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平穏な月曜日の朝、お小遣い口座の金額がバグってた件

憂鬱な月曜日の朝がやってきた。


だが、前世で年中無休のデパ地下シフトに追われ、月曜朝の満員電車に胃を痛めていたひじりにとって、今の環境は天国そのものだった。


何せ、部屋から出なくていい。


この世界は、圧倒的な男不足。男女比は驚異の1対50


男性というだけで、国から生活保障として【年間1,000万円】の手当が自動的に支給される。


一ノ宮クランという女性組織に最高待遇で「保護」されているひじりは、普通に生きているだけで勝ち組の立場だった。


「ふぅ……やっぱり、月曜日の朝に布団の中でゴロゴロしながら飲む白湯は最高だな。


ジークリンデさんも、廊下じゃなくてちゃんとソファーで寝てくれるようになったし」


ひじりは、すっかりマスコット兼忠犬と化した17区最強の女騎士を思い浮かべながら、ぬくぬくとスマートフォンのような端末を眺めていた。


彼に与えられている個人口座には、その国からの手当や、一ノ宮クランからのちょっとした「お小遣い」が振り込まれるようになっている。


「あ、そういえば、今月のお小遣いってどれくらい入ってるんだろ。前世の店長時代は毎月の売上表を見るだけで胃がキリキリしてたけど、こっちでの軍資金がいくらあるか、一応確認しとくか」


国からの手当があるとはいえ、個人の自由になるお小遣いだ。まあ、何万円かは入っているかもしれない。ひじりは軽い気持ちで、お小遣い口座の残高ボタンをタップした。


『――現在のお預かり残高:20,000,000円(2,000万円)』


「……ん?」


ひじりは、一度端末の画面を服の袖でゴシゴシと拭いた。


それから、もう一度目を凝らして画面を見る。


「に、にせんまん……えん……?? え?」


国からの手当が1,000万円。つまり、そこにもう1,000万円が上乗せされている。


よく見ると、入金履歴の欄に、およそ個人のお小遣いとしてはあり得ない恐ろしい名目が一行だけポツンと並んでいた。


『5/25 01:00 【動画配信プラットフォーム収益分配金】 10,000,000円』


「な、何これぇええええええええ!!?」


ひじりはベッドから跳ね起きた。


どうやら、一ノ宮クランの女性職員たちが、昨日ひじりが監査官たちにお辞儀をしてコーヒーを淹れた「健気なおもてなし姿」を動画サイトに隠し撮り投稿していたらしい。


それが、激務で心がすさみきった全国のキャリアウーマンたちの間で爆発的に拡散。


「全女性の理想の癒やし」「この尊さを守らなければならない」と、深夜の間に恐ろしい数の再生数を叩き出し、一晩で年収と同等額の広告収益(または投げ銭)が発生してしまったのだ。


(ヤバい、ヤバすぎる!! 完全にこれ、前世でニュースになってた『ネットでバズりすぎて一晩で大金を稼いじゃった素人』のやつだ!! 待って、臨時の副収入で1,000万とか、確定申告どうすればいいの!? 税務署に睨まれて追徴課税で人生一発アウトじゃん!!)


ブルブルと震えながら冷や汗を流すひじり。


だが、そんなひじりが自室でパニックになっているその時、一ノ宮クランの「外側」では、別の意味で前代未聞の大炎上が巻き起こっていた。


ネット民たちに見えているのは、あくまで「一瞬で全国の女の財布をこじ開け、一晩で1,000万円を叩き出させた、謎の魔性の男」という、外から見える数字の異常さだけだった。


『【速報】18区の一ノ宮クランの男、深夜の配信(?)で一晩で1,000万稼ぐwww』


『おいマジかよ、あの厳しい収益化審査(※この世界でもある)を一瞬でぶち抜いたぞ!?』


『全国のキャリアウーマンたちが狂ったように再生して貢いでるらしい。どんな超絶テクニックだよ……』

『噂の「聖母」って男、実は全女性の購買意欲をマインドコントロールしてる闇のフィクサーなんじゃ……』


ネット民たちが恐怖と興奮で大騒ぎする中、状況はさらに加速していく。


何も知らないひじりは、「一刻も早くこの金を納税(あるいは返金)しなきゃ……!」と、完全に小市民的なトラウマからくる恐怖に怯えながら、ガタガタと端末を握りしめているだけであった。

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