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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第1章
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エピローグ 〜事後処理と新たな問題〜

 スタンピードを治めて、はや十日。


 戦闘終了後は誰もが精魂尽き果てている状態で、まともに動けていたのは俺と、俺が鍛えたエルシャ、ギルドマスターのエレーナ、サブマスターのサリマン、『A』ランク冒険者パーティーとそれ以外で数名、兵士も数名。

 そんな状態では、魔物の死骸の撤去等の事後処理も(まま)ならない。

 勿論だが、俺の魔術で全員の怪我を治療しているので、肉体的には健康に戻ったが、やはり精神的な面を治すのはただの治癒魔術では俺でもなかなか難しかった。

 まあ、やろうと思えば異能でちゃちゃっとやってしまえるのだが、それは緊急時以外では使わない。

 という事で、事後処理は後日に回され、各々の肉体的や精神的な疲れを取るためにその場で解散になった。

 が、しかし、その場に魔物の死骸が散乱している事に変わりはなく、そのままにしておくと色々と問題があったりする。

 例えば、疫病。

 例えば、魔物の死骸がアンデット化。

 例えば、魔物の血の匂いに引かれてやってくる更なる魔物の襲来。

 そして最後に、魔物の死骸から発せられる負の魔力による影響で現れる悪魔。

 そんなものが成ってしまっては、これまで以上の被害が出てしまう事になる。

 なら、そうならない様にするのは当然。

 方法は二つ。そのどちらも定番で、火葬と浄化。

 火葬は火属性の魔術を使える者ならば、誰でも出来る。しかし、この度の戦闘で火属性魔術を使える者が居ても、誰もが魔力を空っぽにしていることだろう。

 次に浄化。これも光属性を使えれば誰でも出来る事。そのなかでも、教会の聖職者はとりはわけそちらの方面に造詣があるので、大抵は聖職者に頼む事がある。

 だがここでも、問題があり、倒した魔物に対し光属性を持つ者が浄化をしても数が間に合うのか分からない。


 なら、ここはまた俺の出番という訳だ。


「【光陣結界(フォル・リベージョン)】」


 何もなかったそこに、一瞬にして全ての魔物を覆い尽くす程に広大で神聖な結界が構築された。

 俺は自分で張った結界の出来に満足する。

 これでそれらの問題は解決し、後は明日と相成った。


 それからも忙しい日々が続いた。

 

 事後処理が終わった次の日にはギルドからの呼び出しがかかり、スタンピードで俺がやった事に関する報告の調書を取る事となった。

 何でも、俺からの調書を纏めてから皇都にある本部に送るらしい。何でそんな事をするのかを聞いたら、


「今回、貴方が打ち出した結果はまさに偉業と言っても過言ではありません。その事から、現時点で貴方の力はこの国の、いえ、この世界でも有数の実力者であることが確認されました」

「まあ、そうだな」

 

 この世界で有数どころか、誰も俺と対等ではないのだが。

 まあ、それは言わないでおこう。


 と、こんな感じで最初の二、三日は消費し、その後は今まで通りに幾つかの依頼を受けて過ごしていた。

 あとスタンピードで討伐した魔物達はそれぞれ素材の採取や不要な使う事の出来無い部位は焼却処分する為に炎魔術の使える俺を含めた幾人もの魔術師達が呼ばれ処分したり、魔物討伐に参加した冒険者全員に金貨三十枚渡された。

