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第一章 二人は死んだ

昨日は姉と一緒に食べた某チェーン店の弁当を食べましたよ


 第一話 エンドロール(柊 東)


 呆然と立ち尽くしていた。

 まるで体が動かない。全身に筋トレ用のウェイトを巻き付けられているようだ。

 目の前にいる、母親が何か言っているが何も・・・聞こえてこない。

 ただ、金魚が口をパクパクとしているように見える。

 あぁ、これがショックというやつくなんだな。

 これが、悲しみなんだな。す

 頬を伝っている涙の感覚がうっすらと感じる。

 そこで、自分が泣いていることに気がついた。

 母親の顔が近い。俺の肩に手をかけて揺すっているようだけど、それすら、今の俺には感じない。

 でも、冷静にこんなことが思える自分がいる。自分がいる?そうだ。

 俺はここにいる。あいつは?

 え?、あれ?

 止まったと思っていた涙が再び流れ出した。

 いや、本当に止まっていたのか?

 止まっていた事は勘違いで、実は相変わらず流れていたのではないか?

 その流れが勢いを増しただけじゃないのか?

 景色がモノクロに見えてきた。

 涙で霞むはずの景色は鮮明で、でも、色が抜けていく。時折、白と黒が反転する。

 気持ち悪い・・・。

 今日、幼馴染みからもらった、大事な大事な、昼食が滝登りの鯉の如く、食道を伝って口の中に広がる。

 胃液の酸味と消化中の食べ物が放つあの独特な鼻を指す臭いが溢れてくる。開け!開け!、と、責め立てる。

 我慢などできず、俺は膝をついて盛大に玄関で汚物をぶちまけた。

 そこでやっと、母親の声が耳に入るようになった。

「大丈夫!?ねぇ!!」

 必死に俺の背中を擦りながら、姉の雅の名を叫んだ。

 すぐに駆け足が聞こえてくる。

 驚く声が聞こえた。そして、また駆けて行った。

 俺は顔を上げることが出来ない。さっきから同じことが頭の中でグルグル回った。その度に嗚咽をあげる。最初の2・3回までは形あるものが出てたが、それ以降は、胃液しか出てこない。

 また、足音が聞こえる。おそらく雅のものだろう。

 俺が撒き散らした汚物を、雅と母親が拭いていく。靴も片付け、汚物がついた靴は、全部洗うためか、玄関を上がってすぐにある脱衣室に放り込まれる。見ていないが二人の会話から分かる。でも、頭に入ってこないから、直ぐに分からなくなる。

 一通り終わると、俺の服を脱がせていく。

 雅と母親は俺に優しい言葉をかけてくれるが、耳障りでしかない。

 俺は二人を押し退ける。二人はぶっ飛び、雅は尻餅をついた。

 でも、今の俺には何も感じなかった。ただ、ただ、見下ろす。

 頬になにかが当たった衝撃を感じた。俺は無表情のまま、頬に手をやった。痛いという感覚はない。

 生まれてはじめて、暴力を嫌う母親に頬を叩かれても、何も感じなかった。

 俺は汚れた制服をその場で脱ぎ捨て、カバンを片手に2階の自室に無言のまま上がって行った。

 その後ろ姿を母親と雅は黙って見送った。

 机、椅子、カーテン、ベッド、クローゼット、電気スタンド、好きなバンドのポスター、本棚、エアコン、ベランダのある窓・・・。最後に・・・時計。

 何も変わらない景色。それでも、時計の分針は、秒針は、こちらの事情などお構い無く進んでいく。無慈悲だ・・・、不条理だ・・・、理不尽だ・・・。

 そんなことを、頭の中で、まるで壊れたCDプレイヤーの様に繰り返した。

 また、頬を伝って落ちていく涙を感じた。もう、疑問にも思わない。

 この涙が何時から流れていたのかなんて、意味のないこと。

 隣の家に繋がる窓に視線を送る。

 おばさんは、どうしているんだろう?

 隣の家には誰もいない様だ。

 あぁ、これから先、あいつが出入りすることもなく、俺が出入りすることもなく、あいつが朝、窓を開けて起こされることもなく、あいつに気を使って、いかがわしい本を見ることもなく・・・。

「なんだ、良いこと尽くしじゃないか。」

 アハハハハ、と、乾いた、棒読みの様な笑い声を上げる。おもしろくもなく、不愉快でもなく、ただ、ただ、無感情を求める。

 逃避を始める。

 そうさ。あいつは初めから居なかったんだ。

 毎年、二人の誕生日を祝ったり、律儀に手作りのチョコをくれたり、世話焼きで、その癖おっちょこちょいで、口に出したことは無いがクリクリとしたかわいい二重瞼にサラサラストレートの長い艶やかな髪。それだけじゃない。おばさんのいつも優しい眼差しも、おじさんのおっとりとした物腰で、気が付くと傾いている眼鏡も、全部俺の妄想だ。夢ならそのときは幸福な夢でも、今はその所為で悪夢に感じる・・・、いや、悪夢に何て、言葉で言い表せられるもんじゃない。絶望夢(ぜつぼうむ)とでも呼べばいいのか?

