歴史の奇跡:予定外の『ABC同盟』
彼らは謁見の間に駆け込んでくるなり、国王陛下と、使節として同席していた僕たちの前で、普段の傲慢さをかなぐり捨てた悲壮な声を上げた。
「……対岸の貿易相手であった王国が、ローデンブルク帝国のあくどい罠によって一瞬で蹂躙されたと聞き、我が神王国は戦慄いたしました。帝国の次なる侵略の標的が、広大な砂漠の利権を握る我が国であることは、もはや火を見るより明らかです!」
青ざめた顔で訴えていた神王国の使節は、ふと僕の顔を見た瞬間、ハッと信じられないものを見たかのように目を見開いた。
「おお……!もしやあなたは『SMPC音楽院』の……!?ロムルス教会が認めた『権天使』の筆頭が、この同盟の中心におられるとは!これぞ、これぞまさに神の御導きだ!アルゴスよ、そしてブリタニアよ!我がカイロネイア神王国も、その同盟に加えていただきたい!軍資金と、我が国が太古より積み重ねてきた門外不出の叡智、いくらでも提供しよう!」
これにはさすがの僕も、脳内の『私』も、完全に目を見開いて硬直するしかなかった。
『……ちょっと待って、これって現代日本の世界史で言うところの、「地政学的な恐怖による連鎖反応」よ!宿敵同士だった二大国が歴史的大転換をしたのを見て、パニックになった周辺国が「うちも仲間に入れて!」って全力で飛び込んできたのよ!』
((よ、予定外の展開だけど……これって、僕たちにとって最高の結果じゃない!?))
アルゴス=カスティエラ連合国の誇る、莫大な財力と無敵艦隊――(A)。
ブリタニア諸王国が誇る、世界最強の海軍力――(B)。
そして、カイロネイア神王国が秘蔵する、圧倒的な技術と資金力――(C)。
僕が囚われの母上を救うため、必死の思いで海を渡って紡いだ小さな旋風。
それは気づけば、世界の覇権を握る三大国を一つに結びつける、誰も想像し得なかった歴史的な大奇跡を成し遂げていた。
ここに、対ローデンブルク帝国包囲網——。
後に世界史へ永遠に刻まれることになる、世界最強の巨大軍事協定『ABC同盟』が、一人の少年の手によって成立したのである。
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