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ダークナイトはやめました  作者: 天宮暁


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24 ホーリーナイトはじめました⑤規格外

 癖のない直刀を斜めに構えるサリー。

 腕の方はもう察しがついている。

 こういう相手を見るとゾクゾクするな。


「じゃあ、俺から行くぜ」


 俺は魔剣を手にして前に出る。

 そこで、困った。


「……この剣、どう構えたもんかな」


 なにせ、刃が折れている。

 まったく刃がないわけじゃない。

 拳三つ分くらいの刃は残ってる。

 錆と刃毀れだらけのなまくらだが。


 前に構えるのは、剣で剣を受ける攻防の構え。

 半身で上段に構えるのは、攻めの構え。

 斜め横に構えるのは、守備の構え。


 だが、いずれも刃があってこその構えである。

 刃のない剣での戦い方。

 そんなもんがあるはずもない。


「しゃあない。適当に行くか」


 とりあえず、俺は無構えを取った。

 無構えといっても構えないわけじゃない。

 あらゆる状況に対応できる自然体ってだけだ。

 素人がやったらただの隙にしかならないけどな。


 ちなみに、盾は持ってない。

 今まで使ったことがない。

 盾に関しては型を教えてもらってからにしよう。


 右手に壊剣ザカーハ。

 左手は空いている。

 折れた剣と素手だ。

 なんとも頼りない気持ちになる。


 サリーは防御気味の構えをしている。

 新人相手の乱取りなのだ。

 受け切ることを想定するのは当然だ。

 積極的に打ち込んでくることはないだろう。


 と、思ったのだが、


「――疾(し)っ!」


「ぬぉっ!?」


 サリーの剣が翻った。

 防御の構えからのいきなりの突き。

 俺は身体を開いてそれをかわす。


「受けるんじゃなかったのか?」


「乱取り、と言ったはずです――はぁぁっ!」


「ちっ!」


 剣が鋭角に切り返される。

 ザカーハの根元で、その剣先を受け流す。


 火花を散らし、互いの魔剣が摩擦した。


 俺はサリーの剣を鍔で滑らせ、懐へと潜り込む。

 素早く旋回して肘。

 肘は、サリーの鎧に受け止められた。


「そうだった……!」


 巡(めぐり)を乗せてない以上、ただの肘打ちだ。

 ただの肘打ちが鎧の上から効くわけもない。

 以前は常時巡を使ってたから忘れてた。


「閃っ!」


 素早く下がりながら、サリーが剣を斬り下ろす。

 剣にはしっかり光の纏(まとい)。

 朝焼けの雲のような光――曙光と呼ばれる纏だ。


「こなくそっ!」


 俺は肘打ちの勢いで半周。

 魔剣の根元でサリーの剣を受け止める。


 が、


「ぐぉっ!?」


 サリーの剣はとんでもなく重かった。

 曙光という纏は、斬撃の衝撃を重くする。

 斬れ味ではなく衝撃だ。

 相手を圧迫し、動けなくする。

 あわよくば一気に圧して斬る。

 そうした用途の纏だった。


「うぐぐ……っ!?」


 俺は巡で足回りを強化。

 サリーの剣を押し留める。

 

 サリーは、そのまま押してきた。

 曙光がさらに明るさを増す。

 同時に、剣の重さがぐっと増した。


「こんなものですか、ナイン」


「なんだと?」


「伝説のSランクダークナイト、ナイン。

 それは、こんなものなのでしょうか?」

 

 サリーの目には好戦的な光が宿っていた。

 落ち着いて見えても高ランクの魔剣士なのだ。

 俺を相手に奮い立っているのだろう。


「今の俺は……ホーリーナイトだっ!」


 俺は、押されるままにしゃがみこむ。

 その勢いで足払い。

 サリーは下がるが、片足だけは引っ掛けた。


「くっ!」


 バランスを崩して後退するサリー。

 俺は、空いた手で地を叩いて急追する。


「こんな感じか?

 ……曙光の纏っ!」


「なっ……!?」


 俺は、纏をかけた魔剣を振り下ろす。

 サリーの防御は間に合わない。


(取った!)


 そう思ったのだが、


「どわっ!?」


 剣が標的を外し、つんのめる。


 そこに、


「墜(つい)っ!」


「ぐべらっ!」


 サリーの剣が、俺の肩を強打した。


    †


「あいたた……」


「大丈夫ですか?」


 サリーが、剣を俺の肩に当てて聞いてくる。

 治癒の剣だ。

 俺ももう使えるが、まだ黙っておくべきだろう。


「あ、ああ。だいぶよくなった」


「そうですか。すみません、つい調子に乗って」


「いや、本気を出してくれるのは全く構わない。

 そうじゃなきゃ訓練にならないし」


 ダークナイトの頂点だった男。

 そう聞かされれば、剣士なら奮い立って当然だ。

 それを跳ね返してこそ強くなれる。


「でも、驚きました。

 初歩の纏とはいえ、もう曙光が使えるとは」


「見よう見まねでな。

 だが、剣が折れてるのを忘れてた。

 間抜けもいいとこだ」


 さっき俺は、サリーの纏を真似たのだ。

 曙光の纏は成功した。

 だが、それに気を取られて間合いを忘れた。

 だいたい、こんなに刃の短い剣なんてない。

 短めの剣でも十分届く間合いだったのだ。


「未熟だなぁ」


 まるで素人みたいな失敗に笑ってしまう。


「適正Cだと、単純な纏すらおぼつきません。

 密かに練習していたのですか?」


「いや、練習はしてないよ。

 まっさらで臨みたかったからな」


「初見で纏を『盗んだ』というのですか?」


「サリーの巡らせ方はわかったからな。

 同じように巡らせてみただけだ」


「……やはり、恐ろしい方ですね」


「それより、ルディアがうずうずしてるぜ」


「そうでした。

 ルディア、お待たせしました。

 やってみましょう」


「はい、お願いします」


 サリーが構え、ルディアは大剣を背から外した。

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