黄金の凱歌
それからの僕は、脳内で常に僕を導いてくれる『私』の的確な助言を道標に、傾きかけていたこの国の本格的な立て直しにすべてを捧げた。
かつて家族から理不尽にすべてを奪われ、身体を切り刻まれた経験があるからこそ、僕は国という巨大なシステムの歪みを冷徹に見抜き、容赦なくメスを入れ続けることができたのだ。
「国家の血を吸うダニどもは、一匹残らず排除しなければならない。……まずは、ここからだ」
僕が最初に着手したのは、隣国からの潜在的な脅威に対抗すべく、軍部の抜本的な強化として『国民皆兵および5年間の徴兵制度』の確立だった。
さらに、国力を根底から底上げするための『義務教育の導入』と、平民を苦しめていた不公平極まりない『税率の全面的な改善』。
しかし、ただ社会を締め付けるだけでは民衆の不満が募る。
張り詰めた社会に潤いを与えるため、僕はたまに大規模な歌劇場や美術館を新設し、自らもステージに立ち、国民に極上の娯楽を提供する政治的パフォーマンスも忘れなかった。
「ああ、見てごらん。カース様がまた新しい歌劇場を建ててくださったぞ!」
「カース様万歳!あのお方こそ我が国の救世主だ!」
民衆は僕の施政に熱狂し、僕を『世紀の賢人』と崇め讃えた。
けれど、僕が成し遂げた最大の、そして最も過激な改革は、これまでの歴史をすべて覆す『憲法の再構築と貴族制度の完全な廃止』、そして『政教分離』だった。
かつて僕たちを家柄という理不尽な鎖で縛り、最愛の母上を殺し、僕の身体を奪った『貴族』という特権階級。
彼らはその不当な特権と領地をすべて剥奪され、ただの『少し裕福な庶民』へと引き摺り下ろされた。
神の権威を政治の道具にして甘い汁を吸っていた教皇庁も、その牙を完全に抜かれたのだ。
当然、これほどの大改革がすべて順風満帆だったわけではない。
義務教育や徴兵制度の制定によって一時的に若年労働者が現場から消え、国の財政や現場が激しく混乱した時期もあった。
「カース様、各地方のギルドや農村から怨嗟の声が上がっております!若者が教育や軍に取られ、人手が全く足りないと……!」
執務室で報告を聞き、眉をひそめる僕の脳内で、『私』が力強く、毅然とした声を響かせた。
『一時の混乱に怯えてはダメよ、カース。子供たちに学びを与え、全国民の基礎能力を底上げすることこそが、数十年後のこの国を支える絶対的な礎になるわ。目先の赤字なんて気にする必要はないの。足りない分は、教皇庁の隠し財産から上手く補填して回しなさい!』
((ふふ、本当に頼もしいな。『ミーナ』の言う通りだね。教育こそが、国家における最大の国力だ))
『私』の未来を見据えた予言は、数年後に完璧に的中することとなる。
十数年の時が経つ頃には、幼少期から高い教育を受けた若い世代が社会に進出し、産業や技術の面で驚異的な生産性を発揮し始めていた。
かつて滅びかけていた我が国は、周囲の大国を遥かに凌駕する、未曾有の『経済大国・軍事大国』へと奇跡的な進化を遂げていたのだった。
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