深まる不協和音
「話は終わりだ。さあ、明日のレッスンのために早く寮に戻って喉を休めなさい。大事な大事な特待生殿」
失礼します、と蚊の鳴くような声で小さく一礼し、僕は逃げるように学長室を後にした。
重厚な扉が僕を拒むように音を立てて閉まる。
トボトボと暗い廊下を歩いていると、脳内の『私』が重いため息をついた。
『うわぁ……ド正論の皮を被った資本主義の闇を見せつけられたわね。学長の言い分も経営者としては100点満点だけど、これじゃ現場の問題は何も解決しないわよ』
((うん……。大人の都合でカストラートの予算は1リラたりとも減らせない。つまり、あのギスギスした対立を止める『システム的な解決策』は、完全に潰されたってことだ……))
重い足取りで部屋に戻ると、同室のミハイルが心配そうな顔で僕の帰りを待っていた。
学長への直談判が、あまりにも無惨な失敗に終わったことを包み隠さず告げると、彼は静かに、けれど折れそうなほど強く拳を握りしめた。
システムが変わらないのならば、僕たちに残された手段は唯一つ。
理不尽なまでの特権階級として過保護に扱われるのが現実だと言うのならば――。
その不当なまでの特別扱いに相応しい、圧倒的な『実力』と『成果』で以て。
周囲のすべての嫉妬と怨嗟を捩じ伏せ、強引に黙らせるしかないのだ。
だが、そんな決意を嘲笑うかのように、僕たちのあずかり知らぬところで、楽器科の生徒たちの不満はついに臨界点を迎えようとしていた――。
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