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カストラート 〜傾国の歌劇(オペラ)〜  作者: nhhtn
動乱編

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神託の秘密


こうして、歴史の転換点において電撃的に結成された『ABC同盟』。

しかし、その奇跡的な成立の裏には、カイロネイア神王国の使節たちが喉元に刃を突きつけられたような思いでひた隠しにしていた、もう一つの『絶対に表沙汰にできない国家的秘密』があった。


「カース殿……。実は、我が国がこの同盟にこれほど素早く電撃参加したのは、単に地政学的な危機感からだけではないのです……」


祝宴の夜。

ブリタニアの極上ワインが振る舞われる華やかな喧騒から離れた僕の客室に、神王国の全権大使が、今にも卒倒しそうなほど真っ青な顔をして忍び込んできた。


「我が国の最高神、『イジェプタ』の神託が下ったのです。曰く――『海の主らと手を結び、天の声を導く若子を支えよ。さもなくば、千年の歴史を持つ我が神王国は一瞬にして灰塵と化さん』と……」


カイロネイア神王国にとって、最高神イジェプタの神託は『絶対』だ。国の全方針を決定づける神の言葉は何よりも重く、これに背くことは文字通り国家の死を意味する。


「それなら、何も問題ないじゃないですか。神様が直々に『今すぐ同盟を結べ』って、お墨付きをくれたんですよね?」


僕が小首を傾げて尋ねると、大使はさらに顔を苦悶に歪め、ついにガタガタと膝を震わせ始めた。


「問題は大ありなのです……!その神託の下ったタイミングが、あまりにもこの同盟締結の直前すぎた!我が国の厳格なる最高法典では、下された神託は聖都の神殿で『一ヶ月間の神聖な清めの儀式』を経た上で初めて、厳密に民へ『公式発表』されねばならんと定められているのです!しかし、迫り来る帝国の脅威は一刻を争う……。私たちは……私たちは国家滅亡を恐れるあまり、神託を民に公開する手続きを全てすっ飛ばして、超法規的措置で同盟を結んでしまったのです!」


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