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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第1章
33/72

第32話 〜激突〜

お久しぶりです。十識ミトです。

この書きも久しぶり過ぎて、どうすれば良かったか忘れてしまいましたよ。(^-^ゞ

てなわけで、今回は主人公の拓斗がスタンピードを起こした魔物達とのガチバトルを書いています。

それと、読んでくれている方達は気づいていると思いますが、今まで読んでくれていた所に、拓斗が異能を使った所が書かれていません。

ですが、ご安心を。

それに関しては、次の所で書きますので、今回は拓斗の戦闘(魔術での)をご覧下さい。

 報告を上げに急いで帰還した冒険者から詳しく情報を聞き出し、受付嬢に指示を出す。


「シェイミー、至急アルベンに居る『C』ランク以上の全冒険者達をギルドに招集させなさい」

「分かりました!」


 指示を受けた受付嬢―――シェイミーさんは通路を走って戻っていった。


「どうやら、最悪の事態になってしまった様ね」

「みたいだな」

「至急とは言っても、集まるのに少なからずの時間を要する。数も、どれ程集まるのか」


 エレーナさんは不安や切羽詰まった様に言うが、俺からすれば最悪な事態にはならないと断言しても良い。

 そんな事になりそうになったら、俺は構わず本気を出すことを厭わない。神威外装(アレ)を使わない範囲でならだが。


 渡された資料を読む限りでは、魔物の種類や数はかなりのものだが、力が制限されている現在でも制限の上限までの力で本気を出せば勝てるだろう。

 まあ、それでこの街に居る冒険者達が納得するかは別問題だが。中には自分達で、自分達の住む街を守りたいと願う者もいれば、何でそんな力があるのになにもしないんだと言う者も居るだろう。

 だからこそ、今回は今の立ち位置に甘んじる事にしている。

 不測の事態なればその限りでは無いがな。


(にしても、まさかゴブリン討伐の依頼でこんなことになるなんてな)


 それから三時間後

 ギルド内には『C』ランク以上の冒険者達が犇めき合う様にして集まっていた。

 その総数、約九十七人。

 それ以外の『D』ランクから下の冒険者達はこの後の避難誘導や、怪我人の治療の人員にするので前線には出さない。

 冒険者達の前に立ったエレーナさんは、風属性魔術の『浸透声音(ウィスパーボイス)』を使い、集まった冒険者達に今回集まってもらったのかを説明する。


「アルベンの街に住む『C』ランク以上の冒険者の皆さん。この度はワタシの出した緊急の招集に応じてもらいありがとうございます。今から、何故このような場を設ける事になったのかを話します」


 ギルドマスターからの緊急の招集。

 この時点でただ事ではない事は冒険者達も薄々感じてはいたことだろう。


「今から一月程前に、ある冒険者パーティーが受けた依頼でここから少し離れた場所にあるクルリ村が出した依頼のゴブリンの討伐の為に、そのゴブリン達が棲みかにしているだろう森に入り、そこで彼等はその森の中で複数の魔物達が集っているのを確認した」


 途端に騒がしくなるギルド内。

 一ヵ所に集まる複数の魔物。それだけ聞いて深く考えなければ、単にそこに生息しているだけの魔物なのだろうと考えるだろう。

 しかし、彼等は知っている。

 ここから離れた場所にあるクルリ村の近くの森は、比較的弱い魔物だけが生息している場所で、低ランクの冒険者が最初に討伐依頼を受ける前準備の為の訓練所の様に使っている所である。

 エレーナさんが報告の後に他の偵察要員としてギルドからの依頼を出し、それを受けた冒険者から上がってきた魔物達の種類を述べていけば、自ずとそれが何を意味するかは分かるというものだ。


「つまりは、起きてしまったのよ。スタンピードが」


 その一言で理解したことだろう。

 集結していた魔物達がこの街に向かってきている事を。


「だから、お願い。この街を救う為に、貴方達の力を貸して下さい。それが嫌で、このままこの街を出ていくとしても、それは貴方達の自由。ワタシは貴方達を軽蔑しない。でも、出来ることなら、ワタシと一緒に戦ってほしい」


 それはおそらく、エレーナさんの心からの言葉なのだろうと考える。

 それだけ、この街と、この街に生きる人達が大切なのだろう。

 それが響いたのか、冒険者の中から声が上がった。


「俺は、やる」

「おれもだ」

「僕も」

「この街を失くす訳にはいかないしね」

「当然、やらせてもらう」

「この街を失くすのはもったいないからな」


 幾つもの声が上がり、この場に居る冒険者達が全員、スタンピードとの戦闘に参加することが決まった。

 俺から見ても、まさか全員がフル参加するとは思ってもいなかった。

 それだけ、彼等にとってこの街は大切な場所なのだろう。中にはこの街で生まれ育った人も居るだろうが、そう思える場所なのだ。


「ありがとう、皆。それじゃあ――――」


 その後はそのまま作戦会議に雪崩れ込んだ。

 

