65 面倒な依頼
新しい家ができて約2か月。王さまからお迎えが来た。あー、次の依頼? 失うものが減ったから気が楽だねー。
私とリィ以外は少し顔が青いけど。あはは、やっぱ怖い? それが普通だもんね。
「新しい家はどうだ」
「素晴らしい家を建てていただきまして。まぁいい感じ。1人1部屋できたしねー。すごい嬉しい」
「そうか、それはよかった。……で、次の依頼だが」
無駄話しないよね、ホント。これでも長かった方だし。
「隣国ウォシロマ共和国の大統領、ドナルド・スミスの娘だ」
「えーっと、エヴァンジェリンだっけ? 今年で17歳の。頭がいいって聞いたよ。もうこっちの言葉、理解できるんだって?」
「なんでお前は他国の情報を知っている」
「だって、国内の情報は粗方握っちゃったし? 世界の半分を握ったら、もう半分でしょ?」
せっかく、手つかずの狩場があるのに、行っちゃダメとかわけ分かんない。
「はぁ……」
「王さまお疲れ? 頭痛薬か胃腸薬いる?」
「お前のせいだろう。……まぁそれはいい。お前は、私たち王族の家族構成を知っているか」
「王さま、王妃様、長男アルベルト、次男ウィルレラム、長女オリヴィア。で、どしたの?」
「ウィルレラムが、殺された」
少しだけ首をかしげて、へぇ、と呟いた。だから私になんの関係が? 他人の生き死になんかどうでも……。って待てよ。
「スミス大統領に殺されたわけ?」
「そうだ。だから、その報復を」
「それ、私怨だよね? まぁいいけどさ。……でも、あんた、私たちのことそんな風に使うの?」
政治絡みの仕事だけだと思ってた。それに、王さまが私怨で動くなんてね。
「違う。これを機に、開戦の狼煙を上げたいだけだ。……私は父親である以前に、1人の人間である以前に、王だ。ウィルレラムが殺されて最初に思ったのは、アルベルトでなくてよかった、だ。これまで長男が王位を継がなかったことはない。幾千年かけて王家に積もった歴史を、伝統を、なくすわけにはいかんからな」
あっそ、と呟く。そして、笑みを向ける。
「よかった、私好みの依頼。ふふふ、面白い」
そうだよ、王さま。王であるために、名前を奪われた哀れな王さま。もっと狂えばいいよ。狂えば、世界は面白い。
私だって狂ってるし、リィだって狂ってる。狂えば、人間は強い。
私怨で殺すのは嫌い。でも、私怨と見せかけて利益を求める殺しは、大好き。喜劇だよ。
「ところで、勝算はあるの? 科学技術の発展は、大差ないと思うんだけど」
「大丈夫だ。現在、開発中の武器がある。総称してワイズマン。使用者の思うままに、動く。銃弾ならばどう飛ぶか指示できる」
「どうやって?」
「人間が体の各部に命令を伝える手段は、電流だ。それを増幅させる手袋をつけ、武器の持ち手から伝える」
なるほど。それがあれば! ……なんて楽天的な。
「使える人間は限られそうだね」
よほど頭のいい人間でないと、使えない武器だろう。それにたぶん、個人に合わせて作るんだろうし……。なんて面倒な。
「まぁ、問題点はそこだ。ただ、向こうも戦争の準備を進めている。それに乗らん手はない。一方的にやられるわけにもいかんしな」
ふふふふっ。楽しい依頼をありがとう。