 それだけの大金を得た事と、負傷者は出たが死者が居なかった事に冒険者達は歓喜に湧き上がる。

 その状況を作り上げた俺は、一躍英雄に祭り上げられる事となった。


 そんなこんなで今日も依頼を受けようとギルドに向かうと、ここ最近の変化として一番顕著は出来事が俺達を迎え入れた。


「お、英雄様のご出勤だぞっ」

「タクトさん、おはようございますっ」

「なぁ、この間の話の事、考えてくれたか? こっちはあんたを迎える準備は何時でも出来てるからな」

「タクトさん! 俺を弟子にしてください!」

「あ! 狡い! なら、あたしも!!」


 てな感じで、ここ最近の俺の人気なりなんなりが激上がりだったりする。


 しかし、俺がそれに対応しようとしたら、受付の方からレーナさんがやって来るのが見えた。


「ハイハイ、皆さん。そこを退いてくださいね。タクトさんとの話は後程にお願いします。まずは、ギルドマスターが話したい事があるらしいので」


「「「「「「「「ええ〜〜」」」」」」」」


 レーナさんが何とか取り成してくれたので、彼等も不承不承ではあるが退いてくれた。


「助かりました、レーナさん」

「ありがとうございます。私もあれには馴れていないので」

「仕方ありませんよ。何せ、タクトさんはこのアルベンの街を救った英雄なんですから」

「その呼び方は馴れないんだが。それで、エレーナさんが俺達に話があるんだって?」

「はい。ですので、少々お時間をいただけないでしょうか」


 俺達は頷き、レーナさんの後ろに着いていく。




 コン、コン、コン


「どうぞ」


 レーナさんが執務室の扉を開けて俺達を室内に招き入れ。

 俺達が室内に入ると、何時ものようにエレーナさんが机に向かって書類仕事をしていた。


「来ましたか。少し、待ってくださいね。これを早急に終わらせなくてはいけないので」

「分かった」


 この前と同じように俺達は机の向かい側にある四人掛けのソファーに座って待っている事にした。

 すると、気を効かせてくれたのか、レーナさんがお茶を出してくれた。それに礼を言って一口飲む。

 出されたお茶は、市販で売られているガーフェンと言うお茶で、芳醇な茶葉の風味と、独特な苦味。その中にある仄かな甘味があって、俺は結構気に入っている。


 それから二杯程、お茶請けのクッキーと一緒にご馳走になっていると、仕事が片付いたのか、エレーナさんはこちらに話しかけてくる。


「今回も、突然の呼び出しに答えてくれてありがとう」

「気にしなくて良いですよ。今日も、適当な依頼を探しに来ただけですから」


 俺とエレーナさんは軽く挨拶代わりの会話を交わす。


「それで何だけど、貴方達にお願いがあるの」

「お願い?」


 珍しいな、と俺は思った。

 今までにエレーナさんからのお願いなんてされたことがなかったので、余計にそう思った。


「そう。近い内に、貴方達二人とワタシの三人で皇都の方に行ってもらいたいの」

「何でだ?」

「この間録らせて貰った調書の書類が、あちらさんの興味を引いたらしくてね。本人にあってみたいらしいのよ」


 それって、単なる野次馬なんじゃ、何て言わず心の中で留める。

 実際、その通りなのだから。


「皇都、ねぇ。エルシャはどうする?」

「私はタクトさんが行くのなら着いていかせてもらいたいです。まあ、本音を言うのなら、私、皇都に行った事が無いので、一度で良いから行ってみたいなと思っていたのです」


 エルシャが顔を赤らめて、恥ずかしそうに言ってくる。

 その表情がどことなく可愛らしくてグッと来たりした。


「まあ、俺も行った事がある訳でもないからな。別に行っても構わないが」

「そう。良かったわ」


 俺達の返答にエレーナさんは安堵した顔になる。


「それで、何時から行くんだ?」

「そうね。事後処理はある程度は終わっているから、ワタシの確認が必須の書類だけを決済して残りの重要度が低い物はサリマン辺りにお願いしておけば、何とかなる筈だから。少なくとも、準備を含めるなら三日は欲しいかしら」

「了解だ。なら、その仕事が終わるまでは自由にさせてもらうけど、構わないよな」

「ええ」


 こうして、俺達の『ハシュバル皇国』の皇都『グリンザリア』へと向かう事が決まった。

 そこでもまた、少なからず騒動が起きることになるが、その時の俺達に知るよしはなかった。

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