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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第2章
64/72

第60話 〜再びの学園生活へ向けて〜

長らくおまたせしました。

お久しぶりです。十織ミトです。

最近までは、内容を考えていたんですが、なかなか指が動かずスランプに入り込んでしまってまして(冷汗

久しぶりの投稿となりまして、少し緊張しますが良かったら読んでください。

今回から、題材にもしている魔術学園への編入となります。

一応、今回の投稿では少しだけ触りをすれど、そこまで深くは書いてません。

次回の投稿では、確実に書きたいと思います。

そこにプラス、拓斗の妹の百合華が冒険者登録する話も書きたいと思いますので、良かったら次回も読んでください。

では、どうぞ。

 コツコツと足音を立てながら、俺とエルシャは前を歩く藍色の髪をショートヘアーにした人物の後に続いて歩く。

 右を見れば、等間隔に扉が設置され、扉に付いている硝子からは室内の景色が確認出来る。

 そこには、俺達とそう年齢が離れていない少年少女達が二十人程が集まってその前に立っている大人から何かしらの話を真剣に聞いている。

 左を見れば、広々とした敷地に疎らに設置された木々と幾つかのベンチがあり、少し遠くを見ればまるで闘技場の様な施設さへ見つけられる。

 最後に、自分を見る。勿論、自分の全身をくまなく見る事は出来ないが、自分が身に着けている物は見る事は出来た。

 俺が今着ているのは、冒険者として何時も着ている様な動きやすさ重視の物では無く、しっかりとした生地に気品のある意匠を施された白地に青と新緑の様な緑のラインが走る上着とズボンを着ている。

 エルシャも俺と似たような服を着ているが、こちらは俺のよりさらに女性らしさを重視している物となっている。

 それらを見て、俺は記憶にある知っている場所を思い出す。


(着た時から思ってたけど、まじでコレ、学校みたいだな。 って、まぁ実際学校って言うか、学園なんだけど)


 アーテラルに来る前の一年と数ヶ月前まで通っていた懐かしき母校『黒那藤学院(くなふじがくいん)』を思い出していた。

 あそこでの日々は普通で変わり映えのしなない平凡な日常と言えるものだったけど、それが今では懐かしく楽しかった事を思い出す。


(この世界にやって来て、今じゃあの頃は本当に平穏で楽しかったって思えるようになったんだよな)


