最終話 絶対皇帝の聖夜晩餐・後編(※ただのおつまみで一生遊んで暮らせる権利を手に入れた男)
バガァン!!! と勢いよく総帥室の重厚なドアが開いた。
「総帥……っ! 完璧なる【新世界秩序(調律)】、確かに受け取りました……っ!!」
突入してきたのは、お世話係のカレンさんとジークリンデだけではなかった。
なんと、5区の「氷結女王」エレナ、11区の「剛腕女王」バルバラ、さらには昨日青ざめた顔で逃げ帰ったはずの「警察庁警備局長官」までが、全員一様に「恍惚とした、完全に骨抜きにされた表情」で部屋に突入してきたのだ。
(ひぇぇぇぇぇ!? なんで全員揃って俺の部屋に押し寄せてくるんだよ! 飯食ってるだけなのに! 鴨肉泥棒で逆ギレ逮捕か!?)
俺は鴨肉を口に咥えたまま、恐怖でカチコチに硬直した。
突入してきた彼女たちの鼻腔を、部屋の中にこれでもかと充満する『チーズと鴨肉の究極の燻製香』が容赦なく蹂躙する。
「ああ……なんという、なんという恐ろしい御方……っ!」
長官が、その場にばったりと膝をつき、感極まったように床にボロボロと涙をこぼした。
「昨日、貴方がおっしゃった『明日の夜十九時にすべてのトゲが取れる』という言葉の意味を、今、魂の底から理解いたしました……。この煙、この香り……我が局の精鋭たちが、総本山の周囲を警備しているだけで、あまりの幸福感に武器を投げ捨て、全員で涙を流してハグを始めています! 精神を根底から書き換える、これが一ノ宮の『完全なる調律』……! 傲慢に凝り固まった男社会のトゲを、貴方はその慈悲深き煙で、すべて溶かしてしまわれたのですね!」
(いや、換気扇から匂いが漏れて、外の警備員たちが腹減って狂っちゃっただけだからね!? 武器投げ捨てたの、ただの飯テロの被害者だからね!?)
長官は震える手で、懐から国家の最高紋章が押された一枚の分厚い書類を取り出し、両手で捧げ持った。
「一ノ宮ひじり総帥。我が政府は、貴方がもたらしたこの『至高の精神救済』の前に、全面降伏いたします。本日この時刻をもちまして、一ノ宮総本山を『国家絶対不可侵聖域』に指定。総帥が望まれる『平穏な引きこもりライフ』にかかるすべての費用、最高級食材の調達費は、国家予算から【永久に全額支給】することを閣議決定いたしました!」
「……はえ?」
国 家 予 算 全 額 支 給。
あまりにもスケールの大きすぎる単語に、俺の脳細胞が完全にフリーズする。
すかさず、その横からエレナとバルバラが、これまた別の契約書をドカンと机に置いた。
「総帥! 私たちのクランの全財産、および23区すべての物流ルートの無償譲渡手続きも、先ほど完璧に完了いたしました! これで総帥は、お布団から一歩も出ずとも、毎月数十億円の不労所得が自動的に口座に振り込まれ続けます! ですから……どうか、どうかその『神聖なるスモークチーズ』と『鴨のパストラミ』を、私たちにも一口、お恵みください……っ!」
「ああ! 頼む総帥! 一口でいい! それを食べなければ、私たちは一生この煙の奴隷になってしまう! どんな命令でも聞く! だからその肉を……!」
クランを統べる最強の女王たちが、プライドを完全に犬に食わせた顔で、よだれを垂らしながら俺のおつまみ皿を見つめている。
カレンさんが隣で、シルクのハンカチで涙を拭いながら誇らしげに胸を張った。
「やましたね、ひじり様……! 貴方の圧倒的な社会性と、現地の男どもへの無言の教戒、長官のトゲすら抜く至高の錬金術(燻製)により、ついに誰にも脅かされない、人類史上最強の『お布団不労所得帝国』が完成いたしました!」
「ひじり様……一生、お仕えいたします……っ!」
ジークリンデもまた、あまりの尊さと部屋の匂いの濃厚さに過呼吸を起こし、床に崩れ落ちて限界突破(尊死)していた。
部屋中が、俺への狂信と、おつまみの良い匂いでカオスな空間と化していく。
そんな中、俺は口に咥えていた鴨肉をモグモグと噛み締め、炭酸水でゴクンと飲み込みながら、ようやく現状を理解して心の中でガッツポーズを決めた。
(……あれ? もしかして俺、ただ部屋でコッソリ趣味の美味しいおつまみを作ってただけなのに、一生働かなくていい『完全なる不労所得ライフ』を達成しちゃった……?
よし、これで毎日お布団の中で、誰にも邪魔されずに美味しいスモークチーズと鴨肉が食べ放題だ。前世の派遣社員時代の苦労が、ついに報われた気がするぞ……!)
ネットの掲示板では「聖母ひじり様、ついに国家を燻製で調教完了!」「3章全裸待機!」と大爆発を続け、富と権力と美味い飯のすべてを手に入れた元派遣社員の引きこもり覇道は、ここからさらに、終わりのない全肯定の未来へと続いていくのだった――。
(デパ地下聖母・番外編 最高の引きこもり・完!)
者の皆様、週末の怒涛の集中連載、そして『デパ地下聖母』のラストまでお付き合いいただき、本当に、本当にありがとうございました!!!
皆様の熱い応援のおかげで、ひじり君はついに国家予算で一生ぬくぬくお布団に引きこもれる「完全なる不労所得の神」へと成り上がることができました。(笑)
今回はこれにて一旦一区切り(ひじり君が熟睡する期間)とさせていただきます。
が……! 皆様からいただいた熱い【ブックマーク】や【星評価(★★★★★)】という名の貢ぎ物がある限り、ひじり君の引きこもり覇道は終わりません。
近いうちに【第3章・国家予算で贅沢引きこもり・高級スモークチーズ業者編】として、ひじり君がまたお布団から引きずり出される日を、作者も今から楽しみに温めております!
その時はまた、活動報告や次話予告で一番にお知らせいたしますね。
最後に、ここまでひじり君を愛してくださった皆様、ぜひページ最下部の【ブックマーク】や【星★★★★★】をポチッと押して、ひじり君に「これからも引きこもってよし!」の全肯定サインをプレゼントしてあげてください!
それでは、またお会いしましょう!




