聖なる歌、引き裂く声
少年たちの澄んだ歌声が、厳かに夜の空気を震わせる。
僕とミハイルが極上のソプラノで主旋律を力強く支え、クラスメイトたちが緻密で美しい和音を紡いでいく。
広場を埋め尽くした聴衆はうっとりとその美声に聞き惚れ、大聖堂の前はまるで神の降臨を思わせる神聖な感動に包まれていた。
前世の『私』も、この中世の絵画のような美しい光景に、脳内で深く感動している。
『う〜ん……。本当に素晴らしいわ、カース!これぞ音楽の力、これぞカストラートの真骨頂よ……!鳥肌が止まらないわね!』
何度も激しく頷きながら、惜しみない賛辞を述べる『私』。
だが――。
僕たちの歌声が最も美しい最高潮を迎え、夜空へ突き抜けようとした、まさにその瞬間。
予期せぬ悲劇が、僕たちを襲った。
――パパパパンッ!!! ドンッ!!!
「ひっ……!」
「な、何だっ……!?」
「うわあああああっ!!?」
突如として、鼓膜を引き裂くような激しい爆発音と、目も眩むような強烈な閃光がステージ上で炸裂した。
お祝い用の可愛らしい玩具とは明らかに違う、殺傷力すら孕んだ害獣駆除用の大型爆竹や、軍用の信号花火。
それらが、ステージの四方から悪意を持って、複数同時に投げ込まれたのだ。
「ミハイル、伏せてっ!!」
僕は本能的に隣にいたミハイルの身体を突き飛ばし、自らもステージの硬い床へと転がり込んだ。
無様に地に伏せながらも、歌手の命である目と耳、そして喉を手で必死に覆い隠して守る。
鼻を突く火薬の饐えた匂いと、視界を遮りもうもうと立ち込める白煙。
ただ事ではない異変を察知した聴衆の悲鳴と怒号が響き渡り、広場は一瞬にして地獄のパニックへと陥っていく。
「ゲホッ、ゲホッ!カース、無事かっ!?」
「僕は平気だ!それより、みんなは――」
破裂音が途絶え、周囲の状況を確認しようと恐る恐る顔を上げる。
視界を覆う煙が風に流され、徐々に薄れるにつれ、僕たちの目の前に広がったのは——。
この世の地獄。
あまりにも凄惨な光景だった。
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