96 敵はマーチヘア
「あと52人……ってもう行っちゃったか」
どうやらもう、旗を取りに行ったらしい。残念、もうちょっと暴れられると思ったのに。
「向こうが上手く捌いてくれたらいいんだが」
「まぁ後ろから撃つくらいならできるよ」
私は銃を構える。後ろで気配が動いたのは、その直後だった。
「ええそうよ。後ろから、ね」
「……アーリア、それ本物だよね」
アーリアが私に向けているのは、本物の銃だ。これは絶対に正当防衛になる。私は躊躇わずナイフを掴む。
「あんたのせいで……あんたのせいで……」
やっぱり狂ったか。だから嫌だったんだよね。
「ウィル、後は任せるよ。後ろからあいつらを撃って。なるべく、死なないように」
気絶したり動けなくなれば、失格で死亡になる。なるべく損害は出したくないし。
「え、でも……」
「大丈夫だよ。気にしないで」
行って。もう一度言うと、ようやくウィルは全員に指示を出して動く。それでいい。
狂った人間は、誰を巻き込むか分からないから。
「それで、アーリア。一体どうしたの」
「あんたのせい、で。頭の中で声が鳴りやまない……。お前は醜い、彼女は美しい……って。お前……なにを……したのよ」
本当に強いんだね。私がかけた洗脳の内容まで、しっかり把握できてる。もったいないなぁ、もうちょっと勉強したらいいマインドコントローラーになれるのに。
「さぁ? なにをしたかな」
「イアータ・クローバー……死ね」
あ、ヤバイ。私を殺したら治る的な思考回路になってる。狂った人間は面白いけど、こういう狂い方は嫌いなんだよね。汚いから。
「死ね死ね死ね死ね」
暗い瞳でアーリアは呟き続ける。……どう出るのか読めないんだけど!




