day 1 出会い
出会いというのは唐突である。
というのは誰の言葉だったか。
昔昔の、人工知能アニメーションでの言葉だったか。
それとも最近の機械ドラマでの話だったか
よく覚えていない。
けれど例に漏れずソレは唐突だった。
⬜︎
私はよく本を読む、
最も、やる事がそれしかないのだろうと言われればその通りなのだが。
朝起きてスルことと言えば、まずは起き掛けに一発、、、本を読む。
飯は食べない。
図書館から、昨日の内に選んでいた気になる本を、読む。
それが日課となっていた。
その日は日課の通り本を読んでいた。
読んでいるのは推理小説だ。
「こんにちは、████████さん、朝ご飯の時間です。」
・・こいつはアルマンA。
私に何としても飯を食わせようとする憎い機械だ。
「こんにちは、████████さん、朝ご飯の時間です。」
・・そして、しつこい奴だ。
おそらく彼は、私の目の前でいつもの様にその機械仕掛けの声帯を震わせ、飯の乗った盆を両手で突き出しているのだろう。
そんな、彼に私はこう答える。
本を間に挟みながら、こう応える。
「アル、、君と話している時間はない。私は今起き掛けの読書をしているのだから。」
「起き掛けの読書ナニーをしている場合ではありません。お嬢様。」
「読書ナニーって何だ!私はそんな高度なプレイはしていない!!あと先にいうが官能小説も読んでいないからな。それは昨日の夜に、、、、いや!!なんで親代わりの使用人ロボットにそういう事情を話さないといけないんだ!!吹き飛べこのクソロボット!!!」
そういって私は手に持っていた小説を投げる。
盆を片手で持ち替えた、アルマンはそれを難なく受け取る。
そして開いていた全く持って健全な文字達を見てこう言いやがった。
遠慮なく、躊躇なく。
「これ実質官能小説じゃないですか。」
「うるせーーーーーーー!!!!!!」
紙の束越しに鉄が響く音がした。
■
結局私は、彼の言う通り食事用のテーブルで飯を食いながら、
『報告』を受ける。そう、同時並行でだ。
私はこう見えてもマルチタスクが出来る。
まあ
この状況で私の出来るところを自慢するのは厭味ったらしい事この上ないし、せっかく読んでくださる方にも失礼なので自慢はしないのだが。
それでも長年の読書習慣と、強い好奇心のおかげで、私は高い読解力と深い知識を得ている。とだけは言っておこう。
そんな私でも食事の手を止めざるを得ない『報告』ではあったのだ。
普段とは違って私に図書館のおすすめの本を教えてくれるだけでは無かったのだ。
「お嬢様のオナt「それはいい。」
機械だからかそれとも私が横暴に暮らしているからか
こいつは私に対して本当に容赦がない。
年頃の娘に対する配慮という当然の観点すら、見えていない。
危うく朝食に出ていた好物のミソスープをその機械じみた顔面に、歯車がちょうど噛み合って人の顔に似ている面に、ぶちまけるところだった。
確かシュミラクラ効果と言ったのだったけ。
「で今日は何、」
私の食事の手は止まっていない。
よし次はライスに手を付けよう。どうやら、ミソスープに合うようにタイ米を使っていると聞いている。タイがどこかは忘れてしまったが。
一体いつの時代の国だろうか。
そんな風に思いながら、彼の報告を聞く。
「外の人類は死滅しましたよね。」
「うん、知っている。それは知っている、『本』で外には人がいないことは知っている。」
それは、すでに読んで知っている。ことだった。
『大惨禍』という七個の隕石の飛来によって、人類の七割は死滅し、隕石の破片から生まれた「ショウシ体」によって残りの三割は記憶を吸われ文明、文化は崩壊し。一気呵成に絶滅した。
と知っている、知っているだけだが。
「なんと。。」
なんと、なんだろう。
ミソスープの在庫が発見されたとか?
図書館のなかで。
「なんと。。。」
え、ここまで引っ張ると何なんだろうか。
もしかして、、
・・・はやく、教えてほしい。
「なんと。。。」
仕方がないから私は正面の椅子に座る機械に目を向け食事の手を止める。
「なに教えて。」
「この図書館でお嬢様以外の人間が発見されました!!!」
そう両手を上げていわゆる、万歳をしながら言った。
ん、あれ、あれ?
あれれ??
⬜︎
人類はこの地球上には存在しない。
私以外は
それは私が18年生きて来た中での絶対定義とさえ言えるものだった。
あらゆる物事を判断する時の前提条件。
言い換えるなら公理だろうか。
けれどそれが揺らいだ。
生まれて初めて、揺らいだ。
こんな本と、それを収められているだけの場所で、
いつからかお世話係のアルマンAにさせていた『報告』。
彼の自由にさせていたのだがそれがどうやら功を奏したらしい。
まぁ、基本的には彼が空き時間に読んだおすすめの本や、本棚にゴキブリが湧いていたなんていう他愛無い出来事が中心だ。
こう見えても私の身の回りの世話だけでなく。
図書館の警備すらこなしているアルだ。
当然、警備の仕事は他の機械達と兼任している。
機械達の福利厚生にも配慮するのは人類が危機に瀕する前から同じだったらしい。
つまり、私は彼等を雇っている形となる。
無論だが、私は唯の小娘だ、払える金など持っていないし、代わりに体で払おうにも機械相手だと厳しい。
だからこそ、私は彼等の望むままにこの人が一人しか居ない図書館でお嬢様をやっていたのだ。
だが、ソレを続けるのも退屈になってしまった為、私の『お嬢様』という立場を利用して退屈を凌ぐ為『報告』をさせていたというわけだ。
事情は話したな。小水も出終わったし、この便器の前から去ろう。
そう考えて。私は下ろしていた下着を履きスカートのチャックを閉め、フォックを止める。
出た小便が自動で流れる様子を見ながら、、考える。
私はどうしよう。
さっきの「人間が発見されました!!!」発言の後私は、
突如小便がしたくなり、食事用のテーブルに一番近かった手洗い部屋の扉を問答無用で開けスカートのフォックを外した後、下着ごと下ろし、便器に座って用を足しながらも考え事をしていたのだが、
結局どう対応するべきか頭に浮かんでこなかった。
私以外に人間がいた、ソレは嬉しい。
あの、白に近い透明のような善の心を持つ彼等に会えるとなると心が躍る。
だからこそ会えば何を話すか。どう接するか考えていたのだけれど。
結局その方法は思いつかない。
わからない時はまず本を読む。
朝読んだ本だって未知を知る為に読んでいるのだ。
この時に見つけられない私では無い。
そう、迷っている内にいつもと同じ考えが過ったが、ソレは頭から振り払う。
時間がないのだ。
単純に本を探している時間がない、なにせトイレに入った直後あの機械は、私にこう言いやがった。
『向こうの都合もあるので御客人との対面は早めにお願いします。』っと
初めて聞いた時はいつの間に客人と認めたんだとツッコミたくなった。
そこは御客人ではなく御来賓だろうに。
最も式典などは特にないのだから。
そう考えていれば、私の考えを乱す音が聞こえた。
ドンドンとノックの音、恐らくはあの機械だろう。
そう呑気に考える。その音が運命が叩く音だと考えずに。
ドンドンドンとノックの音、どうやらここはいつの間にかトイレで無くなっていたらしい。機械だからかな、と考えながら振り返り。私はゆるりと引き戸の扉を開ける。
そこには書物でしか見た事が無かった。黒髪に童顔の青年が。
股間を押さえて立っていた。




