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ダークナイトはやめました  作者: 天宮暁


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33 初仕事⑧げに恐ろしきは

 大地に穿たれた深いクレバス。

 太古の真竜のブレスの跡……という説もある。

 目がくらむほど深く、底が見えない。


 だが、連中も底まで降りたわけではなかった。

 クレバスの岸壁には斜めに削られた跡がある。

 そこが、道だ。

 一歩踏み外せば谷底の道を進むと横穴があった。


 入り口は人がしゃがんでくぐれる程度しかない。

 狭いところが苦手な奴なら尻込みしそうだ。


「この奥です」


 ルディアが言う。


「足跡もこの先に続いてるな」


 大気の様子からしても中は広いのだろう。

 俺が先に穴をくぐる。

 穴の先は真っ暗だ。

 俺はザカーハに淡く纏をかける。

 纏の光がうっすら洞窟を照らし出す。


「この点じゃホーリーナイトは便利だな」


 ダークナイトではこうはいかない。

 夜目を利かせることはできるけどな。


 明かりは、洞窟の途中で闇に阻まれる。

 光量を抑えたせいもあるが、洞窟が広い。

 入り口をくぐった先も、高さ3メルロはあった。

 幅はさらに広い。

 天井は斜めになっていて、右側の方が高い。


 闇の奥の気配を探ってから、


「ルディア、いいぞ」


 声をかけると、ルディアが穴をくぐってきた。


「広いですね」


「そうだな。奥が分かれてないといいが……」


 痕跡を追うにもこの暗さでは大変だろう。


 俺とルディアは早速洞窟を奥へと進んでいく。


 天井がだんだん下がってきた。

 俺の背より低いところまで下がってくる。

 半腰で進むと、今度は地面が下りになった。

 道は緩くカーブしながら下っていく。


 途中、何度か人の背くらいの段差があった。

 慎重に音を殺して飛び降りる。

 身体能力の高いルディアも器用に音を殺してる。


(逃げる時には厄介だな)


 引き返す時にこの段差は厄介だ。

 登るのに時間がかかってしまう。


 しばらく進むと、今度は開けた場所に出た。

 大きく裂けた地中の谷。

 谷底には静かに川が流れている。

 その谷の中腹にある断崖に出た格好だ。


 その断崖は、地中の谷に沿って左右に伸びている。


「あっちです」


 ルディアが上流を指した。


 俺たちは足元に注意しながら崖を進む。

 崖には鎖が張ってある。

 頻繁に出入りのある証拠だ。


 しばらく進むと、


「ん? なんか蒸し暑いな」


 最初は冷たかった地下の空気が変わっていた。


「谷底の川も……沸騰してないか?」


 その蒸気が断崖の上まで届くようだ。


 さらに進むと、川は干上がり、川床が現れた。

 川床は黒い丸みを帯びた石で埋まっている。

 その隙間からは蒸気が噴き出している。


「あれは……冷えた溶岩ですね」


 ルディアが言った。


「お母様に見せたもらったことがあります。

 火山の中を」


「とんでもない英才教育だな」


 冷えた溶岩は進むにつれてかさを増していく。

 川底が冷えた溶岩で埋まり、谷が浅くなる。

 最後には、赤い火の混じった溶岩になった。


 谷は、その先で果てていた。

 高さ10メルロはある谷の出口は、谷だった。

 谷が、より大きな別の谷に出ていた。

 その谷には赤い溶岩が溜まっている。

 すさまじい熱気に、額に汗が浮いた。


「うおっ。なんだここは」


「この先、です」


 大きな谷にも、断崖に沿った崖道があった。

 その先に、溶岩に囲まれた円形の台地がある。

 台地を溶岩が囲み、溶岩をドームが囲む。

 ドームの天井は高すぎて見えない。


 谷の断崖がドームの外壁につながっている。

 外壁から台地へ、いくつかの橋が伸びていた。

 橋といっても溶岩の冷え固まった不安定なものだ。

 台地の方は、玄武岩の強固な足場になってる。


 その台地に、異様な光景があった。

 異様なものがあった、というべきか。


「あれは……」


 台地に、赤い竜が縫い付けれていた。

 竜は、亜竜の成体だろう。

 全長20メルロはある巨大な翼竜だ。

 その翼を大きな鉄杭が地面に縫い付けている。

 鉄杭はそれぞれ1メルロはあるだろう。

 左右の翼、腕と足、首。

 合計七本の鉄杭が刺さっている。

 竜は全身を鉄杭で拘束されているのだ。

 

 竜は、ところどころ竜鱗が剥がれているようだ。

 剥き出しになった地肌が痛々しい。


 その竜の前に、奴らがいた。


「バフマンとギャリス、奴隷たち。

 全員いるな」


 奴隷たちは明らかに怯えていた。

 そりゃそうだ。

 亜竜なんてもんを見るのは初めてだろう。

 一般人が目にして生き残れるような存在じゃない。


「苦しんでます。なんてことを……」


 ルディアが後ろでつぶやいた。


 バフマンとギャリスが何かを話している。

 だが、ここからでは聞こえない。


「気づかれないようにもう少し近くぞ」


 さいわい、亜竜の強烈な気配がある。

 こっちの気配は紛れてわからないだろう。

 あっちの方が亜竜の近くにいるんだしな。

 もちろん、目視されれば気づかれる。

 俺はザカーハの纏を消し、岩陰を縫って近づく。


 ギャリスの声が聞こえてきた。


「本当にそろそろなんだろうな?

 さすがにこんなこと毎回やったらんねえぞ」


「わからんのか?

 この亜竜の放つ気配が。

 間違いない、あとすこしで進化するはずだ」


「はずだ、じゃねえんだよ。

 毎回イケニエを用意する身にもなってみろ」


「一朝一夕に真竜の魔剣が手に入るものか。

 真竜をまともに討つよりは成算ははるかに高い。

 それより、上手くいった暁には……」


「わかってるって。

 代表は同意してる。

 Sランク、奴隷の件もな」


「ふん……まあいい。

 魔剣さえ手に入れれば、誰も逆らえなくなるさ」


 バフマンが言って、縫い付けられた竜に近づく。

 竜は頭をも地面にべたりとつけている。

 その赤い目はうつろだ。


 バフマンはあろうことか竜の頭のすぐ前に立つ。

 そして、まぶたを片手で持ち上げ、覗き込む。


「くくく……いい具合に絶望しているな。

 力が欲しいか、亜竜。

 ならばくれてやる。

 だから進化しろ。

 そして俺に討たれろ。

 魔剣となって俺にぬかづくのだ」


 バフマンはギャリスを振り返る。


「何をグズグズしている。早くやれ」


「へいへい」


 ギャリスは手にした魔剣を振りかぶった。


 遠くにいる俺たちに何ができるはずもなく。


 ギャリスの魔剣が、奴隷の背中を斬り裂いた。

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