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全てはここから始まった〜最後には根源、断ち切らせて頂きます〜  作者: 虹乃懸橋


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55、陰陽師達の底力


長くなったので一旦区切りました。

日本史ちょいちょい出てくるので調べるの大変・・・。


後半の再会編は明日投稿いたします。



 本家の墓地まで続く石畳まで戻り小道を進んだ先に、木々が無くなり一気に視界が開けた場所に出た。


 真正面に小高い丘が存在し、その丘の天辺てっぺんから丘の斜面の周囲を何重にも回り込むように小さな墓石が所狭ところせましに置かれていた。


 天辺辺りの石は加工もされていないゴツゴツした岩石が置かれ、中段あたりから表面を研磨した整った石が収まっている。


 天辺程墓標の間隔が空いているのは土葬のせいだろう。

 と、言っても地面に近い墓標8つだけ間隔が狭いだけだが・・・。


 明治時代に土葬から火葬に変わったことでスペースをそれほど取らなくて済んだ現象だろう。

 つまりその8つの中に、35代目である祖母の墓があると言うことだ。


 位置は確認できた。

 と周囲を見まわし、絵梨は体を強張らせた。


 丘の奥に見える光景に見覚えがあり、その現象に脳が追いつかなかったのだ。


 その先にある山の形状、山肌、そしてそこのふもとに見える建物の造形。

 その全てが年に一度訪れていた白芭の本堂がある景色そのものだった。


 ただ地形的にここから見える場所にそんなものがあるのは、おかしい。

 ここから何県も跨またがった場所にある白芭の本堂がなぜここから見えるのか?


「伊代、これはどう言うこと?なぜここから白芭の本堂が見える?」


「ここの、この墓地の時間が止まっていることはお気付きだと思いますが、この場所は日本の()()5ヶ所から出入りが可能となっております」


「つまりあの門扉を境に墓地まで転移しているということ?」


「その通りです。過去その移動手段が限られる中、時間は有限です。時の主上から声が掛かればすぐに駆け付ける必要がある中で、白芭の構える本堂から京の都はあまりに遠かった。それゆえその移動手段の一つとして呪術で転移可能な場所をいくつか印をつけられたのが高彬様です」


 平安時代の移動手段は牛車だ。

 だがそのスピードは遅く、白芭の本堂から京都までは何日もかかる距離だ。


「なんでそんな遠い場所に本堂を構えたの?」


「確かに京に構えていればそんなことにはなりません。しかし巫女の地位を脅かされ呪いを受けたことでおう様は何も出来ない時期が10年以上ありました。その間に1度見限られたのです」


 !?

 時の主上に役に立たないからと追いやられたということ!?


「やり捨てられた山1つを渡され余生をそこで過ごし子を設けよ。そう言われ、高彬様含め加茂家総出でそこに本堂を建て、白芭を構えました。そして11年の歳月が過ぎ、加茂家当主様の進言の元、次の主上に再度お勤めを言い渡されました」


「その時点で京に戻る選択肢はなかったの?」


「10年の月日はあまりに長い。あの地に根差しそこで培った時間は白芭をあの地に縛るには十分な時間でした。それに良い記憶から遠ざかった京での生活に戻りたいとは初代様ご夫婦は思わなかったのです」


「でも主上の言は絶対でしょう」


「憤りを抑える事の出来ない高彬様を説得したのは、加茂家御当主様です。そして妥協案としてこの転移の陣を施し、白芭本陣を動かさず主上に支えられるようにお膳立てしてくださったのです」


 そこまでされたなら、高彬も加茂家を袖にすることは出来ずお勤めに尽力できるように白芭を支えただろう。

 

 ただいくら加茂家当主といえど、これだけのものを1人で作ったとは思えない。

 白芭の紋について加茂家総出で調べた時同様にいくらかの陰陽師達が関わっているはずだ。


 何かある度に加茂家が出てくることに、多少の違和感はあるが門下生だった高彬への配慮と受け取っておこう。


 ただ当時の陰陽師達の底力、ポテンシャルは凄まじいな。

 加茂家が高彬をどれだけ重用していたのかも計り知れる内容だが、これだけ異質な空間を構築、維持できていることに感嘆する。


 しかしそれ以上に気になるフレーズがあった。


「つまりここの結界内の転移の在処ありかを加茂家も共有していると?」


「外側の回廊のみですが、知っている者は自由に出入りが可能です。ですが、ここ数百年利用している者はおりません」


 そうでなければ困る。


「外側ということは墓地には入れないのね」

 ここ重要!と伊代に聞けば、肯定された。


「白芭の血族の墓地に白芭以外の者が近ずけば、悪意ある者と同じ対応がなされるように計画されております」


 本家分家問わず呪物の媒体になり得る遺体に、陰陽師の祖の一族を近づけさせないのは当然の処置だ。


「盟約を結んだ?」


 そうでなければ、高彬の性格からして加茂家との共有はあり得ない。


「はい、回廊の出入りのみの使用許可。墓地への侵入禁止。侵入した場合、命の補償はない。それらを通達済みであると聞いています」


 だろうな。後々のことを考えて高彬がそこまでしていると思っていた。

 期待を裏切らぬ初代の〈鍵〉に安堵の息を吐いた。


「ちなみに転移の場所の五ヶ所とはどこなの?」


「1つは白芭本堂内です」


 !!

