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最強幻想使いの異世界魔術学園  作者: 十織ミト
第1章
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第11話 〜初めての現地人と初めての街〜

 最終試験が行われた翌日、俺はシロナと共に森の家の前に立っていた。


「準備はよろしいですか? 忘れ物とかはありませんか?」

「ああ。大丈夫。今まで、世話になったな」

「いいえ。以前にも言いましたが、元はと言えばこちらのせいですから。このくらいの事は、拓斗さんへの償いとしてやってしかるべきなんです」

 

 俺はこれから、今日までの一年間を過ごして来たこの家を出て、ここから程近い場所にあると言う街、アルベンに向かう事になっている。


「それでは、拓斗さん。こちらを」


 そう言ってシロナは三つの品物を渡してくる。

 一つは黒い線の走った白銀の腕輪。

 手に持つと重さはそこまででも無いが、言い知れない圧を感じる品物だった。

 二つ目は、堅くされど手に馴染む柄と、鞘から向き放たれた事で目の当たりにする剣の姿。(あお)い刃と中打の部分に(あか)い十字が刻まれた一振りの剣だ。

 こちらの剣も腕輪と似た気配を感じ、長さからロングソードと言われる種類なのが分かる。

 最後に、幾らかのお金が入った袋。


「これは?」

「この二つは、私とあのお二方からの贈り物です」

「えっ、アディーとゾルドから!?」


 俺が知る限りで(もしかすると他にも居るかもしれないが)、シロナが『お二方』と言う人物は、俺が元いた世界を管理している神の二人だけ。俺はあの二人の神の事を思い出す。

 あの神達にはすでに加護を貰っているので、まさか武器や装飾品を貰えるとは思ってもいなかった。


「ええ。あのお二方と私で素材を持ち寄り、作り上げた物です」

「へぇ。それで、これってどんな効果があるんだ?」

「まず、腕輪ですが。こちらは(めい)を『リミッターリング』と言いまして、装着者の力を七割まで制限を掛ける物です」

「力の制限? 何でそんな物を?」


 装着者の力を制限する腕輪を何故、俺に渡してくるのか不思議だった。


「それはですね、拓斗さんの力はこの世界では異常であり、イレギュラーであるからです」

「異常? ああ、成る程。俺の異能の事か」

「それもありますが、魔力量と属性もそこに含まれます」

「ああ〜、うん。納得。そっちもあったな」


 魔術を最初に始めた時に量った魔力量を思いだし、納得する。三百万という普通の人が持ち得ない、異常な魔力量と全属性というアドバンテージ。

 この世界にいる人間が持つ属性は、種族によって異なるが多くて四つ。ほとんどの人間や、他種族は一つ〜二つが大半だ。

 総じて善人である訳ではなく悪人も当然ながら存在し、そんな中でも、妬みや謂れの無い誹謗中傷、さらには恐怖の感情を向けてくる者とている。

 稀に、やっかみからの被害を被る事になることも。


「つまり、余計な被害を避けるのと利用されないためのカムフラージュって訳か」

「そういうことですね」

「ふむふむ。じゃあ、この剣は」


 俺は受け取った剣を目の前に持ち上げる。


「その剣の銘は『エレクシア』と言います。正真正銘、神によって鍛えられた神剣です」

「えっ」


 俺は危うく剣を取り落としそうになったが、すんでのところで耐る。


「し、神剣? これが」

「はい。拓斗さんの事ですから、その剣から普通とはかけ離れた気配を感じていることでしょう」


 俺はまじまじと手元の剣をみる。見た目の形状は普通のロングソードであるのは確かで、色が少々明るめ―――俺的には、もう少し暗めの方が良かったが―――を除けば、剣から感じる気配以外は普通。