 さっきまでの、線路沿い二人の影もなかった。

 買い物があると俺が別れた何て事もなく、その後、あいつが車に引かれたなんて事もなく、それを帰宅後、母親の口から死んだ何て言われたことも無い。

 そうさ。あいつって誰だ?

 俺は・・・、誰だ?

 机の上に視線を送る。そこには、小学生の頃に書いた、下手くそな家族の絵が、貼ってる。そこに名前が書いてある。

 あぁ。俺の名前は柊(ひいらぎ) 東(あずま)だった。



第二話 エンドロール(柏 南)


 私は身を震わせている。頭の中は真っ白で、目の前の現実を確実に拒否している。

 これはおかしいよ。明日になれば元通りになるよね。

 でも、目の前にあるのは現実で、けして覆らない。

 何で彼は死ななければならないの?彼が何をしたの?ねぇ、教えてよ、神様・・・。

 そんな空を切る質問に回答などなく、一般的に言えばこうだろう。

 運命、宿命、定め、天寿・・・。

 何とも簡単な言葉で、片付いてしまう。

 否、それだけ重みのある言葉なのだろうか? 

 言葉の重み=命の重み?

 何かの話しで、聞いたことがある。魂には重さがあるそうで、人により値は違うけど、3~10グラムとの事らしい。

 物理的には軽いけど、精神的にはかなり重みのある値だ。

 あれ?、私は何でこんな事を考えていたんだっけ?

「君!君!」

 男の声が聞こえた。振り替えると30代ぐらいの警察が私に話しかけている。

「君は、怪我はないか?」

 私はなんの事かわからず、首をかしげる。

 怪我?。

 私は自分の服を見て、息を飲んだ。

 この血は何?何で私は血だらけなの?

 頭によぎるのは、ほんの数分前の記憶。


 線路沿い伸びる二つの影、確かに聞こえていた声。

 雲が時折覆う夕陽。でも、天気は悪くはない。

 今日も屋上で言えなかった。

 それでも東は気に止めることなく、何も言わない私に、付き合ってくれた。

 否、気に止めることなくでは無いかも知れない。気を止めて、使ってくれたからかもしれない。

 そんな風に罪悪感と不甲斐なさと上手く言い表せられない感情を、慰めてみる。

 夕方だから、私達同様、家路を辿る人達がポツポツ歩いている。

 自転車に乗った、主婦は買い物の行きか?、帰りか?。

そんな下らない事を私は考えているのも、露知らずの東は、また、他愛もない話を、私に向かってする。

 私の気も知らず・・・、いや、知っての口数だろうか?

 思春期は本当に面倒だな・・・。何でこんなに無意味に思考してしまうのだろう?

 この気持ちも言動も覆せない善き思い出になるのだろうか?

 そうだ。明日こそ伝えよう。東への想いを。支離滅裂に何の前触れもなく思っていた。そして、何の前触れもなく現実の波は大きく私達の・・・、ううん、私の心を切り裂いた。

「南!!」

 東の呼び声に反応したときには、何かの衝撃が私をぶっ飛ばした。尻餅をつくと同時に、何かが地面に衝突する鈍い音が鳴り響き、それは衝撃となり、地面を揺らす。それだけじゃない。何かが私に降り注いだ。

「雨?」

 私は顔を上げ、絶句する。

 言葉が出てこない。

 数秒後、私に降り注ぐ液体は止んだ。

 バサリと、液体を噴出していた、東の体が倒れた。

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。

 悲鳴すら出ない。深く首を切った東が倒れている?

 あぁ・・・。これは血なんだ。

 何で血を浴びてるのかな?

 東の横に深く地面に突き刺さっているIの字の鉄の棒。

 まだ、ピクピクと、痙攣を起こす東の体。

 次第にその動きは萎えて行き、間隔をあけて、だんだん動かなくなっていく。

 私は空を見上げた。

 地域の発展を願い、建設されているデパート。薄い編み戸状の段幕が破れ、風と戯れている。

 私達を見下ろす数人の人影。ヘルメットを被っているところを見ると、工事の作業員であることは容易に理解できる。

 なぜだろうか?、はっきり見える。数人の顔が青ざめ、絶望、恐怖、呆然、唖然、絶句。

 彼らの表情が面白いほどよく見える。

 私は立ち上がり、血の池に倒れている東を・・・、東だった東の体を・・・、見下ろす。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 無言・・・。いや、無音だった。

 何もかもが止まったかのように音が聞こえない。

 視界・・・。これは、無視だった。

 見えているのに認識が出来ない。

 これは夢だ・・・。 リアルだ・・・。

 アハハハハ。あはっ。アハハハハ。

 私は口に出していたかは分からないけど、少なくても、心の中では狂気も幸福も感じない、乾いた、棒読みの様な笑い声を発して、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、と、壊れた蓄音機のように繰り返していた。

ありがとう!!

君は何番目の読者さんかな?

面白かった?つまらなかった?

まぁまだまだ一章だし、勘弁ね

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