 ここから本堂が見える事から近いとは思っていたけれど、5本のうち1本の道に白芭本堂に通じている所があるのなら行幸だ!


 ここから公共交通機関を利用して1時間超かかる場所に本堂はある。

 調べ物をしたかった絵梨には、無駄な移動時間を省いて直にあそこに行けることは朗報だった。


「設置当初最も重要視された主上座しゅじょうおわす朝廷。ですがそこは時代とともに何度か場所を移動し現在は永田町というところに通じております。しかしそちらは現在封鎖されています」


 平安京→福原京→約半年で平安京に戻り、最終的に明治時代に東京に為政者いせいしゃ達が移る過程で転々としたということか。


 その永田町も約30年前から出入りしていない関係で封鎖に陥っているのは当然だろう。


「残る3つですが、1つは分家方様の自宅付近と聞いております。約半世紀前でしょうか。その座標の位置を変更しております」


 引越ししたということだろうか?

 一度その辺も調べてもらおうか。


「2つ目は加茂家本家宅に通づる所です。現在そちらも封鎖されております」


 陰陽師でなければ門扉も出現しないのであれば、そういった者が現在は存在していないのか、はたまた伝承されていないのか。


「最後の1つは絵梨様要様が入ってこられた場所です」


 伊代の言葉に、絵梨の眉がぴくっと動いた。

「ねぇ、他の設置場所は基本使い勝手のいい場所に門扉を構えているのに、私たちが利用した場所だけ随分と不便なところにあるのはなぜ?」


 車で30分以上揺られて来た絵梨は憤った。


 せめて仲嶺の邸宅付近にあり、次代だった姉マリンが利用するためそこに設置したと説明されたなら納得は出来るが、なぜこの場所なのか。


「35代目様が言うには、次代となる方の希望であったとお聞きしています」


 !?

 つまり、姉マリンは〈鍵〉選定が終わった頃の予定では、大学卒業後結婚し、あの公園近くに新居を構えて36代目として白芭を担うつもりでいたということ!?


 それなのに2年と経たずにその計画に狂いが生じたと言うことか?

 困惑する絵梨をよそに伊代は淡々と口を開いた。


「しかしその方は現れることなく、白芭は解体されたとお聞きしていますが、絵梨様がいらっしゃるということは再興なさるのですか?」


 数日前に瀧田から向けられた似た視線を受けながら、絵梨は前と変わらず意思を告げた。


「残念だけど、私の場合は再興のためにこの能力を欲したわけではないわ」


 全ては両親と姉マリンの死の真相を探るためだ。


「白芭の始まりの根源を断ち切るために能力開花したに過ぎない」


 伊代には伊代の思うところはあるのかもしれない。

 それは付き人だった瀧田と同じ想いなのかもしれないが、私はそんな器の大きい人間ではない。


 それに35代目の当主がそう決めた以上、外部が口出しできるものではない。

 そこは伊代もわかっているのだろう。感情を押し殺し、これ以上は聞かないと一礼して下がった。


「設置場所の変更ってどうすればいいの?」


「門扉を動かしますか?」

「その方が移動時間が少なくて済むから助かるわ」


「それでしたらこの護符をお持ちください」

 そう言って懐から一枚の護符を取り出し、絵梨に差し出して来た。


「設置したい場所が決まりましたら、気を籠めて呪言を唱えてください」


 渡された護符を見て、絵梨は一抹の不安が過った。

 もし出来なかったらどうするか・・・。


 その不安を感じ取ったのか、伊代が助け舟を出して来た。

「その護符はあくまで門扉移動に必要な道具です。もし出来なかった場合、今日と同じ場所から入場可能ですので気負う必要はございません」


 その言葉に安堵し嘆息した。


 ありがたい。

 護符に一度額に当てて敬意を示した上で、持っていた鞄に入れ込んだ。


「さて、この墓地の謎も解けたしそろそろご対面と行きますか、要くん」

 それまで黙ってそばに居た要はにっこり笑って、絵梨の手を握って来た。


 絵梨はその手を引っ張って丘に近づき、地面に最も近くある墓標の間隔がより狭い箇所に向かい足を止めた。





面白な、良かった、続きが気になる!と思われたらブックマーク登録、作品の「評価」⭐︎アイコンボタン押して頂けると、大変励みになりますので、ポチッとよろしくお願いします。


次回作は明日投稿予定です。

その後は不定期投稿になりますのでご了承下さい。

よろしくお願いします。



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