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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第四章
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65 面倒な依頼

 新しい家ができて約2か月。王さまからお迎えが来た。あー、次の依頼? 失うものが減ったから気が楽だねー。

 私とリィ以外は少し顔が青いけど。あはは、やっぱ怖い? それが普通だもんね。


「新しい家はどうだ」

「素晴らしい家を建てていただきまして。まぁいい感じ。1人1部屋できたしねー。すごい嬉しい」

「そうか、それはよかった。……で、次の依頼だが」

 無駄話しないよね、ホント。これでも長かった方だし。


「隣国ウォシロマ共和国の大統領、ドナルド・スミスの娘だ」

「えーっと、エヴァンジェリンだっけ? 今年で17歳の。頭がいいって聞いたよ。もうこっちの言葉、理解できるんだって?」

「なんでお前は他国の情報を知っている」

「だって、国内の情報は粗方握っちゃったし? 世界の半分を握ったら、もう半分でしょ?」

 せっかく、手つかずの狩場があるのに、行っちゃダメとかわけ分かんない。


「はぁ……」

「王さまお疲れ? 頭痛薬か胃腸薬いる?」

「お前のせいだろう。……まぁそれはいい。お前は、私たち王族の家族構成を知っているか」

「王さま、王妃様、長男アルベルト、次男ウィルレラム、長女オリヴィア。で、どしたの?」

「ウィルレラムが、殺された」


 少しだけ首をかしげて、へぇ、と呟いた。だから私になんの関係が? 他人の生き死になんかどうでも……。って待てよ。

「スミス大統領に殺されたわけ?」

「そうだ。だから、その報復を」

「それ、私怨だよね? まぁいいけどさ。……でも、あんた、私たちのことそんな風に使うの?」

 政治絡みの仕事だけだと思ってた。それに、王さまが私怨で動くなんてね。


「違う。これを機に、開戦の狼煙を上げたいだけだ。……私は父親である以前に、1人の人間である以前に、王だ。ウィルレラムが殺されて最初に思ったのは、アルベルトでなくてよかった、だ。これまで長男が王位を継がなかったことはない。幾千年かけて王家に積もった歴史を、伝統を、なくすわけにはいかんからな」


 あっそ、と呟く。そして、笑みを向ける。

「よかった、私好みの依頼。ふふふ、面白い」

 そうだよ、王さま。王であるために、名前を奪われた哀れな王さま。もっと狂えばいいよ。狂えば、世界は面白い。

 私だって狂ってるし、リィだって狂ってる。狂えば、人間は強い。

 私怨で殺すのは嫌い。でも、私怨と見せかけて利益を求める殺しは、大好き。喜劇だよ。


「ところで、勝算はあるの? 科学技術の発展は、大差ないと思うんだけど」

「大丈夫だ。現在、開発中の武器がある。総称してワイズマン。使用者の思うままに、動く。銃弾ならばどう飛ぶか指示できる」

「どうやって?」

「人間が体の各部に命令を伝える手段は、電流だ。それを増幅させる手袋をつけ、武器の持ち手から伝える」

 なるほど。それがあれば! ……なんて楽天的な。


「使える人間は限られそうだね」

 よほど頭のいい人間でないと、使えない武器だろう。それにたぶん、個人に合わせて作るんだろうし……。なんて面倒な。

「まぁ、問題点はそこだ。ただ、向こうも戦争の準備を進めている。それに乗らん手はない。一方的にやられるわけにもいかんしな」


 ふふふふっ。楽しい依頼をありがとう。

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