35 初仕事⑩作戦
「死ねぇぇっ!」
バフマンが斬り込んでくる。
(纏は――火炎か)
俺はザカーハの根元で剣を受ける。
バフマンの剣には燃え盛る炎の纏。
刀身が短い分、放射熱が俺の腕を炙る。
「なんだ、この哀れな魔剣はっ!?
こんなもので俺を斬るつもりかぁっ!」
バフマンが俺の折れた魔剣を見て言ってくる。
「正直、それは同意なんだよなぁ」
「ふざけた野郎だっ!
纏え、不知火っ!」
バフマンの剣が、青白い炎となって、消えた。
俺はバフマンの攻撃を読んで、剣を置く。
俺の剣は不可視になった炎の剣を受け止めた。
そう、「止め」だ。
「ぐっ!?」
動きを止めたバフマンに、
「纏、螺旋光!」
切断の纏をかけたザカーハを振るう。
「ちぃっ!」
ザカーハの折れた剣先がバフマンの胸甲を裂いた。
(刀身があればバッサリいけてたな)
バフマンが飛びすさって俺を警戒する。
「なんだ、おまえは……
未熟なホーリーナイト?
だが、奇妙なほど老練だ。
拝剣殿での殺気もおまえだろう?
そうか、転職か」
「よくわかったな」
「タネがわかれば簡単なことだ。
纏え、延焼っ!」
バフマンが剣を炎に包んで斬りかかる。
今度は、止めない。
「弾くっ!」
ザカーハがバフマンの剣を弾く。
なぜ止めなかったのか。
バフマンの纏が延焼だからだ。
延焼は見た目は火炎とそっくりだ。
だが、性質が違う。
火で炙り、焼き切る火炎。
火を燃え移らせ、焼き尽くす延焼。
延焼を止めては、火を移されてジ・エンドだ。
「しゃらくさいんだよ!
不知火っ!」
不可視の炎剣を止める。
が、直前でバフマンは剣を引く。
そして、
「斬技――爆ぜろ!」
ファイアナイトの攻撃技「爆ぜ」。
俺は盾で受け止めた。
にもかかわらず、
「ぐおっ……!」
数メルロは吹き飛ばされた。
態勢を崩す俺に、
「巡、爆速っ!」
バフマンの足元が爆ぜた。
爆発的な勢いを得て、バフマンが俺に迫る。
纏は火炎。
突進が早すぎ、纏は基本形になったと。
「止める!」
俺はバフマンの一撃を受け止めた。
バフマンはそのまま押してくる。
この状態で「爆ぜ」はない。
だが、
「纏――業火!」
「ぐおっ!」
火炎の上級版に当たる纏、業火。
魔剣を包む炎が膨れ上がる。
炎がザカーハを握る俺の右手を呑み込んだ。
「どうだぁっ!
そのチンケな魔剣じゃ耐えられんだろうが!」
「ちっ、震撃っ!」
俺は左手の盾で技を放つ。
震撃。
重い衝撃で相手を吹き飛ばす攻撃技だ。
だが、バフマンはその衝撃を半身になって流す。
その回転を利用し、
「爆ぜろっ!」
攻撃技で斬りつける。
盾は震撃の態勢で使えない。
「弾く!」
バフマンの魔剣とザカーハが衝突、爆発した。
結果は、痛み分け。
俺とバフマンは距離をとって再び対峙する。
(くそっ……長引くとキツいな)
バフマンの纏の威力が上がっている。
サリーが少し話していた、「勢」というものだ。
魔剣は属性ごとに特定の行動によって威力を増す。
ダークナイトは攻撃を当てることで。
ホーリーナイトは味方をかばうことで。
勢が上がり、纏や巡の威力が上がるのだ。
ファイアナイトの勢は、火を使うこと。
ファイアナイトは纏で攻めるだけで勢が上がる。
まさに「燃え盛る火炎の剣」というわけだ。
一方、こっちはホーリーナイト。
しかも、今はかばえる味方がいない。
したがって勢が一切上げられない。
@俺の左腕が鈍く疼いた。
(待てって。
@こんなの相手におまえを使うのはもったいない)
@この程度で使ってたら何も守れないだろう。
@ホーリーナイトとしては手詰まりではあるが……。
だが、焦れたのは向こうも一緒だったらしい。
「厄介な野郎だな……。
なんのかんの凌ぎやがる。
おい、ギャリス!
てめえ、遊んでねえで、奴隷を亜竜に喰わせろ!」
バフマンが動けずにいたギャリスに言った。
「へえっ!? なんだってこの状況で!?」
「こいつは正義の味方らしいからな!
目の前で人が食われりゃケツに火がつくさ!」
「な、なるほど!
おい、てめえ、てめえだよ!
諦めて竜の口に入りやがれっ、オラァ!」
ギャリスが竜の前に転がってた奴隷をけしかける。
「やめろ!」
「やめてほしかったらおまえから打ち込んでこい!」
「ちっ……!」
わかってやがるな。
ホーリーナイトは攻めに向いてない。
巡で身体強化はできるが、それも守り向き。
纏や攻撃技も変幻自在とはいかない。
「どうした、こねえのか?
俺はこのままでもいいんだぞ?」
「くっ……」
俺は焦って見えるように言った。
俺の視界の隅で、金色の塊が動いた。
俺はバフマンの注意を惹きつける。
「この一撃で決める!
纏、螺旋光!」
「笑わせるな!
そんなもんが――」
バフマンがハッとして振り返った。
「ちっ!」
俺は踏み込み、斬りつける。
バフマンはそれを慌てて受けた。
「ギャリス! そのガキを止めろっ!」
バフマンが命じるが、もう遅い。
というか、命令が間違ってる。
亜竜の首を突き刺す鉄杭にルディアが取り付いた。
ドームの外側を回って、後ろの橋から渡ったのだ。
もちろん、俺は囮である。
「てめえはあん時のメスガキかっ!」
ギャリスがルディアに駆け寄る。
そういえば――
ギャリスはルディアが相方を殺したのを見てない。
俺の攻撃で伸びてたからな。
だから、ルディアが鉄杭を抜くとは思わなかった。
魔剣を振り上げルディアを威嚇。
失笑ものの失策だ。
「ぐぐぐ……えええいっ!」
気合いの声とともに、ルディアが鉄杭を引き抜いた。




