89 カータ
「ちょっと、あんたたちホントに養成学校入ってないの? なんかその辺の兵士より遥かに兵士なんだけど」
「ごめんセナ、なに言ってんの?」
「なんで兵法まで完璧に理解できんのってこと! 時々作戦がメチャクチャだけど、正直あんたたちが実現できるレベルの無茶だし」
「それは無茶とは言わねぇだろ」
あまりに優秀すぎる生徒に手を焼くセナさんの姿を、面白そうに眺める私。
あら、セナさんがこんなに取り乱すなんて珍しいこともあるもんね。かれこれ6年は秘書をしてるけど、初めて見たわ。
「カータ、お茶おかわり」
「あ、私も」
「じゃあ俺も」
「はい」
……この光景も見慣れてきたわねぇ。最初はこの2人が怖かったけど。怖かったというか、未知の存在で物怖じした。
『リークス・ソールだ』
『イアータ・クローバー。よろしく、カータ』
『こいつらが私の生徒だ。ゆくゆくは右腕にでもなってもらうつもりだ』
『えっ……?』
そのとき思ったのは、セナさんの身が危ないということ。だって、あの子たちは違いすぎる。
こっちが感じる重圧が、大きい。三者面談って聞いて教室に入ったら、校長と今までの担任全員と部活の顧問がいてしかも全員しかめっ面だったときのような……!
いやそれよりひどいけどね。
上層会議でも、こんなに重圧は感じない。
「ねぇカータ、この紅茶ってセイロン?」
「ええ、そうよ。相変わらずあなたは鼻が利くわね」
あのときの、あの重圧。きっと、この子たちは私の実力を推し量っていた。あの重圧に押し潰されれば、私はこの場にいなかったかもしれない。
私は、セナさんの秘書だ。戦闘能力はある。でも、セナさんの近くでセナさんの生活を支えることを選んだ。
私だって一応、養成学校第603期生の主席だ。戦闘能力は人一倍ある。
「カータ。今ここでケンカして、こいつらに勝てる?」
「どうでしょう。……いい勝負くらいはできると思いますよ? シチュエーションによっては、私が勝ちますね」
「……カータと勝負はしたくない、絶対。だって性格悪そうだもん」
「どういうことよ、イア」
17歳に言われるとなんかきついわね……。ああ、年取ったわ! もう26歳だなんて……!
「そのまま。私にとって嫌な戦法ばかり選んでくる。……26にもなると、擦れてくるのかな?」
「あなたこそ17歳のセリフとは思えないわね」
「私は28だけど、おばさんとでも言う?」
「……女って……」
リークスの呟きの破壊力がすごくて、しばらく3人で笑う。
この子たちも、普通の子どもなのね。ちょっと(?)大人びてて皮肉屋で強くて賢くて知識が多いけど。……あれ、子どもってどんなのだっけ……?




