表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/16

第14話

 ど、どうして領主様のご息女がここに!?

 いや、落ち着こう。ここでおじさんが慌ててたら、子供たちが不安がっちゃう。


「このアルカナ様がわざわざ来てやったんだから、ダイナ、あんたにはきちんと戻って業務してもらうからね!」

「待て、今忙しい」

「はぁ!? このアルカナ様を差し置いて忙しい!? ほんっとうに不遜な奴ね!」


 あわわわ。

 ダイナ君、領主様のご息女になんて言葉遣いを。

 不敬、不敬罪ですよ!

 騎士身分でもそれは駄目だって!


「まあ、アルカナ様は寛大なアルカナ様なので許してあげる。それで? その手に持ってる変な男は何」

「盗賊団の頭だ」

「ふぅん?」


 それだけ聞くと、アルカナ様はぐるりと周囲を一度見回した。

 その最中、一瞬だけおじさんの方で視点が止まった……気がする。いや、頭は下げてるので確認こそできてないけれど。


「なるほどなるほど。つまるところ、子供を手ごまに使ってる盗賊を捕えて、子供たちの扱いに困っていると言ったところね!」


 理解力がすさまじい。


「村長! 村長は誰!」

「わたくしでございます。エンビローグ伯爵令嬢様においてはご機嫌麗しく……」

「くどい! 私の事はアルカナ様と呼びなさい!」

「し、しかし……」

「二度は言わないわ」

「……かしこまりました。アルカナ様」


 お父さんが圧倒されている。

 これが、貴族の存在感。

 なんか違う気はするけれども。


「それで? この子供たちの処遇は決まっているの?」

「現在協議中でございます。数名はうちの村で受け入れられると思いますが、全てとなりますと……」

「難しいってわけね。ふぅん?」


 少しだけ間をおいて、アルカナ様はこれが最終決定だと言わんばかりに命令を下す。


「なら、あなたたちの村で保護できるだけ保護しなさい。後は私の方で周囲の村に一時的に保護するように命令を下すわ」

「それは……」

「これは決定よ。また、片割れの捜索についてはこちらで受け持ってあげる。ありがたく思いなさい」


 ……アルカナ様の決定は一方的で理不尽に聞こえるかもしれないけれど、多分、全て状況をわかった上で言っている。

 おじさんたちの村はもちろん、周辺の村もある程度人口、働き手を増やす余裕はある。

 だから、分散させればこの子供たちを受け入れる余裕はある。


 そのうえで、各村にスパイとして送り込まれた子たちの捜索は手伝ってくれるというのだから、破格の提案なのだ。

 この方、高飛車に見えて実はかなり思慮深い方なんじゃ……?


「それじゃ、その男こっちに引き渡しなさい」

「……ああ。俺がやるよりお前の方が適任だろう」

「まあちょっと廃人になる程度よ。アルカナ様の領地で賊をやったのだから、その覚悟ぐらいあるのでしょう?」


 ひえ。

 ひょっとして、さっきダイナ君が話してた知り合いってアルカナ様の事?

 とんでもない人と知り合いになってるじゃん!


「誰か! これを先に輸送しておいて」

「かしこまりました。アルカナ様」


 後ろについてきていた騎士の一人と思われる人が、ダイナ君から頭領を引き取って、そのまま連行していった。

 頭領さんは徒歩、騎士さんは馬なので、まあゆっくりな旅になるだろうけれど、これで逃げられて大暴れって可能性はなくなりそうだ。


「ダイナ、他に報告事はないわね?」

「ある。おそらく先ほどの盗賊は召集の最中だ。まだアジトに後で人員が来る可能性が高い」

「なら後でうちの騎士にアジトの場所を教えなさい。張らせてかたっぱしからしょっ引いてやるわ」


 テキパキと今後の段取りが決まっていく。

 その傍らで、子供たちが少しだけ怯えてるのが伝わってくる。

 また離れ離れになることに、恐怖しているようだ。


「大丈夫。村の間にそんな距離はないから、すぐ会えるよ」

「……本当?」

「本当本当。私なんて、しょっちゅう行ったり来たりしてたよ」


 笑顔で子供たちをなだめる。

 ……?

 なんか、じっと見られてる? 喋ったのが悪かった?

 すごい、こう、圧を感じる。


「ちょっと、そこの娘。面を上げなさい」

「は、はいぃ……」


 アルカナ様はなぜかこちらへ近づいてきて、じろりとおじさんの顔を見てくる。

 な、なんですかねぇ。おじさんはただの村娘ですよぉ~?