 懐かしく、されどけして戻らない日常。

 それに思いを馳せ、今の状況に目を向ける。


「にしても、まさかまた学校に通う事になるとはな」


 俺は小さく笑う。


「どうかしましたか?」


 横を歩いていたエルシャは、俺が突然笑った事に不思議に思ったのか尋ねる。


「前にもここみたいな場所に通っていたことがあってな、その時の事を思い出してただけだ」

「それって、タクトさんの元いた世界のですか?」

「ああ」


 エルシャには既に俺がこの世界の人間では無く、異世界からの転移者である事を話しているのですぐに分かったようだ。


「だからかな、こういう雰囲気が懐かしくて、その頃の事を思い出しちまった」

「そうなんですね」

「ああ、だからさ。本当に、人生って何があるのか分からないもんだよな」


 俺は窓の外に目を向けながらここに来る事になった状況を思い出す。



 〜・・・〜      〜・・・〜



 レウルさんに呼び出された翌日に俺達はギルド本部に向かい、受付にレウルさんとの面会を取り付けてもらうと、すぐに通してもらう事ができた。

 どうやら、予め俺達が来たら通らせる様に言いつかっていたようだ。

 俺達は受付嬢の後に続いて三階にあるレウルさんの執務室に向かう。







 コン、コン、コン。


「グランドマスター。『連なりし絆(ネクサス)』のタクト様とエルシャ様、それとお連れのユリカさまをお連れしました」

「通してくれ」

「失礼いたします」


 受付嬢が扉を開け、俺達は執務室に入室するとこちらを見ていたレウルさんと視線がかち合う。


「やあ、よく来てくれたね」

「貴方からの呼び出しでは仕方がありませんからね」

「そう言わないでくれ。今回は、君たちに関係している事なんだこら。それと…………」


 レウルさんは視線を俺の左側に立つ百合華に向かう。


「……………その子は?」

「紹介します。彼女は俺の妹の百合華です」

「はじめまして、津我無拓斗(タクト・ツガナシ)の妹の津我無百合華(ユリカ・ツガナシ)です」


 俺が百合華を紹介するとレウルさんは驚いた顔をする。


「タクトくんには妹が居たのかい?」

「ああ。今まではちょっと離れて暮らしていたんだけど、最近こっちに来たんだ」

「なるほど、そうだったのか」


 それなら、僕が知らない訳だと納得するレウル。


「それで、話って何だ?」


 今日呼び出された用件を聞く。


「用件は簡単だよ。君たちの学園への編入手続きがようやく終わったから、その報告と学園に通う為に必要な物を渡す為だよ」


 俺は、ようやくかと思う。


「やっとですか。結構かかりましたね」

「まぁ、途中からの編入はあまり無いからね。異例と考えてくれても構わないくらいだよ」


 レウルさんは苦笑する。


「学園に通うには、基本は試験を受けて合格してからの入学になるから、こういう事はあまりしないんだ。でも今回は、陛下からの御達しがあったから異例として受け入れた感じかな」

「そうなると、その異例で学園に通う事になる俺達って結構風当たりがつよくなりそうじゃないですか?」


 俺は思い浮かべた事を嫌な顔しながら尋ねる。


「まぁね、そこは仕方がないかな。陛下からの命で学園長が君たちを受け入れることを了承したんだからね」

「そうですか」


 俺はこれから起きるであろう厄介事に気が滅入る感じでため息が出る。


「まあでも、『コルーナ魔術学園』は貴族だろうと平民だろうと身分を笠に着ての横柄は許してないから、何かあったら学園長に言えばいいさ」

「教師じゃ駄目なんですか?」


 エルシャが不思議に思い聞くと、レウルさんは苦虫を噛み潰したような顔になる。

 それを見て、俺は何かあるのかと首を傾げる。


「それ何だけどね、一応はこの国の学園は平等を心掛けているんだけどね、中にはそれでもやらかす人が居るんだよ」


 レウルさんはため息を吐いて、まるで頭が痛いと言う感じで頭を抱える。

 やっぱりそういうのは何処にも居るんだなと呆れる。

 元の世界で読んでいた小説やマンガではよくある設定で、そういう奴は大抵が厭味ったらしいウザい奴なのがほとんどだったなと考える。

 そして、そこから考えられるものも分かった。


「なるほど。つまりは、学園の教師陣の中にも貴族の身分を振りかざすバカがいる、と」

「まあ、端的に言えば、そういう事かな」


 苦笑しながらそう言うレウルさん。

 それを聴いてエルシャと百合華は気分を害したのか顔を(しか)める。


「何ですか、それ」

「それ、本当に教師がやる事ですか」

「勿論、そんな輩だけではなく清廉潔白な人も居るから、頼るならその人達にすると良い。その中には学園長も含まれるからね」


 言われるまでもないと、俺達は頷く。


「それじゃあ、君たちの荷物を渡そう。隣の部屋に用意してあるから取ってくると良い。制服もあるから、一度試着して確かめてくれるかな」

「わかりました」


 俺とエルシャはそれぞれの荷物を受け取りに隣の部屋に入ると、テーブルの上に各教科の教材と制服、そして体操服が置かれていた。

 俺は一番上にあった薬学の教科書を試しに手に取りパラパラと流し読む。


「ふぅん。なるほど、こういうのを教えているのか」


 手に持つ教科書の内容を流し読みテーブルに戻し、今度は制服を手に持つ。

 肌触りは良く、いい生地を使われている事が分かる。

 横を見ると簡易的な仕切りがあり、そこで着替えろという事だろう。

 俺は制服を持ってその簡易試着室に入る。エルシャも、俺を真似て制服を持って試着を始める。

 脱いだ服を近くの籠に入れ、ワイシャツ(?)を着てからスラックスを履き制服に袖を通す。

 制服は大きすぎず、小さすぎない、これからまだまだ成長する身体に合わせた動きを阻害しない大きさで丁度いい。

 籠と一緒に置かれている姿見の鏡を覗き込む。


「ふむ」


 俺が着ている制服は気品のある意匠を施された白の生地をを基本とし、その上を青と新緑のラインが走る素晴らしい出来の物だった。


「ふむふむ」


 裾の丈と袖の長さも丁度で、『黒那藤学院』に通っていた頃の制服は濃緑色のものだった為、同じ物だとは思えないが、こうして再び制服を着ることが出来るとは思いもしなかったので口元に笑みが浮ぶ。


