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カボチャ頭のランタン  作者: mm
14.Day By Days
306/518

306

時間軸はとくに考えていない。

305


 レティシアはアシュレイから騎士団の綱紀を改めるようにと命令を受けてから、この難題を解決するために奔走していた。

 士気の低下や、単純な風紀の乱れを正すようなことではないからだった。

 騎士団の中に内偵を忍び込ませ、自らもよく話を聞き、遠く離れた父にさえ相談を持ちかけた。

 ティルナバンの騎士団の内部腐敗は、なるほど無視できぬものである。

 全土を巻き込むような戦争が行われていたのは六十年も昔のことであり、国防という自らの存在意義と稼ぎの場を失って久しい騎士たちは、安定の中でその地位による自尊心ばかりを肥大化させてしまった。

 ブリューズ政権下において騎士の立場は強いものだった。

 騎士は危険の排除のためならば相手を処刑する自由権限が与えられている。

 そしてそれは容易に脅しに用いられた。

 現在の騎士の役割であるティルナバンの治安維持という仕事も、彼らにとってはつまらないものなのだろう。

 しかしつまらないのならばサボってしまえばいいものを、現場でかち合った市民たちで構成される自警団と小競り合いを起こすこともしばしばで、その横柄な態度は騎士の信頼低下を招く一因になっている。罪を見逃す代わりに賄賂を要求することもあれば、罪を捏造し、処刑権限を振りかざして金をせびることもある。

 またやはり迷宮都市ティルナバンの性質上、探索者との力関係も微妙なところである。

 探索者による犯罪は多く、そのほとんどが暴力犯罪である。そして騎士と探索者の微妙な力関係とは、紛れもなく腕力の関係だった。

 日々、迷宮に身を置いて肉体を研ぎ澄ましている探索者と、そうでないものの差は明確にある。探索者にとって死は身近なものだが、騎士にとってはそうではない。

 探索者の取り締まりは、探索者ギルドの武装組織によって行われる。それが騎士にとってはつまらない。脅しの効かぬ相手であるどころか、逆に噛み付かれかねない。噛み付かれるぐらいならいいが、噛み殺されたっておかしくはない。

 ぬるま湯の日々は平和であることの裏返しでもあったが、騎士を堕落させるものでもあった。力を発揮するべき場所が足らないのかもしれない。格好のいい棒きれを手にした子供のように、それを振り下ろす場所を探している。

