12 いくら手足をばたつかせもがいても、全ての黒幕にはたどり着けそうもない
12 いくら手足をばたつかせもがいても、全ての黒幕にはたどり着けそうもない
「先輩、マンティコアレポート、終わりました。」
まだ若い男の声が小さな部屋に響く。男は長い作業が終わり、大きく伸びをした。だが、仕事は次から次へと舞い込んでくる。
「先輩。ハルバート・ショウ先輩。」
男は返事がないので隣の男に大声で言う。
「別にそんな大声を出さなくても聞こえているよ。」
ショウと呼ばれた男は優しい口調で言った。
「次のシナリオはどうします?」
自分から仕事を聞きだすのは嫌なことこの上なかった男だが、そうしないと自分は解放されなかったから、仕方がないと割り切る。
「そうだね。こういうのはどうだろう。マンティコアに嫁ができるんだ。その嫁が――」
「雪女、ですね。」
男は傍らの魂のない人形に目をやる。服を着せられていない、まだあどけない少女の姿は、確かに、雪女を彷彿とさせる。
男は端末に情報を上書きする。その情報は別の端末『リュウ』に情報を伝える。
「アゼルくん。休憩に入っていいよ。」
「ありがとうございます。」
とはいえ、アゼルはこの部屋から出たいとは思わなかった。下手に別の研究区画に入り込んで、命が狙われては元も子もない。
「竜の名を借りて生きる存在。全く我々も罪作りだね。」
「先輩のネーミングセンスもなかなか悪いです。」
竜を模して造られた存在。我々の意思を反映する道具。ショウはその存在に『カリテ』という名をつけた。竜の名を借りる竜のまがい物。ただ、実験として怪物たちを保管するためだけの装置。
「まあ、カガ局長よりはマシだと思いますけど。」
アゼルは研究所の代表者の名前を口に出す。
「シーサイドバー・マイアミってなんですか。研究所の名前じゃないでしょ。」
「あの人も結構適当に名前をつけるからなぁ。」
ショウは冷え切ったコーヒーを口に運んだ。




