5 2対40
イアの目は、紅に染まっていた。俺はあまり、好きじゃない。
……もちろん、美しくはある。ただ、どうしても、似合わないと感じてしまう。
「分かりやすい反応」
イアは軽やかに笑った。
「残念だけどね、リィ。集中したら目が紅くなるのは仕方ないから」
もう一度、イアは笑う。普段とは違う、蜂蜜よりも甘く氷よりも冷たい声で。ぞくっとする、けれど悦びを感じる声。……あまり、好きじゃない。
……イアだから、当然綺麗だ。だがやっぱり、普段のイアが一番だ。
ため息を吐きながら、ナイフを取り出す。替えも含めて7本か。大丈夫だな。
「俺がお前に合わせる」
「了解」
寝込みを襲うつもりだろう。灯りを消して、音を立てずに待った。
1分、10分、30分。
イアが静かに銃に弾を込める。最近もらった銃で、消音機能付き反動なしの優れもの。
力のないイアにとっては、嬉しい機能だ。本当に、びっくりするくらい力がないからな。
寝たか、寝ただろう、行こうか。
そんな囁きの後、静かに扉が開いた。ピッキングが上手いやつがいるんだな。あの鍵はパーシーが多少カスタムしてるんだが。
「ようこそ、招かれざるお客人。……皆様の血肉で作った遅めのディナー、どうぞお楽しみあれ」
妙に芝居がかった仕草で、イアはそんなことを言う。効果は抜群で、ろうそくに照らされた美貌に敵は見入った。
俺は両手にナイフを持って、駆ける。暗闇に慣れた目は、相手の動きをあっさり捉える。
耳からまっすぐ下ろしたところ、なんて復習しなくても、腕は勝手に頸動脈にナイフを伸ばす。暗闇の中で、血は仄暗く光った。
銃声が10発して、倒れる音が10個。俺もナイフを振るって、さらに5人を殺す。今度は3発の銃声。
俺がさらに9人を殺したところで、音がしなくなった。
次の瞬間、俺の眉間に銃が突き付けられる。
「イア、俺だ」
「ああなんだ、リィか。撃つとこだった」
「撃つつもりなら、俺はとっくに死んでる」
「ふふふふ」
もはやルーティンと化したこのやり取りは、お互いの安全を確認するためだ。
「また派手にやっちまったねぇ。リィ、イア」
約室に1つ銃弾を残して装填するらしいです。
装填中に襲われても対応できるように。