「その神剣は持ち主の思考や、思いによってその形状と性質を変える事が出来ます」

「形状と性質?」

「試しに、今の物以外の姿を想い描いてみてください」


 俺はシロナに促されるように剣の形を変えてみるのを試す。

 まず、俺が思い描いたのは刃渡り三十ゼア(センチ)の短剣。すると、一瞬剣が光ったかと思ったら、瞬く間に俺が考えていた姿に変わった。

 少しの間、俺は神剣の形状変化を試し、何通りも変えながら行ったがそのことごとくが俺の想像通りに変化する。


「これは、凄いな。全く、タイムラグが無く形を変える事が出来る」

「当然、それも計算に入れて作ったんですから。あと、その剣には魔術を纏わせる事で、纏った属性を得るという特徴もありますが、それは後程確認してください。ああ、それともう一つ、面白い機能も付いていますのでそれも」


 シロナは楽しそうに言ってくるので、後で必ず確認するとしよう。


「そして最後に、これは忠告です」

「忠告?」


 俺は一瞬、何かやらかしたかと考えたが、全く思い出せなかたった。


「拓斗さんが最終試験の時に使った姿を変える魔術。【神威外装アストライズ・オーバー・ロード】ですが、アレの使用は極力控えてください」


 真剣な表情で語るシロナのその言葉で、俺は彼女が何を言いたいのか理解した。


「あ〜……………うん………………何だ、……………………やっぱり気付いたか?」

「当然です。ここに居る間、お風呂やトイレの時と、寝る時以外で目を離した事はありませんよ」


 いや、それ完全にストーカーみたいだから、と思わなくもないが、それだけ気にかけてくれているのが知れて、少し恥ずかしくも、嬉しいと感じてしまう俺。

 そうして、だからこそ、今の俺の身体の状態をハッキリと認識する事が出来るのだろう。


「分かった。アレの使用は極力控える。だけど…………」


 シロナとの約束は守る。しかし、それを破る条件を示唆しておく。


「だけど、俺が大切にしているものを傷付けようとしている奴が

 居るのなら、俺はそれを守るために遠慮無く使う」


 そこは譲れない一線なのだ。

 百合華との約束を守れなかった俺だからこそ、次こそはと思っていたのだ。


「分かりました。それで構いません」


 シロナからの了承が得られた事で、緊急時になら使っても良い事になった。


「これで、一通り終わりですね」

「分かった。貰ったこれらは、大事に使わせてもらうよ」

「はい。それと、拓斗さん」

「ん?………っ」


 シロナに呼ばれ、首を傾げると突然抱き締められた。


「ど、どうしたんだよ」

「私は拓斗さんがここを発った後、神界に戻る事になっています。そうなれば、拓斗さんとは声でしか語らう事が出来ず、簡単には下界に干渉する事も出来なくなります」

「まあ、仕方無いさ。神様のシロナが、こんだけ長く下界に留まっている時点で異常なんだ。だから、気にしなくて良いよ」

「ありがとうございます。何かありましたら、何時でもご連絡下さい。時間が許す限り観てはいますが、さすがに全部とはいきませんので」

「了解。まあ、元気でやっていくさ」


 俺達はひとしきり別れを惜しみ、俺はシロナが神界に戻るのを見送り、一年間を過ごした森の家をあとにする。


「えーっと。確か、こっちの方向に進めば街があるんだっけ」


 俺はシロナに教えられた方角に向かって進んでいく。

 道中で、様々な生き物を見掛けるが、気にせずにいると向こうの方が離れていくのでそこまで気にしないのは楽だ。

 だが、勿論ながら無害な生き物がいるのなら、そうでない生き物もいる。その代表的なのが、魔物だ。

 稀に姿を見るが遠くから魔術で狙い撃ち討伐する。その都度に回収しているが、ちょっと面倒になってきたので、見つけ次第威圧で追い払う事にする。


  そんな時だった。


「ガアアアァァァァアァァッ!」

「キャアアァァァァァッ!!」


 遠くの方から何か獰猛な生き物が咆哮する声と、若い女性の悲鳴が俺の下まで届いた。


「ッ………向こうかっ」


 俺は、咆哮と悲鳴が聞こえてきたと思われる方向を瞬時に見極め、魔力で身体強化でそっちに向かって走り出す。






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