 もちろん全てが全てではない。誠実な騎士の方が圧倒的に多いだろう。だが醜聞はどうしても多く語られるものだ。

 また騎士の更に上の立場の貴族にも、腐敗がみられた。

 軍費の横領、物資の横流し、罪の隠蔽、人身売買。そういった諸々は現場の騎士だけの問題ではない。

 そちらの問題の解決はアシュレイが大鉈を振るっている最中だった。

 レティシアは深く息を吐いた。

 やるべきことをやる。

 初夏の頃、演習場で陽射しに炙られながらも一糸乱れぬ整列を見せる騎士たちを睥睨(へいげい)する。

 深い緑瞳の視線を受けて浮かれるような表情を押し殺そうとするものも少なからずいた。

 汗を弾く濃い褐色の肌。額から生える角は緩く螺旋を描くようになった。竜尾はその根元が深い弧を描いており、それは女の尻の丸みを拡大させるかのようだった。

 陽射しの所為だろうか、男の喉がごくりと動いた。顎先から汗が垂れ、地面に雨粒のような染みを作る。

 草原を掻き分けるような、青臭く湿気た風が吹いた。そのような風でもあるだけありがたい。

「サラ・ゴニア上級騎士。タイソン・マドン上級騎士。カイト・ファニング上級騎士、前へ」

 レティシアの声は硝子のような響きを伴っていた。

 硬質でもあり、容易に砕けるようでもある。

 呼ばれた三名は全体の中で前の方にいた。下級騎士を指揮する立場にある一握りの選良だった。サラとタイソンは四十代であるが、カイトはまだ二十代の若者だ。

 三者ともに礼装の鎧はしっかりと磨かれ、この陽射しの中でも涼しい顔をしている。堂々たる足取りでレティシアの前に並び出て、惚れ惚れするような仕草で武人の礼を取った。

「呼ばれた理由はわかるか?」

 レティシアはそれぞれの目を真っ直ぐ見て問い掛ける。

 僅かに視線が揺らいだのはタイソンだけだった。

 口元を囲う形よく整えられた髭に白いものが混じり始めている。槍の名手であり、騎士団内においては探索者にも引けを取らない武闘派として知られている。

 式典であるために剣を身に佩びるだけだが、彼の愛槍は武功によってブリューズより賜ったものだった。

 太い首を捻るばかりだ。

「さて、我々が呼び出された理由ですか? いったいどのような理由で呼び出されたのか、まったく見当もつきかねます」

 真実思い当たる節もない、と言うようにサラが答える。

 タイソンと同年代で、三つほど年上だったが体毛の薄い顔立ちはまだ若々しく気品がある。顔の左右対称に白い色抜けがあるが、それはまるで鱗のようだった。人族であると自称するが、実は亜人の血が流れているのではないかと噂されており、その白抜けは自ら鱗を剥がした跡だと囁かれていた。

 剣の腕も立つが博識で計算に強く、騎士団内に於いては金庫を任される立場にある一人だ。

「まったくか、そうか。カイト・ファニング上級騎士も同様だろうか?」

 それこそ物語に出てくる騎士の現し身である。頭身の整った長身に、甘い顔立ち、鎧越しにもわかる鍛えられた身体付き。

 レティシアの問い掛けに、カイトはむしろ疑問を抱くような視線を返す。ともすれば子供っぽい、無防備な視線だった。レティシアの肉体を写す瞳の色が濃く、町娘ならばそれだけで母性をくすぐられるような、うっとりしてしまうような魔力をカイトは持っている。

 貴族の妾腹の子でありながら嫡子よりも有望であるがゆえに騎士として家を出された。

 しかしそんな境遇をおくびにも出さず職務に忠実で、馬術、剣術、宗教学に秀で、この若さで上級騎士を任される、同年代の騎士たちの中心人物でもあった。

 それが彼らの表の評価だ。

 裏では強盗、強姦殺人、連続した夜鷹殺し、放火、サイラス商会の番頭一家の心中偽装、経費横領、犯罪組織との癒着。調べがついたものだけでもそれだけあり、すくい上げられぬ闇に葬られたものを含めれば被害者は倍増するだろう、騎士の立場を利用した悪党だった。

 彼らについて告発しようという騎士は、尽くが潰されてきた。三者三様、そういった狡知の回るものだった。

 レティシアは問い掛ける。

「いくつか、騎士団による犯罪についての報告が私の下に上がってきている。貴君らがそれに関与していると証言があった。思い当たる節はあるか?」

 レティシアがはっきりとした口調で言うと、整列した騎士たちに風が稲穂を揺らすようなざわめきが起こった。

 それは二つに分かれる。一つは何も知らぬもの。そういった騎士たちからすればレティシアの言葉は驚愕の一言に尽きる。三人が呼び出されたのはもしや褒美を賜るのではないかと、半ば本心からそう考える騎士もいないではないのだ。

 そしてもう一つは、はっきりとあるいは薄々感付いていたものたちだ。直接的なかかわり合いがあるにしろないにしろ、黙認してきたことには変わりがない。自己保身により悪を見て見ぬ振りをすることは、騎士にとっては罪なことである。

 ぬるま湯から出ることを恐れるがゆえの沈黙は恥ずべきものだ。

「急にそのようなことを申されましても、このサラ・ゴニアの身は潔白でございます」

「同じく! なにゆえ私を疑おうというのか! いくらネイリング家のご息女といえども無礼千万」

「このような場において、そうおっしゃられるからには、何か証拠でもあるのでしょうか?」

 サラとタイソンは激昂し、カイトは至って冷静に見えた。無理解による傷心さえその表情に浮かべている。

 あるいは自らの容姿に絶対的な自信を持っているのだろう、それでレティシアの心が揺らぐと勘違いしているのかもしれない。

「――我々、貴族や騎士には、自らの判断によってそうと定めた社会不安を排除するための強行的な権利が与えられている。しかし、それは権利を与えたものの権力によって行使されるのではなく、あくまでも行使する人間の責任によって行われるものでなければならないと思う」

