呼応
その最後通牒の末尾に記された、全権署名欄。
大陸を支配する『ABC同盟』の各国首脳陣の署名と並び、最上段に輝く『カース・ディ・トラッド』の名を目にした瞬間――フラネル共和国の首都に囚われていた『権天使』が一角、ミハイル・ド・ポルネーはすべてを察した。
「カース……!本当に生きて海を渡り、そこまでの力を手に入れたのか……!」
戦況は完全にひっくり返った。
ミハイルの行動は迅速だった。
彼は僕が送りつけた勧告の意図――「外圧をかけるから、内側から食い破れ」という無言のメッセージを完璧に汲み取り、共和国内に潜伏していた『反帝国派』の貴族や軍人たちと秘密裏に接触、電撃的に団結した。
さらに、世界最強の『ABC同盟』と全面戦争をすれば国が滅ぶと、帝国と心中することを恐れていた『中立派』の有力者たちを言葉巧みに調略し、味方へと引き込んでいったのだ。
「これ以上の帝国への盲従は、『ABC同盟』による我が国の滅亡を意味する!今こそ不当な同盟を破棄し、我らの手に自由な共和国を取り戻すのだ!」
ミハイルの魂を揺さぶる演説は彼らの愛国心に火をつけ、それまで日和見を決め込んでいた中立派の軍閥が次々と彼の元へ合流。
そしてついに、ミハイルは共和国内での正義の『挙兵』に成功した。
これにより、フラネル共和国は一瞬にして【親帝国派】VS【ミハイル率いる反帝国派】の激しい内戦状態へと突入。
ローデンブルク帝国にとっては、背後を固める盾であり、貴重な兵站源となるはずだった同盟国が、外からの弾丸一発打たれぬまま、文字通り『内側から崩壊・機能停止』に追い込まれた瞬間であった。
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