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異変

ヘンリー骸骨が加わったことで骸骨集団に変化が発生した。

その骸骨軍は集団行動を取り勢力を拡大していきます。

 確かにアンソニー達は無事に馬車までたどり着き帰路についた。


 が、しかし、ヘンリー骸骨が周囲の骸骨に影響を与えだし、次第に集団としての集合意識、或いは個々の骸骨たちが持っていた意識が合わさった一つの総合体が出来上がった。


 その意識は、『拡大せよ!』と言う、今まで単に有るだけもものが、自己主張しだし、他のものを自己に含めようとする侵食作用を発揮しだした。


 総合体は、

『食らえ! 食らい尽くせ! そして殺した後に仲間にせよ!』

 個々バラバラだった意識が寄せ集まると、強大な決意力、広大な認知力、そして壮大な活動力をもって動き出した。


 その変化で周囲にはおぞましきことが起こりだした。


 草原の化け物どもはまず周囲の統制から始めた。


 化け物達にとっての人族は餌としての認識しかなく、征服する対象になっていなかった。それで手始めに森林一帯に生息する獣を誘き寄せ様子を探ることにした。


 これが功を奏したのか、いつも通り獣たちは何の疑いも持たずに草原に入ってきては無造作に殺害された人肉に食らいつこうとした。


 が、そこから何時もと違ったことが起こった。

 骸骨たちが獣を襲いだしたのだ。襲っては食らい、襲っては食らっていった。しかし、肉を全て食らい尽くすのではなく、残した肉で再び獣を誘き寄せるという、人間が使う罠のような使い方をしていた。


 しかし、不思議なことにその骨となった獣が、骸骨のような現象が起きたのだ。つまり死んだ獣の体から、なにか得体の知れないものがでて、それが集合体となったとき、白い靄のようなもののかわり、何時しかその靄が骨となった獣に憑依したのだ。


 こうして骨の獣ができあがった。そして、その数がおびただしいのだ。そしてその骨だけになった獣が、やつら、人間の骨の化け物に従っていた。

 そう、確かに獣の骨の集団も、人間の骨の総合体に吸収され、一つの意識体である総合体となったのである。


 これは見るからにおぞましい光景に違いない。


 それに気をよくしたのか骨の化け物達は次なる標的を探しに、まるで兵隊蟻のように草原を後にしていった。


 当初、他部族の化け物を襲ったが、肉を取り除いた骨だけとなっても、草原のような現象が見られなかった。それで、骨達も考えたのだろう。草原の主要な要素である草と土、それに石などで草原をその場で復元してみたところ、まさしく草原と同じ、得体の知れないものが出現し一塊となれば白い靄に変わり骨だけとなったものに憑依するのだ。


 骨だけの軍団が徐々に形成され、その勢力が侮れないほどになっていった。


 草原に接していた森林地帯を抜けると神聖な山々からなる山脈が遠くに見える。ここからは岩場が多く、樹木は天候の所為か背丈の低いものしか育っていない。人間の足ではとても踏み込める場所ではなかった。


 しかし、疲れを知らない骸骨であればまさしく兵隊蟻の行軍のようにじわりじわりと進んでいけば、何時しかこの地に君臨する竜族と遭遇することができる。

 そう指揮系統が判断したのだろう。骸骨集団は恐れを知らずに進み出した。


 その先鋒を獣の骨軍団が勤めた。さすがに獣の骨格とあって、人間の骸骨より何倍もの早さで移動していった。


 そして最初の竜族を発見したと、獣の骸骨たちが戻ってきた。その獣の話だとはぐれものらしく一匹で行動しているたしい。


 それで指揮系統は竜族の能力値を知ろうと、獣に取り囲ませた。


 発見した竜族はティラノサウルスに形態が似ていた、が、巨大な頭部を持ち永年の生物とあって知能は人間の比ではない。


 しかしながら、彼らにも弱点があった。それは人間のような貪欲なまでの知性の探究も、能力の開発も怠ってきたと言うことだ。

 もっとも怠慢になるのも無理からぬ程の存在感であったのは確かだ。


 彼らを殺しうる生物は今までに無かったからだ。


 その危険が今間近に迫っていた。


 彼ら骸骨集団の取った作戦はすこぶる単純だった。まず始めに獣が数匹で襲いかかり、少し移動しての集団戦に発展させ、竜族の実力を見極める。


 この時、あまりにも竜族が強敵だった場合、戦闘に加わった獣骸骨たちは見捨てる算段だった。

 が、竜族を倒せると計算が立った場合、総攻撃を仕掛けるつもりでいた。


 初手の獣骸骨たちが数匹でティラノサウルスに襲いかかった。


 当然だが、竜族は肉体であるが故に肉を食する。この骸骨のように生気を吸い取ると言った手段で自己の霊力を向上させることはしない。だから、獣の骸骨に襲われても嬉しくはない。何しろ単なる徒労に終わるだけだからだ。


