優しい嘘
僕はジンジンと痛む両頬を自嘲気味に押さえながら、脳内で『私』と苦笑を交わした。
『ほらね、言ったでしょう?ジュリアスのことなんて正直に話してたら、今頃張り手じゃ済まなかったわよ』
((手厳しいね……。でも、確かに『ミーナ』の言う通りだ))
僕は心の中でそう呟くと、あらかじめ用意していたカモフラージュ用の建前を、消え入りそうな声で口にした。
「……ごめん。本当にごめんなさい。……実は、先の戦争で生き残った親帝国派の残党たちが、僕と、僕の周囲の大切な人たちを暗殺しようと動いているという確かな情報を掴んだんだ。だから、君たちを遠ざけて安全を確保した上で、彼らの本拠地へ赴いた。……新皇帝であるレオンハルトと直接交渉をして、完全に話を着けに行っていたんだよ」
それは、完全な嘘というわけではなかった。
親帝国派の北部領主たちを裏から処理したのは事実だし、彼らとレオンの間に不穏な繋がりがあったのも本当のことだ。
ただ、その過程で実の弟を地獄に突き落として徹底的に磨り潰してきたという、一番ドス黒い部分だけを綺麗に削ぎ落としたに過ぎない。
「どうしてそんな大事なことを、いつも一人で背負い込むんだ……!僕たちは、君の盾にだって、剣にだってなると誓ったはずだろう!?」
ミハイルは未だ納得がいかないというように、悔しげに拳を強く握りしめて僕に詰め寄る。
その熱い瞳が、僕の歪んだ胸をほんの少しだけ締め付けた。
「……ごめん。でもね、ミハイル、アイシャ。僕は君たちを絶対に巻き込みたくなかったんだ。たとえ二人に一生恨まれることになったとしても、嫌われることになったとしても――閉じ込めてでも、僕は君たちを守りたかった。それだけは分かってほしい……」
僕のその、消え入りそうな、けれど本心からの言葉に、ミハイルは毒気を抜かれたようにふっと視線を落とした。
二人を守りたいという執念だけは、何一つ偽りのない、僕の真実だったからだ。
その純粋な響きが、まっすぐな彼らの心に届いたのが分かった。
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