day 0 プロローグ
私は、『司書』名前は████████。
どこで生まれたのかの見当はついていない。
ただ揺り籠の中おぎゃあ、おぎゃあと、哭いていたことを記録している。
私はこの時、最後に人間というものを見た。
後で読めば、それは種の中でも醜聞の絶えない生き物であったらしい。
やれ、動物や植物、ひいては同種たる人間まで殺す生き物であるとか。
やれ、遊び半分で、人の生を弄び、おそらくは人間自身にとって最も重要である政に興味を示さずのうのうと惰性に任せ生きる生き物であるとか
そんな見るに堪えないことモノが、彼らを示す「本」には書かれていた。
けれど、そんな野蛮な機械を語る風聞に近しい評判とは異なり、彼らが限りない善良を持ち合わせている生物であることを、私は知っている。
例は諸君らと仲を深めた後語るとしよう。
だが私としては一つだけ話せるものがある。
彼らの本質は善だ。
それも限りなく黒に近い。
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勘違いして欲しくないのだが、私は黒のことをその書体を顕す、色のことを、嫌いではないということだ。
むしろ好ましい。
ただこれは、私が人を識ったあとに出した結論である。
最初は白に限りなく近い、善だと考えていた。
どこまでも潔白でどこまでも純白。
・・限りなく白に近い透明。
けれど違った。
違ったのだ。
だからこそ、
これは、私が再び人を識る為の話であり、
人を忘れる為の、話だ。