79 敵地に到着
「よーやく着いた!」
隣でイアが伸びをする。戦闘服は暗い緑色で、イアにぴったりと合っていた。
「リィ、似合うね。戦闘服。絶対、軍服も似合いそうだよね」
「そうか? 戦闘服はともかく、軍服は動きづらそうで嫌だな」
確か、軍服も同じ色だったか。戦闘服は動きやすくていいな。
「セナさん!」
「やあ、コラット。戦況はどうだい?」
イアをちらりと見ると、すぐに意図を汲んで口パクで教えてくれる。(中佐だよ)と。セナさん……って、呼んでいいのか?
苦笑するイアを見て、もしかしてもうイアはセナと話したのだろうかと思う。
「なにか変わったことがあるか?」
待機という名の自由時間、俺たちは見晴らしのいいビルの屋上にいた。ここも当然、人は住んでいて、ビルもある。
国籍はないそうだ。エーディ人と呼んでいる。
「変わったこと……。ま、なんか美女に目をつけられたね。アーリア・ヘアマーチ?」
にこにことイアが言う。
「まぁ、遅かれ早かれそうなるとは思ってたけど。だってこの見た目だし?」
「自信満々だね、イア」
「自己分析って大事でしょ? それとも、私より綺麗な人を見たことがある?」
ラーフが言葉に詰まる。……ないな。
「で、アーリア・ヘアマーチってどいつだ?」
「ちょっとリィ、殺さないでよ? えっとね、金髪で緑色の目の身長169体重50の20歳の美人さん。酒場に行ったらそれなりに誘われそうな」
「イアは誘われないのー?」
「……ナタリー、誘うの意味分かってんのか……。いや、いい聞かない言うな」
パーシーが答えを予測して首を振る。まぁ、分かっちゃないだろ。
「私が誘われる? 私の場合、圧倒しちゃうんだよね。声かけられても舞い上がっててなに言ってんのか分かんない」
イアの美しさは、人を圧倒する。会話ができなくなる、目が泳ぐ、赤面する……どれもこれも見慣れた反応だ。
イアに対して口笛を鳴らしたり、微笑みを向けられるやつはほとんどいない。仮にできても、流し目1つで他と同じ反応をする。
「イアってすごいねー」
「どうもありがと、ナタリー」
いやそんなのどうでもいい。前から知ってることだしな。
「ヘアマーチは殺して支障ないか?」
「もー、変な冗談言わないで。みんな本気だと思ってんじゃん」
「……今の、冗談なの? 冗談でいいの?」
ラーフが強張った顔で俺に聞く。俺は少し首をかしげて、口を開く。
「半分くらい冗談だ」
ヘアマーチが、マーチヘアだったと知るのは2日後のことだ。




