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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第四章
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74 おかえり、イア

「6人は、今日で最後になる。今日は送別会をしよう!」

 ややクラスの雰囲気が盛り返してきたところだが、明日で俺たちはやっと帰れる。

 やっと、イアがイアに戻るな。こいつの切り替え方は神がかってるからな。2か月前から、一切イアらしい動作をしなくなった。完全に明るくて無鉄砲で素直なアリスになりきっていた。

 正直、違和感しかなかった。あー、やっとか。


 みんなが挨拶して、あとはイアだけだ。

「みんな、今までありがとう! ……私の分も、エヴァのお墓に話しかけに行ってもらえる?」

 最後にアリスイアがそう言うと、全員がうなずいた。ふわ、とアリスの髪が揺れて、花瓶が置かれた席に向かう。

「あなたがいて楽しかった。永遠に忘れないよ。ありがとう、またいつか話そうね。エヴァ」

 そう言って、戻ってくる。エヴァンジェリンは、どう思ってるんだろうな。自分を殺した人間の、この言葉を。

 まぁ正確に言えば、殺したのはイアであってアリスは普通にいい友達だったけどな。人格的には。



 来るときと同じ甲板で、またアリスと2人きりになる。まだ「アリス」のままらしい。念入りなことだ。

「アリス。もういいぞ」

 そして、口の形だけで「イア」と呼ぶ。すると、見慣れた笑みになった。人を食ったような、掴みどころのない美しい微笑み。

「……なんか落ち着く。その笑顔」

「そ? そりゃよかった」


 ああやっぱ、イアはこうじゃねぇとな。そりゃまぁ、変装は完璧で別人格だけど、ついイアとして見てしまう。他のやつらはそんなことないらしい。

 俺だけか、と思う反面、やっぱりなとも思う。一緒にいる時間があまりに長かったのと、あまりに濃度が濃すぎて、俺に通用しないことはたくさんある。美貌もだし、変装や演技も。

「うふふふ。まぁ、まだ大部分は戻さないけどね? よろしく、エド」

「ああ、大丈夫だ。アリス」


 大丈夫だとも、アリス。俺だって、お前と同じくらいの能力はあるからな。じゃなきゃここまでずっと一緒にいるかよ。

別に二重人格じゃないです。ただの演技の天才です。

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