 だが、この獣の骸骨たちは執拗に攻撃してきた。


 普通、二三噛みつけば無駄だと理解しきびすを返すのだが、この獣たちは諦めが悪い。


 それでティラノサウルスも本気で怒り出し、踏みつけようとしたり、かみ砕こうとしたりと攻撃に打ってでた。


 そうすると獣骸骨たちは一斉に逃げてなのか、移動し始めた。そしてそこには大量の獣骸骨が待ち受けていた。


「がぉぉ!!!」


 と、ティラノサウルスが威嚇をした。


 それにも恐れずに飛びかかっていく獣骸骨たち。


 その合間を縫って、つまり、ティラノサウルスが気付かないうちに人間型骸骨が襲いかかっていた。

 そして人間型骸骨はティラノサウルスの生気を吸い取っていくのだ。


「ぎゃぁぁん???」


 と、ティラノサウルスは自身の異変に気が付き、身を翻して確認した。


 そこには獣骸骨だけではなく、人間型骸骨も混ざっている。


 その異変にティラノサウルスが自身の愚かさに怒りが爆発した。


「ぎゃぁぁぁ!!!」


 凶暴化したティラノサウルスは辺り構わず踏みつけたり、かみ砕いたりして出した、が、獣も人間型もその数においては途方もなかった。


 これは兵隊蟻に襲われたトカゲそのものだった。トカゲも兵隊蟻でも数体、或いは十数体なら問題無く倒せる。が、これほどの無限ループ状態だと疲れが出てくる。その上、生気を吸い取られていてはいずれは先が見える。


 それでティラノサウルスは普通は使わない霊力を使い出した。


「シャイニングサン!」


 瞬間にティラノサウルスが光源体となって輝いた。

 その眩しさで骸骨たちの動きが止まり、さらに、


「ライトニングボンバー!」


 このティラノサウルスはまめな性格らしい。それとも念には念を入れるタイプなのかもしれないが、周囲に電撃を飛ばし、さらにその電撃で爆発させたのだ。

 これでは備えをしていない、または、電撃に耐性がない骸骨たちはひとたまりも無い。


 しかしながら、このティラノサウルスの電撃の範囲が極端に広くはなかった。そこそこの範囲であったために、その外部の骸骨たちは無事だし、強力な能力を持った骸骨も無事でいた。


 自分が放った電撃で無事なものがいたことにティラノサウルスは驚きと共に、相手の素性を掴んだと自覚したのか、最大限のパワーでの攻撃に切り替えた。


「フェードアウト!」


 生き残った骸骨たちと、範囲外にいた骸骨たちが群がる前に、ティラノサウルスは自分の周囲を真っ暗にした。

 そして身動きが鈍った骸骨たちに、


「ウェザーコントロール・サンダーボルト!!!」


 このティラノサウルスが放った魔法は先ほどとは打って変わって、超自然現象を利用しての電撃魔法だ。だから超広範囲にまで落雷させることができる。


 しかしながらティラノサウルスにとって場所が悪かった。ここは草原ではなく所々に木が植わっていた。それで自然現象の落雷では、骸骨に直撃するより樹木に落ちることの方が多かった。それでもかなり広い範囲に落雷したため、電撃に抵抗がない骸骨はその場で消滅した。


 戦況としては、ティラノサウルスは真っ暗な球体内部に、骸骨たちはその外にいた。


 その骸骨たちは、真っ暗な球体から出て明るい外で待機せざる得ず、落雷を他のもので避けたり、自身に耐性を持たせたりして凌いぎ、そこからの反撃を狙っていた。


 この状況に業を煮やしたヘンリー骸骨が、ティラノサウルスと同じ魔法、

「シャイニングサン! &、フェードイン!!!」

 を放ち、真っ暗な球体を消滅させた。


「がぁぁ????」


 驚いたのはティラノサウルスだ。まさか骸骨どもに魔法が使えるとは思っていなかった。それに対処する前に、自身に飛びつかれる骸骨どもに戦き身震いし始めた。


 その瞬間的隙にヘンリー骸骨は、

「呪怨!!!!!!」

 この恐ろしい術は、骸骨であるヘンリーにとって常しえに憎悪の対象となる、肉であるティラノサウルスに掛けた最高級の呪いである。


「ギャォン?????????????????」


 ティラノサウルスにとったらどこまでいっても疑問しか湧いてこないこの状況だ。


 まさしくおぞましき怨念としか言いようがない。


 ティラノサウルスが地べたにへばりついているのだ。


「ガァギャァァアンンン???」


 身動き一つ出来ず這いつくばるティラノサウルスは、骸骨たちに生気を吸い取られ、尚且つ肉を食われていくのだ。


 この状況を見ていると、蟻に群がられた羽がもげた蛾の気持ちが良く分かる。


 全身を骸骨で覆い尽くされ、体を左右に揺すり払いのけることも、僅かばかりに身震いし食われるのを遅らせることすら出来ずに、ただ食われていくのを実感するしかない、これほどの苦痛もないだろう。


 徐々に頭部の皮が剥がれ、肉が露出するも血は流れない。血について言えば、流れ出る前に骸骨たちが吸い取ってしまうために外に流れ出ることはない。

 一番早くに骨格が露わになったのはやはり頭部だった。


「ガリィィィガリィィ!!!」


 骸骨たちの歯が、ティラノサウルスの骨を削っている音が聞こえてくる。


 その音を頭部の頭蓋骨を通し聞いているティラノサウルスは断末魔のように、

「わしを倒しても喜ぶなよ。わしなど雑魚と思えるような強者がわんさかいるんだ」


 しかし、ヘンリーは感情もなく、

「それでもお前を食えば、こちらはその分強くなれる」

 と言ってヘンリー骸骨も襲いかかった。

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