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他区の「床に料理投げる族」が、一ノ宮クランに喧嘩を売りにきた件

読者の皆様の熱い応援(ブクマ・評価ポイント)のおかげで、作者のモチベーションが完全にバグりました……!

感謝の気持ちを込めまして、予定を大幅に前倒しして、本日より【第2章:他区巻き込み&おもてなしテロ編】を開幕いたします!

ここからさらに勘違いの規模が雪だるま式にデカくなっていきますので、ぜひ一緒にお祭りを楽しんでいただけると嬉しいです!

――18区、一ノ宮クラン。

 この治安最悪のディストピアにおいて、今やこの場所だけは「聖域サンクチュアリ」と呼ばれていた。


理由はただ一つ


 前世でデパ地下の惣菜チーフやホテルの夜勤を経験し、現世ではただの引きこもりニートを謳歌している男――ひじり・オオミヤが、そこに鎮座しているからである。


「あー……今日も飯が美味いし、部屋はピカピカだし、最高の引きこもりライフだな」


当の本人は、クランの女性構成員たちが「聖母様のご健康のために!!」と血眼になって調達してきた高級イチゴをつまみながら、漫画を読んでゴロゴロしていた。


 自分が自家製ベーコンスープ一杯でクランを完全な「宗教施設」に変えてしまったことなど、1ミリも気づいていない。


そんな平和な聖域に、突如として不穏な影が忍び寄る。


ドゴォン!! と、一ノ宮クランの応接室の重厚なドアが乱暴に蹴り開けられた。


「おいおいおい! 聞けば一ノ宮クランの女ども、最近『聖母』だか何だか知らねえ怪しい男を囲い込んで、ニヤニヤ宗教ごっこに励んでるらしいじゃねえか!」


土足で踏み込んできたのは、隣の17区を支配するクランの若頭――通称「床に料理投げる族」のクソ男だった。


 なろう世界のテンプレートを煮詰めたような傲慢な男で、気に入らない料理が出るとすぐに床に投げ捨てることで悪名高い男である。


その背後には、彼の護衛を務める17区の若き女幹部、ジークリンデが鋭い殺気を放ちながら控えていた。


 彼女は数々の修羅場をくぐり抜けてきた生粋の戦闘狂であり、その冷徹な瞳は「18区の聖母とやらがどんなタマか、見極めてやる」と、ギラギラとした敵意に満ちていた。


「無礼者め……聖母様のおわすこの聖域で、その口の利き方は許されんぞ」


応接室を任されていた一ノ宮クランの女性最高幹部たちが、一斉に武器に手をかけ、一触即発の空気が流れる。部屋の温度が氷点下まで下がったかのような緊迫感。


と、その時。


「あ、すいませーん。なんか騒がしいなと思ったら、お客様ですか?」


あまりにも緊張感のない音を立てて、スウェット姿のひじりがフラリと部屋に入ってきた。

 

(実は騒音で漫画の集中を削がれたので、様子を見にきただけである。)


「ああん!? 貴様が噂の――」


 クソ男が怒鳴り散らそうとした、その瞬間だった。


ひじりの脳内で、前世の過酷な社会人経験によって培われた『自動迎撃システム(無意識のプロ接客)』が強制起動した。


(あ、これ完全に怒鳴り込んできた超絶クレーマーだわ。ホテルの夜勤の時にロビーで暴れてたヤクザそっくりだ。ここは刺激せず、徹底的にマニュアル通りにいなすのが生存戦略……!)


ひじりのスイッチが切り替わる。


 背筋がピンと伸び、顔には「これ以上ないほど慈愛に満ちた、極上のビジネススマイル」が浮かび上がった。


「これはこれは、遠方からわざわざお越しいただき、誠にありがとうございます」


ひじりは、前世で10万回は練習した『頭頂部から踵まで一直線になる、美しすぎる45度のお辞儀』を披露した。


 そして、その場にいる全員が耳を疑うような、優しく、包み込むようなバリトンボイスで言葉を紡ぐ。


「お足元の悪い中、我がクランへ足を運んでくださった貴方様の熱意、深く感謝いたします。……そちらの美しい護衛の方も、長旅でお疲れでしょう? どうぞ、こちらの特等席でお寛ぎください。今、最高のお茶をご用意させますので」


そう言ってひじりは、クソ男の後ろで殺気を放っていた女幹部ジークリンデに対し、そっと優しく手を差し伸べ、極上のエスコートスマイルを向けた。


前世のデパ地下において、「怒り狂ったお客様の背後にいる、実は一番イライラしている同行者をケアして外堀を埋める」というのは、クレーム処理の鉄則中の鉄則であった。


だが、この世界において「男」とは、女を顎で使い、見下す存在。


 ましてや、これほど気高く、完璧な敬語で、一介の護衛にすぎない自分を「美しい護衛の方」と全肯定し、極上のおもてなしを施してくれる男など――地球がひっくり返っても存在しない。


「え……?」


ジークリンデの脳内に、大音量で鐘の音が響き渡った。


向けられた笑顔があまりにも眩しすぎて、直視できない。


心臓が、見たこともないスピードでバックバクと暴れ始める。


(な、何……? 何なのだ、この御方は……!?)


ジークリンデの視点から見れば、ひじりの背後に「圧倒的な神々しい後光(ただのホテルのロビーの照明の幻覚)」が見えていた。


自分をクソ男の暴力から救い出し、一人の尊い人間として全包容してくれる、まさに本物の『聖母』がそこにいた。


(私のような、戦うことしか能のない薄汚れた戦闘狂を……これほど慈愛に満ちた瞳で見つめ、労ってくださるというのか……!? ああ、これが、18区の聖母様……っ!! 噂など、この御方の爪垢ほども表現できていなかったではないか……!!)


「ジークリンデ? おい、何フリーズしてんだよ!」


 クソ男が怒鳴るが、ジークリンデの耳にはもう届かない。


 彼女の瞳は完全にハートマークになり、顔を真っ赤に染めながら、ひじりの差し伸べた手を震える手で握り返そうとしていた。


その様子を見た一ノ宮クランの女たちは、静かにフッと勝ち誇った笑みを浮かべた。


(フッ、哀れな獲物がまた一人……。我が聖母の光に当てられ、脳を溶かされたな……)


当のひじりだけが、心の中でガッツポーズをしていた。


(よし! 挨拶だけでクレーマーの相方の戦意を100%削いだぞ! さすがデパ地下マニュアル、異世界でも大勝利だな。めんどくさいからお茶出したらすぐ部屋戻ろ)


ついに他区の戦闘狂まで無自覚に調教し始めたひじり。


 18区の聖母の汚染おもてなしが、外の世界へと溢れ出す第一歩であった。

第2章開幕です! ひじり君、ただの「丁寧な社会人の挨拶」をしただけなのに、他区の女幹部の脳を完全にバグらせてしまいました(笑)。

ここから17区を巻き込んだ大騒動に発展していきます!

もし「続きが気になる!」「ジークリンデのチョロさ最高ww」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク】や【↓↓下の評価の★★★★★】で応援していただけると、作者のモチベーションがさらにバグり散らかします!


次回は明日の朝7時更新予定です。お楽しみに!

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