 レティシアの声はあくまでも硬質だった。透き通っていて、美しく、だがそれは本当に硝子の硬質さだろうか。それはもっと硬い、揺るぎないものではないか。

 三人が気付いた。じわりと汗が滲む。じっとりとべたついて、冷たい汗だ。

 自分たちは特別な立場にあり、そして目の前の美しい女はそれに輪を掛けて特別な立場にいることに。

 証拠を握り潰すことも、証拠をでっち上げることも自分たちは思いのままであった。いや、レティシアはそれをしまい。確実な何かを掴んでいるのだ、と確証を抱かせる。

 地に伏せ、頭を擦りつけ、謝罪に徹するか、それとも開き直り白を切り通すか。

 三人の脳みそが茹だるほどの働きを見せる。

 ブリューズ政権下を懐かしく思う。それは我が世の春のごとし、だが季節は移ろいついに身を苛む夏が来た。

 季節が巡ることをどのように止められるだろうか。

 社会不安の排除は貴族や騎士が有する権利だった。

 このティルナバンに突如現れた、若く美しい女貴族。アシュレイの片腕として議会に混乱をもたらした一人。

 社会とは、自らを内包する世界のことだ。

 角を得たレティシアは以前に増して、女であることを侮らせない圧倒的な存在感を放っていた。そう言った存在を前にして人間は、時に思いもよらぬ行動に出る。

 三人はそれぞれ仲間ではない。それぞれが、それぞれに悪を成していた。

 だが行動が一致したのはどうしてだろうか。

 処刑の権利の行使だった。それは自己保身と、嗜虐的な欲求と、夏の暑さがゆえの行動だった。

 礼装とはいえ、腰の剣は真剣である。レティシアは既に間合いの内側におり、偶然にも三対一の構図が出来上がっていた。

 白刃が閃く。

 初夏の演習場に整列した騎士たちは震え上がった。

 三人は柄に手を掛けて、それ以上を動けないでいた。

 レティシアの右腕が振り抜かれている。抜刀一閃、一振りで三者の首を落としていた。

 落っことした頭部を拾うかのように、肉体が崩れ落ちる。

 夏の強い陽射しに焼け付く影のように、真っ黒な血が地面に染みて広がる。

 レティシアは素っ気なく血振りをして、涼しげな動作で剣を鞘に収める。

 眉一つ動かさない。

「整列」

 レティシアの一声に騎士たちが動揺を肉体の内に納め、隊列を正した。足元に横たわる三つの骸が戻る隙間はない。

「この者たちの罪は後日明らかになるだろう。――自らの行いに恥じることがなければ安心するがよい」

 レティシアは視線を巡らせる。

「我々は市民に比べて多くの権力や給金を得ている。それは神から、王から与えられた特別なものだと勘違いしがちだが、それらは守るべき民の信任によって与えられたもののように私は考える」

 そしてそれを失ったものの末路はレティシアの足元にあった。

「我々は市民を守る剣として、盾として強くなければならない。しかし、勇気や誠実さを持たない強さに何の意味があるだろうか。その末路は今、貴君らの知るところになった」

 ふとレティシアの視線が和らぐ。

 まさに果断たるレティシアの剣に動揺していた騎士たちが、見惚れるように肩の力を抜いた。

「変わろうというものを私は拒まない、私とともに強く、優しくなろうというものはどれほどいるだろうか?」

 騎士たちは我先にと剣を捧げる。

 白刃に陽光が反射して眩しい。

 レティシアは目を細める。




 星の明るい夜だった。

 魔道による冷房を切り、窓を開けて(ぬる)い風を部屋に入れる。机仕事で痛む目頭を押さえ、遠くを見るようにレティシアは星を見上げた。

 身体を鍛えることよりも、心を鍛えることはよほど難しい。

 悪事に身を染めるのは暇があるからだとドゥアルテは言った。例えばネイリング騎士団はいつも忙しくしている。

 竜種の捕獲も彼らの仕事の一つであるし、そうでなくとも肉体を鍛えるために探索者よろしく迷宮探索に赴くのは珍しくなかった。市内の治安維持の傍ら、害獣や魔物、匪賊の討伐、災害派遣とあちらこちらに出向いたのは竜種という騎獣の圧倒的な行動能力があってこそだろうし、そもそもそれに見合った給金を支払えるだけの財政的な余裕もあった。

