51 最悪の状況
リィに言われたことが本当でなければいい。そう思いつつ、私は玄関に飛び込んだ。
『もしかしたら、リサもノーラも殺されているかもしれない。時間がかかりすぎだ。もし死んでいたら……生きている人間だけ、連れてこい』
ノーラとリサが……ね。そうじゃなきゃいいけど。
「イア! 無事だったのね」
「こっちのセリフだよ、リサ。ノーラも無事だね。よかった」
1階の玄関ホールから吹き抜けを見上げると、2人がいた。
「今から行く」
「待って! そこから動いたら殺されるわ!」
……ん? 状況が分からない。
「イア。今あたしらの目の前には、敵がいるんだ。動けば火をつけるらしい」
「何人いるの?」
「5人だ」
あー、裏口壊れてる。ってことは、10人より多かったわけか。爆弾で吹っ飛ばなかった生き残りが、脅迫を。
でも、私は動いても安全だ。だって、狙われてる気配がない。私が2階に上がるのに5秒、敵を倒すのに7秒。どうだろう、間に合うかな。
3、と指を立てる。2、1。
「……おい、上がって来てるぞ!」
「火を、早く!」
ここから7秒で倒す。……あ、火をつけられた。まずいな、奥の部屋にはチビがいるのに。
「ぎゃあっ!」
さてあと2秒、あと1人。軽く銃で額を撃ち抜いて、2人に向かって叫ぶ。
「チビたち助けに行くよ!」
どうやらチビたちは無事みたいだ。ケヴィンが駆け寄ってくる。
「イア姉ちゃん!」
「大丈夫、助かるから」
ケヴィンをぎゅっと抱きしめて、チビたちに向き直る。全部で9人か。
「ケヴィン、ミーナ、歩けない子を抱えて広場に!」
「うん!」
2人が同時にそう言って、まだ歩けない3人を連れていく。あと4人。抱きかかえて逃げられる!
「ぐッ」
「ノーラ!?」
リサの声に振り向くと、ノーラの肩から血が出ていた。窓から撃たれたのか! 一番窓に近い私を外れて、弾はノーラを捉えたらしい。
「リサ! リィを呼んで、あとみんなを連れて行って!」
「分かった! ……イアは!?」
逃げることもできる。でも、広場での戦闘は避けたい。どれだけ敵がいるかも分からないし、こっちは戦力が低い。
「戦う」
目を見据えてそう言うと、リサはぐっと唇を噛みしめて出て行った。さて……下か。撃ち殺せる。
いや、ダメだ!
「……ノーラ、逃げるよ! 早く!」
「どうしたんだい」
「下のやつらがいなくなった! たぶん、こっちに向かってる」
上に逃げるのは論外、下は戦わないと……私だけ行く? 窓からの侵入が防げない。
……リィ、早く……! また、頼るのか。リィに……。でも、お願い、早く!




