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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第四章
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78 スティノーラ・ヒーヌ

 ねぇ、とセナは口を開く。

「スティノーラ・ヒーヌって、知ってるだろ」

 スティノーラ……。たぶん、ノーラのことだろう。でも、そのことを言っているのか。

「さぁ?」

「あんたたちは、ノーラって呼んでたっけ。私もだよ」


 なんだ、知ってたのか。でも、どうして。

「それはね、私が『蟷螂』にいたからさ。最後の任務、私は王に捕まった。そして、養成学校も出ずに兵士になった」

「その大剣は、ノーラのもの?」

「ああ、そうさ。……今はもう、ワイズマンを使えないと佐官以上にはなれない。でも私は、この武器で行けるとこまで上り詰めたくて」

 ワイズマン……。ああ、前に王さまが言ってた武器か。思った通りに動くとかいう。


「中将自ら、監視でもしてんの? セナ」

「本当に、怖いもの知らずだねあんたは。殺されるかもしれないんだよ? 私に」

「ま、あんたには負けそうだね、私。見たら分かるよ。でも、ここで殺したら国にとっても損害でしょ。そこまで愚かじゃないよね?」

「さぁ、分からないぞ」

「じゃ、今すぐここから飛び降りてよ。私、愚か者に指図されたくないから」


 ピシ、と空気が凍る。でも本音だし。頭の悪い人間に指図されるなんて、虫唾が走る。

「……今後もし、軍に入るなら、そういう発言を慎め」

「戦場で後ろから撃たれるよー、って? ……私に指図していいのは、私が認めた人間だけ。私に劣る人間に、指図されたくない」

「じゃあ私は大丈夫だ。お前に劣っているつもりはない」

「ふふふ。そうだろうね。じゃ、精々私ってホープを守る番犬になってよ。もし、軍に入ったらね」


 そう言って、甲板を下りようとしたとき。呼び止められた。

「……なに?」

「お前が認めた人間は、今のところリークスだけか」

 私は驚きを隠して、ただいつものように微笑む。私という存在をを悟らせないように。

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