 常に戦いを求めるような軍隊だった。

 常設軍というのは金食い虫だ。

 それ自体が金を生み出すわけではない。市民たちが安全無事に生活をすること、それは安全無事に商業活動を行うこととほとんど同意である。そして商業活動の結果生まれる利益から税を得ることで国というものは存在しており、国があるからこそ王を筆頭とした貴族が存在できるのだ。

 騎士ばかりではない。貴族の多くは、市民たちによって自分たちが生かされているという自覚がない。

 レティシアは月を見上げ、そこに太陽を幻視する。

 形の良い唇が不満の形に歪んだ。

「……ランタンはぜんぜん私に会いに来ない」

 自分の口から零れたとは思えぬ、思いがけず幼い口調の愚痴にレティシアは動揺した。

 この夜空の下で繋がっている。今の自分のように、思ってくれるだけでもいいと考えていたが、やはり寂しいのかもしれない。

 溜め息を漏らす。

 夜更かしはあまりよくない。仕事に影響を及ぼすし、女としてもそれは大敵だ。

 邪魔にならぬように緩く結んだ髪を解き、夜風に当ててほぐす。窓を閉め、カーテンを引き、冷気を発する魔道具を起動させてベッドに潜り込んだ。

 夏の湿気が失われ、肌を冷ややかな風が撫でていく。

 レティシアは目を瞑り、疲れのためだろう、闇に溶けるように程なく眠りについた。

 しかし、その穏やかな眠りを妨げるものがあった。

 レティシアの私室に音もなく忍び込んだ一つの影である。目蓋を閉ざす寝顔をゆっくりと覗き込む。ネイリング家の警備をかいくぐり、この距離までレティシアに接近を気付かせなかった。手練れである。

「賊め、なにをしにきた」

 レティシアははっと目を開いた。目覚めても息の触れんばかりの距離まで眠ったふりをしていたのは、必殺の間合いに誘い込むために過ぎない。

「夜這い」

「なるほど、ならば成敗してくれる」

 レティシアは腕を伸ばして賊の首を掴んだ。そのまま折れそうな細い首だ。引き寄せると身体を入れ替えるようにベッドに押しつけ、馬乗りになった。

「どうやって入ってきた」

「窓から、鍵かかってなかったよ。はい、これに免じて許して」

 レティシアは鼻先に花束を突き付けられ、視界を奪われる。

 夜にあって花弁を閉じぬ夏の花だった。薄い青や濃い紫の小さな花が無数に咲き乱れているが、甘い蜜の匂いよりも、緑の匂いが青々としていた。レティシアは鼻をむずむずさせる。

 開け放たれた窓、引かれたままのカーテンが揺らいで、ちらちらと星明かりが入り込んでくる。

 レティシアは名残惜しそうに侵入者の首から指を外し、花束を受け取った。

「しょうがない、許してやろう」

「わあ、ありがとう。レティ」

 にっこり笑った侵入者に、レティシアはどうしようもなく眉を困らせる。それは偽りの無邪気さだった。少年は自分の振る舞いがどのように作用するかをよく知っていた。それが偽りだと知られても、充分だということを。