「ははっ、良いなコレ」


 俺は簡易試着室から出て、エルシャが着替えている試着室に声を掛ける。


「おーい、エルシャ。そっちはどうだ」

「あ、タクトさん。はい、こっちは着替えました」

「そうか、どんな感じだ?」

「…………………えっと」

「………………?」


 突然どもりだすので、どうかしたのかと声をかけようとした瞬間、試着室のカーテンが開く。


「………………」

「………ど、どうでしょうか?」


 中から出てきたのはもちろんの事エルシャ、なのだが――――その格好が問題だった。


「………………」

「あ、あの、なにか変ですか?」


 俺が何も反応しなかったので、自分の格好が変なのかと不安になるエルシャ。

 そこで俺は、はっとする。


「え、あ、いや。全然、そんな事はない!? 凄く似合っている」


 ただ純粋に、エルシャの制服姿に見惚れてしまっていた俺。エルシャが着るのも、俺と同じ制服なのだが、スラックスはスカートに、上着は俺のより少しだけ丈が短くなっている。

 凝った意匠の施された青と新緑のラインの走る白の制服にエルシャの薄い桃色の髪がアクセントとなり、それを着たエルシャの姿は、何処かの御令嬢かと思えるくらいにお嬢様ぜんとしていて、素晴らしく可愛かった。


「そ、そうですか? 良かったです」


 俺の返事に気を良くしたのか、はにかむ様な微笑みを浮かべた。

 それが余計に、俺の心臓の鼓動を早くさせてしまう、がそれを悟らせないように言う。


「それじゃ、一度百合華達にも見せてみるか」

「はい。こういう服は全然着たことが無いので、少し恥ずかしいですけど」

「俺は似合っていると思うけどな。何だったら、今度一緒に服でも見に行くか?」


 何でもないように言うと、エルシャは驚いた顔をする。


「えっ、良いんですか!?」

「構わないよ。それくらいの楽しみはあったほうが良いだろう」

「ありがとうございます!?」


 エルシャは嬉しそうに応える。

 その後、エルシャと俺は制服姿を百合華とレウルさんの二人に見せ、評価を聞いてみた。


 すると二人は、


「いやぁ、良く似合ってるよ。二人共」

「ホントホント。お兄ちゃんの制服姿は見慣れてたんだけど、意匠が違うとこんなに変わるんだね! それとエルシャちゃんはその髪の色と合わさるから、凄く魅力的な女性に見えるよ!」


 と、俺達に称賛を向ける。

 確かに、俺は約一年と半年ぶりに制服(コレ)を着たので懐かしさと少しの気恥ずかしさがあるが、すぐに慣れるだろうと考える。

 対して、エルシャは俺や百合華、レウルさんからの称賛に嬉しいような、恥ずかしい様な、口元をムニャムニャさせながら何とも言えない表情になる。

 その表情に軽く吹き出すと、少し睨まれたが、そんな顔で睨まれても怖くないよと思いながらもジェスチャーで謝っておく。


「それじゃ、二人共。二人が通う『コルーナ魔術学園』の編入は明後日の朝七時半だ。他の学園生達のホームルームは八時からだから、それまでに必要事項はあっちで伝える手筈になっているから、安心して行ってくるといい」


 レウルさんは笑顔で教えてくれる。


「何から何まで、ありがとうございます」

「ありがとうございます」


 俺達二人は頭を下げてお礼を言う。


「問題ないよ。これも大人の仕事さ。もとより、陛下の提案だからね、断れないと言うのもあるけどね」


 苦笑しながら答える。


「まぁ、明後日からの二年と半年は楽しんでくると良いよ。卒業までは依頼を受けなくても良いようにはしておくからさ」


 そのような提案をレウルさんから受けるが、俺はそこで待ったをする。


「いや、依頼は受けるよ。時間が空いた時には顔を出す」

「私も、タクトさんと同じく」


 レウルさんは呆れたようにしながらも、楽しそうに言ってくる。


「そんな無理しなくても良いのに。でも、確かに、二人が少しでも依頼を受けてくれるならこちらとしても意義があるかな」


 俺達の答えにレウルさんはそれを受け入れてくれた。

 しかし、俺の意識は横で話を聞いていた百合華からの言葉に持っていかれることになる。


「あ、だったら、私も冒険者になりたい」



「………………………は?」

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