「ふぅん。この娘が件の」


 く、件のって何のことでしょう。

 おじさん、変な噂になってたりします?


「おい、アルカナ」

「様をつけなさいおバカ。それで? 上手くはいったの?」


 何の話かはわからない。

 けれど、アルカナ様とダイナ君の間では通じ合っているみたい。

 アルカナ様の問いに、彼がじっと答えないでいると、これは面白いとばかりに彼女は噴き出して笑いだした。


「あっはっはっは! これは最高ね! おバカ、ヘタレ、甲斐性なし!」

「ぐっ」

「あれだけの啖呵を切っておいてこの体たらく! 無様、無様としか言いようがないわね!」


 す、すごい笑いよう。

 というか、二人は親しいのかな。こんだけ言い合える仲だし。

 ダイナ君凄いなぁ。伯爵様の娘さんと親しいだなんて。


「『俺は故郷でやることがある』、だっけ? あっはっは! やることっていうのは盗賊退治だったってわけ? それはさぞかし立派な心構えだわ!」

「うるさい!」

「ほんっとうに傑作だわ。情けないったらありゃしない」


 ……し、親しいなぁ。

 忌憚なく言い合える仲ってことだよね。うん。


「あー、笑った笑った。で、戻ってくるんでしょうね」

「それは……しかし……」

「しかしじゃないのよ。あんたのせいでどれだけ迷惑被っているか理解できて? できないからここにいるんでしょうけれど」

「ぐっ」

「アルカナ様の嫌いなものは無能と愚か者。忘れたわけじゃないわよね?」


 ひえ。過激な人だ。

 やはりお貴族様というべきか、凄んだときの迫力が違う。

 おじさんが怒ったときの数十倍は迫力があるよぉ。


 再びアルカナ様はおじさんの方をちらりと見る。

 子供たちが腕の中で僅かに震えたのを感じたので、少しだけ腕に力を入れてしっかりと抱きしめる。


「……まあ、いいわ。一日待ってあげる」

「何?」

「村長! あなたの家に泊まるから、準備なさい。いつも使者が泊っている部屋があるわよね、そこを使うわ」

「で、ですがあそこはアルカナ様が泊れるほど大層な部屋では……」

「ふん! 野営すら完璧にこなすアルカナ様よ? 部屋の程度で私の眠りを妨げることなどできやしないわ!」


 す、すごいことを言ってる。

 え? でも泊まる?


「今晩だけれど、お前らはそこら辺で野営してなさい」

「はっ。アルカナ様の仰せの通りに」

「ついでに、ダイナからアジトの場所を聞いて人員を配置しておきなさい。補給線は後で村人と相談するように」


 テキパキと指示を出して、アルカナ様が一日滞在することは既成事実と化してしまった。

 え、ええぇー。

 何が起きているのこれは。


「さて……それじゃ、そこの。村長の娘、名前は?」

「はいっ!? えと、あの、カメリアと申します」

「カメリア。世話になるわね」


 なんでお父さんじゃなくておじさんの方なの?

 もう、何が何だかわからないよ~?

 でも、せっかくだからこれはお願いするチャンスかも。


「……申し訳ございませんが、発言を宜しいでしょうか」

「ふむ? 許可するわ。言いなさい」

「子供たちを休ませたいので、一度村の中に戻っても?」


 腕の中の子供たちは、長い囚われ生活でくたくたみたいだ。

 一旦お腹いっぱい食べてもらって、眠った方がいいと思う。

 アルカナ様が来てうやむやになりかけていたけれど、この子たちは救われたばっかりなのだ。


 再び、じっと彼女はおじさんの顔を見つめてくる。

 視線を逸らしたら殺されそうな気がして、おじさんも見つめ返す。

 すると、それまでの剣幕や迫力が嘘のように、柔らかに微笑んでくれた。


「許可するわ。お前ら、先に村人の手伝いをなさい。救出された子供たちの体調を最優先に」

「はっ!」


 ほっ、と一息入れる。

 やっぱり、この人は話せばわかってくれるタイプの人だ。

 高飛車っぽくて苦手なタイプかなと思ったけれど。いや今も怖いけれども。


「それじゃあ、今日一日よろしく頼むわね。カメリア」

「……ほえ?」


 子供たちを誘導して、村へ入り始めた頃、アルカナ様から声をかけられた。


「本日一日、じっくり話を聞かせてね?」


 そう言って、アルカナ様はおじさんの横を通り過ぎて村へ入っていく。

 ……ほえ? どういうこと?

 おじさん、なんか完全に目をつけられていませんか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