「それで、本当はなにをしに来たんだ? ランタン」

「レティに会いに来たんだよ」

 ぜんぜん会いに来ないはずのランタンが、その愚痴を聞いていたかのように現れた。少しだけ、都合のいい夢を見ているのではないかとレティシアは思う。

「なんの、ために?」

 レティシアに更に追求されて、ランタンはきょとんと首を傾げる。

「会いたいから会いに来たんだよ」

 恥ずかしげもなくそう言った。

「……口が上手くなったな」

 レティシアが照れ隠しにそう返すと、ランタンはぬるりと顔を寄せる。間近に見る少年の顔はどうしてか大人びている。人ならぬもののような、妙な気配を発する。

「確かめてみる?」

「――んっ」

 息の触れる距離でそう囁いて、唇を重ねるランタンをレティシアは受け入れる。つい握り潰しそうになった花束をベッドに放り投げて、両腕を少年の背中に回した。

 レティシアは確かめる必要もないほどに知らしめられた。

 そっと項に添えられた手がレティシアを前のめりにさせる。押し付け合った唇が歪み、複雑に舌が絡む。じゅる、と生温い唾液を啜る音が恥ずかしく、項に添えられた手が滑るように喉笛に触れ、それを嚥下した喉の上下を指先に悟られて羞恥心は極限に達する。

 しかし恥ずかしさは行為を中断する理由にならない。

 溺れる。そんな風に思う。酸欠で頭がくらくらする。

 唇が離れ、無意識にレティシアはそれを追い求めた。再び触れ、しかし押し返されるように、一瞬で離れる。

「はっ――はっ、はあ、はあ、はあ……はぁ」

 ランタンは獣のように舌舐めずりをする。

 レティシアはぬらぬらとする唇を半開きに、そのまま荒い呼吸を繰り返す。

 心臓がどきどきしている。息をするのも忘れていた。

 額に浮いた汗をランタンが拭って、そのまま撫でるようにレティシアの髪に触れる。

「会いに来たのも本当だし、夜這いに来たのも本当」

 ランタンはベッドの花束を拾いあげると、束ねていた紐を解いて棚に飾られている花瓶にそれを突っ込んだ。

「ちょっと冷たいけど、まあいいか」

 ベッドサイドの水差しから花瓶に水を注ぎ、机に飾ると寝癖でも直すみたいに花の形を整える。

 水差しに直接口を付けて水を飲み、無防備に晒された白い喉笛にレティシアの目は釘付けになる。唇の端から零れた水が、蔦が這うように捻れながら伝って鎖骨へそそがれた。

 レティシアはベッドから立ち上がり、ランタンににじり寄る。抱きすくめると、首筋に顔を埋めてそれを啜った。

「ぬくい」

「そう? レティの身体は、んー、まだ冷たいかな。あんまり冷やしすぎるのもよくないよ」

 開け放たれた窓から風が流れ込んでくる。室内の冷やされた空気とは不思議と混じり合わない。乾燥した冷気と、湿気た温い風が層を成すように渦巻いている。

「なら、温めてくれ」

 ランタンはレティシアを抱きあげるとそのままベッドに運んだ。

「朝までかかっちゃうかも」

「――朝まで。いいじゃないか、何か不満でもあるか?」

「朝なんてすぐだよ」

 レティシアを裸にすると、またレティシアもランタンを裸にした。

 互いに身体を触れ合い、口付けの合間に言葉を交わす。

「ああ、本当にそうだ。朝はすぐ来る――んっ、来て、しまうな」

「――はあ、レティ。動くよ」

「う、――んぅ」

 快感に背筋が弓形になる。下になったレティシアの腰が浮かび上がった。

「――は、は、はっ、レティ、朝になったら、出かけよう、かっ」

「う、んっ、ランタンっ、なに――っ? あっ、ああ、っなんでもいいっ。もっと」

 たちまち二人は燃えさかり、夜は尽く焼き尽くされる。

 白々とした朝が来る。

「……ランタン、出かけるんじゃないのか?」

 大敵たる夜更かしの末に、レティシアは生気を増したようである。

 深い眠りの末にたっぷり力を蓄えたように、見事な裸身を惜しげもなく晒して大きく伸びをした。汗を纏わり付かせたレティシアの濃い肌は、朝日を浴びて黒曜石のように艶めかしい。

「僕、疲れちゃったんだけど」

 反面ランタンは、ぐったりと枕に顔を埋めている。

 夜這いに訪れた賊は成敗されたのである。


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