本当に駄目なの。怖い話も聞きたくないんだけど、不思議な話ならオッケーかな。死んだ人が出てきたりしないから。でも学校の七不思議はダメ。反則。不思議だって言っているのに、結局幽霊的な何かに話がすり替わっているんだもん」

「不思議とオカルトは同じ部類だもの。ポニ子がいくら主張しても一般的ではないわね」

「私がダメなんだから別にいいもん」

「主張するのは悪いと言っているわけじゃないのだけれどね。まぁ、それはそれとして……想像力は重要だと思うの。いま私たちが置かれている状況もこの想像力が、あるいは鍵になるかもしれない」

「想像力が鍵?」

 話が飛躍する。ノヴァさんの言いたいことがついにわからなくなった。

「この先に何が待ち構えているか、想像したほうが良いということよ」

「それって、エクスたちがどうして動かなくなったかってこと?」

「そう、どうしてその結論に至っているのか。適応者と戦ったから? それとも番人の能力? はたまたトラップ型のレリックに捕まったのか」

 どうやらノヴァさんは雑談を楽しむのではなくて、この話へと誘導させるためにポニテさんの話題を拾い上げたようだ。

 本当によく頭の回る人だと感心させられる。

「まずはエクスさんたちがどうなっているのか、確認したほうがいいですよね。いくらここで考えていても、ノヴァさんのいう結果がわからなければ想像することもできませんからね」

「その通り。想像ばかりして二の足を踏んでしまっては何をしに来たのかわからなくなるもの。自分の足に絡め取られるのではなくて、ちゃんと地に足を着けながら歩まなければいけないわ」

「ノヴァさんは僕らにそれを伝えたかった、というわけですね」

「そんな大それたことを考えていたわけではないの。でも、このまま屋上に行くよりも、少しは私の考えていることを伝えたかっただけ」

「なんだかノヴァちゃんの手の平で遊ばれた感じがするー」

 言い方は悪いけれど、例えは正しい気がした。

 屋上へと繋がる階段の先を見つめる。

 照明が無いので真っ暗闇しか見えないのだが、登り切った先に屋上へ出るドアがあって、そこを開けば僕らが警戒するべき結果がある。

「なんだかこのまま昇ったらあの闇の中に吸い込まれそうな感じがするね」

 ポニテさんは自分で想像した恐ろしい何かに怖気づいている。

「吸い込まれる……か」

 ポニテさんの何気ない一言を復唱する。

 僕は想像する。この先に何が待ち構えているのか。それは当然、棺だろうし、連絡を折り返すこともできない、動くことすら出来ないエクスさんたちがいる。

「真悟さん?」

 急に黙りこんだ僕をノヴァさんが覗き込んだ。

「私が変なことを言ったから、怖くなっちゃったとか」

 そうではないと言いたいところだけど、頭の中を整理させたかった。

「ねぇ、真悟くん?」

 僕の腕を掴もうとするポニテさんの手を、逆に僕が掴んだ。

「ポニテさん。ノヴァさん」

 僕は二人の名を呼びつつ、目を合わせる。ノヴァさんは無表情のままで、ポニテさんは不安そうな顔をしていた。

「僕に考えがあるんですけど、聞いてもらえますか?」

「まだ結果を見ていないのに、何をするつもりなの? 確かに想像することも大切だし、行動に移すこともいいけれど、警戒を怠る行為はダメよ?」

「警戒をするための行動です。まずは僕の話を聞いて下さい。反論と反対意見はその後で」

 一息を付く間を置く。返答は言葉ではなく無言。どうやら聞いてくれるようだ。

 僕は頭の中で整理したことをアウトプットすることにした。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


次回投稿は11/25です。

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