 そうして、決まった事の中で、俺は一番重要な仕事を宛がわれた。



 そして、半日が過ぎ、その時がやって来た。

 住民に避難勧告し、陣地構成、医薬品等の不足品の買い出し、装備の手入れ、偵察要員の選出をし、見張りを置きながらの仮眠を取る。

 そんなこんなと動き回っていると、既に空は白み始めていた。

 結局、夜中の夜襲は行われる事は無かった。

 いや、正確には有ったが、俺が人知れず処理していたので実質ゼロ。


「そろそろか」

「そうですね」


 俺とエルシャは隣り合って街の外壁に寄り掛かって立っていた。

 

 アルベン側の陣営は朝から忙しなく動き回り、未だに寝こけている者は起きている者に叩き起こされ、戦闘の準備に奔走する。

 俺達はそれを横目にエレーナさんや各冒険者パーティーのリーダー達が話し合いをしている天幕に向かう。

 理由は、先程遠目にだが魔力強化をしているため見間違えでなければ、こちらに向かってくる数多の魔物の姿が見えたで、その報告に向かう。

 その天幕は他の物より大きく、少しだけ豪奢な物であった。

 天幕の中からは、今も何人かの話し合いの声が聞こえてくるので一言声をかける。


「エレーナさん。ちょっと良いか」


 すぐに中からエレーナさんが顔を出してくる。


「どうかしたのかい?」

「ああ。今から、おそらく約二時間後に魔物の軍勢がここにやって来る」


 俺の報告に一瞬驚いて、すぐに真剣な表情になり、俺達を天幕内に迎え入れる。


「それで、それは本当なの?」

「ああ。間違いない」


 突然エレーナさんに迎え入れられ、入って来た俺達にさっきまで話をしていた冒険者達が俺達を見てくる。なので、俺は丁度良いという事でさっき確認した魔物の軍勢の大体の到達時間を教える。

 それを聞いた冒険者達が慌ただしく各陣営に戻り、最終確認をする事になった。



 そうして約二時間後。

 俺の目測で推測した時間とそう変わらずにその姿は見えた。

 アルベンの街に悠然と進行してくる魔物達。その後方に至っては見通す事の出来ない数がおり、まるで黒い波が押し寄せてくるかのような錯覚を起こしてしまうほどだ。


「成る程。これは壮観だな」

「何を暢気な事を言ってるんですか」

「そうね。これは、この街の未来がかかった戦いになる。勝てば良いけど、負ければワタシたちだけではなく、後ろにあるアルベンの街に住む多くの人々にまで危険に晒す事に―――――」

