78 スティノーラ・ヒーヌ
ねぇ、とセナは口を開く。
「スティノーラ・ヒーヌって、知ってるだろ」
スティノーラ……。たぶん、ノーラのことだろう。でも、そのことを言っているのか。
「さぁ?」
「あんたたちは、ノーラって呼んでたっけ。私もだよ」
なんだ、知ってたのか。でも、どうして。
「それはね、私が『蟷螂』にいたからさ。最後の任務、私は王に捕まった。そして、養成学校も出ずに兵士になった」
「その大剣は、ノーラのもの?」
「ああ、そうさ。……今はもう、ワイズマンを使えないと佐官以上にはなれない。でも私は、この武器で行けるとこまで上り詰めたくて」
ワイズマン……。ああ、前に王さまが言ってた武器か。思った通りに動くとかいう。
「中将自ら、監視でもしてんの? セナ」
「本当に、怖いもの知らずだねあんたは。殺されるかもしれないんだよ? 私に」
「ま、あんたには負けそうだね、私。見たら分かるよ。でも、ここで殺したら国にとっても損害でしょ。そこまで愚かじゃないよね?」
「さぁ、分からないぞ」
「じゃ、今すぐここから飛び降りてよ。私、愚か者に指図されたくないから」
ピシ、と空気が凍る。でも本音だし。頭の悪い人間に指図されるなんて、虫唾が走る。
「……今後もし、軍に入るなら、そういう発言を慎め」
「戦場で後ろから撃たれるよー、って? ……私に指図していいのは、私が認めた人間だけ。私に劣る人間に、指図されたくない」
「じゃあ私は大丈夫だ。お前に劣っているつもりはない」
「ふふふ。そうだろうね。じゃ、精々私ってホープを守る番犬になってよ。もし、軍に入ったらね」
そう言って、甲板を下りようとしたとき。呼び止められた。
「……なに?」
「お前が認めた人間は、今のところリークスだけか」
私は驚きを隠して、ただいつものように微笑む。私という存在をを悟らせないように。




