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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第一章
6/262

5 2対40

 イアの目は、あかに染まっていた。俺はあまり、好きじゃない。

 ……もちろん、美しくはある。ただ、どうしても、似合わないと感じてしまう。


「分かりやすい反応」

 イアは軽やかに笑った。

「残念だけどね、リィ。集中したら目が紅くなるのは仕方ないから」

 もう一度、イアは笑う。普段とは違う、蜂蜜よりも甘く氷よりも冷たい声で。ぞくっとする、けれどよろこびを感じる声。……あまり、好きじゃない。


 ……イアだから、当然綺麗だ。だがやっぱり、普段のイアが一番だ。

 ため息をきながら、ナイフを取り出す。替えも含めて7本か。大丈夫だな。

「俺がお前に合わせる」

「了解」


 寝込みを襲うつもりだろう。灯りを消して、音を立てずに待った。

 1分、10分、30分。

 イアが静かに銃に弾を込める。最近もらった(奪った)銃で、消音機能付き反動なしの優れもの。

 力のないイアにとっては、嬉しい機能だ。本当に、びっくりするくらい力がないからな。


 寝たか、寝ただろう、行こうか。

 そんな囁きの後、静かに扉が開いた。ピッキングが上手いやつがいるんだな。あの鍵はパーシーが多少カスタムしてるんだが。

「ようこそ、招かれざるお客人。……皆様の血肉で作った遅めのディナー、どうぞお楽しみあれ」

 妙に芝居がかった仕草で、イアはそんなことを言う。効果は抜群で、ろうそくに照らされた美貌に敵は見入った。


 俺は両手にナイフを持って、駆ける。暗闇に慣れた目は、相手の動きをあっさり捉える。

 耳からまっすぐ下ろしたところ、なんて復習しなくても、腕は勝手に頸動脈にナイフを伸ばす。暗闇の中で、血は仄暗ほのぐらく光った。

 銃声が10発して、倒れる音が10個。俺もナイフを振るって、さらに5人を殺す。今度は3発の銃声。

 俺がさらに9人を殺したところで、音がしなくなった。


 次の瞬間、俺の眉間に銃が突き付けられる。


「イア、俺だ」

「ああなんだ、リィか。撃つとこだった」

「撃つつもりなら、俺はとっくに死んでる」

「ふふふふ」

 もはやルーティンと化したこのやり取りは、お互いの安全を確認するためだ。


「また派手にやっちまったねぇ。リィ、イア」

約室に1つ銃弾を残して装填リロードするらしいです。

装填中に襲われても対応できるように。

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