「別に、暢気だなんて言ってないぜ」


 俺は真っ直ぐに魔物達に視線を向け、けしてそれを外さない。


「俺はやるべき事をやる。あんたらも、自分達が成すべき事を成す。ただ、それだけだ」


 俺の言葉や表情には、自分でも分かるくらい気負いがなく、自然体である。それは自分の力がどれ程のものかを知っているからこその自負。


「本当に、出来るのよね」

「当然。まぁ、見てなって。デッカイ開幕の花火を上げてやるからよ。それより、援軍はまだ来ないのか?」

「ええ。未だに連絡が来て居ないよ。行軍中なのか、最悪は、」

「見捨てられたか、か?」

「………………………」


 エレーナさんは沈んだ表情になっていたが、俺はそんな彼女を元気付ける為に自然体で応える。


「安心しろよ。俺がいる限り、この街は滅びる事は無い」


 絶対に、と硬い意志を込めた()で前だけを見つめる。

 エレーナはそれを横から見ている事しか出来なかった。





「そんじゃ、殺りますかね」


 俺は腰に挿している剣―――神剣『エレクシア』を引き抜く。

『エレクシア』の蒼と緋色の刀身が露になる事で発せられるその圧に、俺の後方に控える冒険者達は(おのの)いている。

 魔物達も少なからず、それに呑まれているが、構わず突っ込んでくる。

「ふっ」と笑い、俺は『エレクシア』に声を掛ける。


「殺るぞ、『エレクシア』」

「何時でもどうぞ。マイ、マスター」


 『エレクシア』を足元の地面に突き刺し、そこを中心に魔力を流し込む。

 戦いの開幕にピッタリな派手でドデカイ魔術(花火)を打ち出すが為に。


「覚醒めろ、九の頭を持つ焔の龍よ。【九頭龍陣(ヴァイス・ゲヘナ)】」


 俺を中心に九つの極大な火柱がゴオゴオと立ち上ぼり、それが次第にある形に姿を変える。

 それは、龍。地球で語られる西洋にある竜ではなく、東洋で語られる細長い胴を持ち、その姿は勇壮で雄壮、優美で優雅。

 それが九体。炎の身体を得て現れる。


 ―――――ゴアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ


 咆哮を一つ上げるそれは、俺の回りを螺旋を描く様に游ぐ。

 魔物に指先を向け、俺はただ、一言こう言った。


「殺れ」


 そこから始まるは、炎の身体を持つ九頭龍による蹂躙。

 獲物は一体たりとも逃がさないと言うかのように暴れまわる。

 大地が燃え上がり、激しい爆発を上げ、進軍してくる魔物達を喰らい焼き殺す。


 殲滅数、約八百八十。


 だが、それでも手が足りないのは否めない。

 だから更に追加する。

 この世界で、俺が持つアドバンテージ。全属性魔術による殲滅を。


「来たれ、儚き夢の如く、触れること無き幻の如き龍よ。【夢幻龍撃(ウロボロス)】」


 更に現れるは、夢か幻の如く半透明な水の身体を持つ龍。

 魔物達に喰らい付くが、その横から反撃を受ける。しかし、その程度ではその身を削る事も、破壊する事も叶わず、次々に【夢幻龍撃】の餌食になる。

 そもそも、この魔術【夢幻龍撃】はいくら破壊しても俺が魔術自体を解除しない限り周りの自然界にある魔力を吸収し、復活。そして、攻撃を続ける無限ループなのだ。

 それはまさしく、夢幻にして無限。


 殲滅数、約六百九十。


「降り注げ、鋼鉄の裁きの雨。【砂塵之針雨(ニードル・レイン)】」


 進行してくる時に風で舞い上がった砂塵、戦闘で起こる砂埃、そしてどこまでも広がる大地。

 これは、そんな余りにも身近にある砂を使うことで発動する魔術。

 大きさは直径十五セス程の針。単に投げるだけでも危険だが、俺の支配下に置きながらの雨の様に降り注げば、そこにあるのは地獄絵図。

 無数の針に貫かれるか、刺されるかで身体から大量の血を流しその命を散らす魔物達。


 殲滅数、約五百二十。


「風よ、颶風の槍となり乱れ、穿て。【颶風散乱槍フォールン・ランサニア】」


 風が渦を巻き、現れる幾つもの颶風の槍。

 それを見るなら、唯の【颶風槍(ウィンドジャベリン)】か【風刺槍(ウィンドスピア)】かと思うだろうが、この魔術はそんなちゃちなものではない。

 この魔術を打ち出すと、敵は回避行動を取って避けようとするが、そんな事は当然承知している。だから、敵が避けようと確実に必殺する攻撃をする。そう、まるで――――散弾銃の様に。

 たった数本であれば避けられると思った所での、打ち出しからの散弾銃ならぬ散弾槍でもって、刺し殺す。


 殲滅数、約三百九十。


「けして逃れられぬ、裁きの閃光に貫かれよ。【聖光閃撃(セイント・グレイブ)】」


 これも、見た目は【閃光線(ホーリーレイ)】だが、威力、精度、範囲が格段に格上。

 一撃放てば遥か後方まで届く閃光。途中で進路を変えるのもお手のもの。敵が何処に居ようと、逃げようと関係無く、威力が減衰して消滅するまで追いかける追尾性能。

 絶対的な射撃性能の地獄。狙撃主が喉から手が出るほどに欲しい性能だろう。


 殲滅数、六百四十。


「姿無き幻に蝕まれ、死に至れ。【幻獄(ファントム・ヘル)】」


 魔術が発動する。そして、進行してくる魔物が突然、生き絶える。

 冒険者も、魔物も、今自分達の身に何が起きたのか、目の前で何が起きたのか理解できなかっただろう。

 この【幻獄】は敵の本能を強く刺激する、所謂ショック症状を強く引き起こし、ショック死させる魔術。

 生物は必ず、本能で恐れるものがある。火しかり、水しかり、刃物しかり。

 これは、その本能で恐れるものに対しての恐怖の度合いを強め、高める事で相手をショック死させるのだ。


 殲滅数、約二百二十。


「凍てつき、砕け。【蒼氷鳴動(アイス・ブレイク)】」


 その一撃をもって、地面が、空気が、魔物が一瞬にして氷付けにされ、砕かれる。

 原子だろうと分子だろうと関係ねえ、と言うかのように全てを氷で閉ざし、砕き尽くす。


 殲滅数、約八百三十。


「天の怒り、その身で贖え。【天雷崩牙(ボルト・レイジング)】」


 晴天だった空に黒々とした雲がかかり、そこら幾つもの稲光が発せられ、そして墜ちる。


 ―――――――ドガガガガアアアアアアアアアアアァァァァァンッッ


 視界が焼かれ、白く照らされたが、それも次第にもとに戻り、目の前に広がる焼け野原と焼け焦げ、身体から白い煙を出す魔物達。


 殲滅数、約九百。


 合計、約五千七十。


 たった一人の人間の、たった八つの魔術によって打ち出された驚異の殲滅数。

 その絶対的実力に魔物達は恐れ、冒険者達は畏怖と畏敬、そして憧憬を宿した視線を向ける。


「さぁ、まだまだ居るんだろう」


 悠然と立ち、


「ここから先は、一歩たりとも通さない」


 不撓不屈の覚悟をもって言い放つ。


「俺の居るところで、理不尽な事は―――――けして、させない」



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